K博士の酒
夜も更けた頃、K博士の研究所に三人の男がいた。
「今日はめでたい!」
そう言ったのは所長のK博士。
「そうですねぇ」
助手のBくんが相槌を打った。その横でAも頷いている。三人とも酒を呑んでいた。
「酒と言えば、やっぱりウヰスキーが一番ですね」
おもむろにAが言った。彼はロックグラスを手にしている。
「いや、酒と言えばビールでしょう!」
Bくんがすかさず言った。彼はビールジョッキを手にしている。
「なんだと、ビールなんか弱くて酔えたもんじゃない」
Aが言い返した。悪酔いしているのだろう。
「酒は酔うだけのものじゃないでしょう。博士はどっちが好きですか?」
BくんはK博士に話を振った。
「え、私?……ワインこそが至高ではないか?」
彼はワイングラスを手にしていた。
「博士、裏切るんですか!」
Bくんが言った。こちらもあまり良い酔い方ではないようだ。
「ああ、そうだ。早速あれを使ってみよう」
空気を察した博士が立ち上がって言った。博士が「あれ」と言っているのは今日出来たばかりの人工知能。博士の自信作である。
「これに世界中の酒の情報を入れて共通点を調べていけば、至高の酒がわかるに違いない」
その言葉にAもBくんも賛同した。博士は早速機械を動かし、様々な酒の情報をインプットする。そしてプログラムを起動。
しばらくすると、結果が出てきた。三人はモニターを覗くと、そこに書かれていたのは……
[材料:エタノール、水。濃度はお好きに。体への悪影響が見られます。ご注意を]
「もっと呑もう」
誰ともなしに言った。こうして、研究所の夜は更けるのだった。
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