第5話 燻る
「先生ー!これ見て」
「ん。おー凄いな。でもそれ校則違反だぞ」
「あはは!見逃してー」
「今回だけな」
次の日。教室に向かう途中、賑やかさに顔を上げると、昨日の先生が生徒に囲まれていた。確か…四谷先生だ。
昨日の事で話しかけられたら面倒だ。
「…お。ごめん、ちょっと待っててくれるか。…おーい、市岐!おはよう!」
回れ右した所で、どうやら間に合わなかったらしい。
「…おはようございます」
「昨日の事だけど、ちゃんと!しっかり注意しといたから!もし何かあったら絶対言ってほしい」
「はあ、ありがとうございます」
先生は抑え目な声で言うと、私が無愛想にも関わらず満面の笑みで、先程の生徒の元へ戻っていった。
やっぱり、調子が狂いそうだ。
――…
それからはなるべく四谷先生を避けて過ごした。
それでも朝の挨拶は欠かさずしてくるし、一部の女子に陰口を言われたけれど、そこまで変化も無く過ごせていた…。
ホテルのベッドで、天井を見つめる。
上がった息を整えて、ベッドから出ると、すぐにシャワーを浴びてから身体を拭き、散らばった服を拾い集めた。
「もう行くのか?」
「はい。それじゃ、また明日学校で」
「おー」
担任はベッドで煙草を燻らせながら、ひらひらと手を振った。
関係を持ってから2ヶ月位だが、金銭類は貰ったり貰わなかったり、まちまちだ。
「う、寒い…」
怠かったので早々にホテルを出たものの、タクシー代くらい貰っても良かったかもしれない。
外は暗くなり、なかなかの寒さだった。
コンビニでご飯を買い、タクシー乗り場へ急いでいると、少し先を見知った顔が通り過ぎた。
楽しそうに歩いている、四谷先生…と、着飾った同級生の女子だった。
デートかな?四谷先生もうちの担任と変わんないのかもしんないな。
…あ。折角お弁当チンしてもらったんだから、早く帰んなきゃ。
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