K博士のフライホイール
AがK博士の研究所を訪れると、特徴的なボンベがあることに気がついた。
「博士、液体窒素なんか買ってどうするんです?」
「もちろん、実験だよ」
「急用を思い出したので帰ります」
「まあそう言うなよ。見て行ってくれ」
博士が誘うのに対し、Aは露骨に嫌な顔をする。
「それが嫌なんですよ。どうせろくなもんじゃないんだから」
「いや、ろくでもないものなんか作ったことないだろう」
事も無げにしている博士。Aは溜息をついた。
「それよりも今回の実験はスゴいぞ。これが成功すれば革命的だ!」
「はあ、そうですか。どんな実験なんです?」
おそらく解放されないだろうな、と思ったAは話だけでも聞くことにした。
「うん、超伝導フライホイールなんだが」
「それならもう実用化済じゃないですか。帰りますよ」
「いやいや、そこらのとは違うんだよ」
博士は自信満々に言う。
「はあ、さいですか」
「超伝導には冷却が必要だろ?私は新しい冷却方法を考えついたんだ。あとついでにホイールの制御方法も思いついた」
「なるほど」
適当に相槌を打つA。
「それでだね、ホイールの回る空間を真空にして抵抗を減らせば、元より軸の摩擦はないわけだからかなりの高速回転を期待出来るんじゃないかと思った」
「ははあ、なるほど。それで回転速度の限界でも目指そうというわけですか」
「そういうことだ」
ははは、と互いに笑い合う。
「いや、やめてくださいそんなこと」
笑うのを先にやめたのはAだった。
「高速回転中に回転軸がぶれたらどうするんですか。その運動エネルギーで研究所が吹っ飛びかねませんよ。ホイールの制御は実績無いんでしょう?それにホイールを回す電力。相当な金額が請求されますよ。払えるんですか」
「それは……」
博士はしばらく思案した後に奥へ引っ込んだ。直後に助手のBくんの
「そんなお金ありませんよ!カツカツなんですから!」
という叫びが響き渡る。
それを聞いてAは、
「実験は中止かな」
と呟き、帰り支度を始めた。
K博士の不思議な発明 19 @Karium
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。K博士の不思議な発明の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
近況ノート
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます