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●テクストと翻訳

 Ad oppositum est auctoritas AUGUSTINI.


 反対するものに対しては、アウグスティヌスの権威がある a)。


●註釈

a) ここでは、アウグスティヌスという偉大な権威が反対異論として提示されている。言うまでもなく、中世においては、アリストテレス(彼に至っては大文字の「哲学者」(« le Philosophe ») と呼ばれてさえいる!)をその代表とし、アウグスティヌス、ボエティウス、アヴィケンナ、アヴェロエス等々の人々に、「権威」として重要な位置が与えられていた。彼らが何と言っていたか、ということは、後代の哲学者が議論を組み立てる上で、強力な影響を及ぼした。彼らの一声は「権威による論証」となるのである。ここでは、アウグスティヌスという名が用いられている。このごく短い一文が、第一段落から第三段落までの長々とした「理性による論証」に対して位置づけられているのはアンバランスな感があるが、それでも同等の重さを持つとして考えられていたのだろうか。

 さて、トマス・アクィナスの『神学大全』において、反対異論がすでに形骸化しており、ほとんど内実のないものであったように、この第四段落でもまた形骸化した反対異論が見て取られる。しかしながら、私たちはアウグスティヌスの議論の内実を、第八段落の後半において見るだろう。あとで記述することを意図して、無名氏はあえて反対異論には多くを記さなかったとも考えられる。

 彼の頭はすでにアウグスティヌスの議論が、というよりも、スコトゥスの『デ・アニマ問題集』に引かれて、スコトゥスによって再構成されたアウグスティヌスの議論によって満たされていた。無名氏は、アウグスティヌスか、あるいはスコトゥスの議論を用いることで解決可能であると考えていた。そのため、彼自身、この問題は習作の一つにしかならないだろうと考えていた。決定的な重要性を帯びることはないと考えていたのである。それゆえ、完成した問題を公開することなど考えてはいなかった。単に私的な営みに過ぎないであろうと考えていたのである。

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