エピローグ

「……こうして、かつての仲間と再会した少年は、彼女に壁の外で学んだ知識や技術を教えてもらいました。彼らの作っていたものは、壁の向こうでは『飛行機』と呼ばれるものでした。二人はその後、街の人にもそれを広めました。しばらくして、人々は政府に対して反乱を起こしました。武力ではなく技術によって。少女の乗っていたものより大きな舟––––飛行機によって壁の外へ市民が逃亡するのを政府は阻止しようとしましたが、力の弱くなりつつあった政府には、反乱を鎮めることが難しくなっていました。元々そう多くなかった人口はさらに減り、ついに街には少年と少女だけが残りました。政府が反乱阻止を諦めたため、警官ももういません。二人は舟に乗り、生まれ育った街を離れました。しかしそれから、二人の姿を見た人はいません。ある人はまだ街の中にいるといい、ある人は舟のトラブルで死んだのだといい、またある人は二人は今も舟で空を自由に飛び回っているといいます。

さて、最後にある言葉を紹介しましょう。少女の日記にあった言葉です。

『現実に抗い続けて夢を追い続けてきた。私は技術を発達させたかったわけではない。ただただ、舟を作って空を飛ぶ夢を見続けた。それだけ』」

「あ!それ知ってる!いつも言ってるやつだ。そうだよね、」

老人の膝の上で本を抱え話を聞いていた子どもが声をあげた。

「レオンおじいちゃん」

そう呼ばれた老人は優しく微笑んで子どもの頭を撫でた。

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空飛ぶ舟 雨霧 夕 @yuu-amagiri

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