K博士の怪しい薬
ある日、K博士と腐れ縁のAの話題が読書になった。
「博士は最近何を読みましたか?」
「うん。最近は古典的なのにハマっていてね。『ジキル博士とハイド氏』を読んだよ」
「名作じゃないですか。どうでしたか?」
「なかなか興味深かったよ。特にあの薬」
「あの薬、というと……。善悪を分離させるやつですか?」
Aは何か嫌な予感がした。
「そうさ。私もアレを作ってみたくなってね」
Aは先の予感が正しかったことを知った。
「いや、作らなくていいですから。最後まで読んだんでしょ?」
あんなものを作られてはたまらない。自分が被験者になるのはごめん被りたいし、博士が勝手に作って飲んでも自分に厄介事が来そうだ。
「読んだよ。でも面白そうじゃないか」
「あなたは読書から何を学んだんですか」
「まぁまぁ。というかもう作ってしまったし」
そういうと博士は戸棚からビーカーを取り出した。液体が半分ほど入っている。
「作ったはいいが、効能をまだ試せていないんだ。誰かいないかな」
そう言いながらAを見つめてくる。
「嫌ですよ。そんなものは飲みません」
「どうしても?」
「どうしてもです」
「じゃあ自分で飲むよ」
そう言うやいなや博士は液体を三分の一程飲んだ。
「あーっ!なんてことを」
Aは慌てたが、当の博士は呑気に
「何か変わった感じはしないね。失敗かな」
とケロッとしている。しばらくして博士の体に変化が無いことを確認するとAは、
「薬は失敗だったようですね。今日は帰ります」
と言って去って行った。
それから数日後。Aが自宅で新聞を読んでいると、近所で爆発事件や大型ロボットの破壊活動が多発しているとの記事が載っていた。Aは博士の飲んだ薬のことを思い出し、そして忘れようと頭を振った。
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