訳者による序言
本書はオリヴィエ・ベルナール Olivier Bernard 氏が 1992 年にパリの Venir という出版社から上梓した *Utrum possit amare aliquis individuum ? La dispute médiévale de anonyme sur l'amour et l'individu : texte et commentaire* という研究書の翻訳である。日本語に翻訳すると『ある人は個別者を愛することができるか? 無名氏による愛と個別者についての中世の討論:テクストと註釈』という題になる。この研究の目的そのものは、中世の写本のテクストを校訂し、それに翻訳と註釈を付す、という高度に専門的な内容ではあるが、専門的な内容に関しては、著者のベルナール氏自身が噛み砕いて比較的分かりやすく説明してくれているため、「愛」という主題に関心のある人ならば誰でも読み進めることが可能になっている。そのため、私も翻訳するに際し、専門家だけでなく、いやむしろ、愛の問題に関心のある一般の読者の人々に広く読まれるように、訳註を補うなどして、内容を把握しやすくするように努めた。ベルナール氏が付した「前書き」は、やや専門的な内容に触れており、読みづらい箇所も少なくないと思われるが、「註釈」は専門的知識を持たない人によっても十分に読み解けるように書かれているので、研究にはあまり興味はないが、愛という主題には関心があるという読者は、「前書き」は軽く目を通す程度にして、「註釈」を助けとしながら「第二問題」を読み進めていくのがよいと思われる(ただし、内容上、重要な説明も含んでいるため、簡単にでいいので眼を通さねばならないだろう)。
翻訳に際して、訳者が補ったほうが分かりやすくなると判断した箇所や、ベルナール氏とは異なる見解を抱いた箇所については、訳註を付した。なお、イタリック体で表記されていた箇所は、圏点によって強調して翻訳した。また、「第二問題」の翻訳については、ラテン語の原文から直接訳出し、必要に応じてベルナール氏によるフランス語訳を参照した。ラテン語から翻訳する際、内容上必要と思われた箇所に関しては甲括弧〔〕で補い、強調すべき箇所を圏点によって強調した。
数多くの人々から、翻訳にあたって、有益な助言を頂いた。特に M 先生のご協力なしにこの翻訳が世に出ることはなかったであろう。ここに記して感謝の意を表明する。
白井惣七
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