第16話「大群ですよ神様ー!!」
ゆうが探索に出て30分くらい経った頃だろうか、最初に宗が異変に気が付いた。急に立ち上がり、まっすぐに街のとある方角を見つめ、すぐにバックパックを背負い始める宗。その一連の動きにアオは首を傾げていた。
「どうしたの宗」
「うん。逃げるよ二人とも。戦闘準備をして」
「おう? なんか始まるのかー?」
宗の只ならぬ様子に、アオとミカも顔を見合わせ動き出す。とは言え肉弾戦が出来るのはミカしかいなかった。
アオは綿密な結界作成と、その結界内での無敵性や石を用いたアイテム作成は出来たが、結界外ではそこまでの力はない。それでも宗よりは戦えるため、一応海を構えて宗の手を引いた。
手を引かれる宗は減らない体力で荷運びなら誰にも負けなかったが戦闘には向いていないので、いざとなったらアオの力を増幅するつもりである。
ミカは本命のナイフの他に折り紙を使った幅広い行動が可能で、今も戦闘に供えて折り紙で出来た蝙蝠をいくつも飛ばして周囲を警戒していた。
「あ、ダメかも。アオ、今すぐここに結界を。小さくても良いよ」
「……わかったわ。少し時間を頂戴」
そう言っている間にも、進行方向の砂から何やら白くて細いものが何本も突き出してきていた。アオはそれを確かめず、その場にしゃがみ込んで結界の基底となる石を設置し始め、ミカが前へと出る。
出ていたのは手の先だった。ミカが構えた目の前でその手はもがき、真っ白な骸骨が何体も這い出て来る。
「ミカ、後ろからも来るよ」
「げぇ、まじかよ」
それを聞いたミカの顔は引きつった。骸骨の数は前方だけでも20をこえている。その前方はミカに任せるしかないとして、と宗が後ろを振り返り確認すれば、そちらも同数程度の骸骨が這い出て来ていた。厳しい状況である。
「ミカ、力貸す?」
「いや、アオに貸してやってよ。結界が早く出来た方がいいっしょこれ」
「わかった。ごめんね、ミカ。確かに軽率だったよ」
「ああん? いいって。俺ら眷属だし。ま、次に活かそうぜ。今から、次が来るよう頑張るからよ」
ミカは展開した蝙蝠を全て後方、反対側からの進軍に回し、自分はナイフと以前も使っていた折り紙のとげとげボールを構える。
「さぁどっからでもかかってきやがれ!」
その啖呵に反応したのか、前方の骸骨たちは一斉に走り出していた。ミカはその姿からは考えていなかった疾走に一瞬驚くも、すぐに切り替えて戦いを開始する。
まずはボールを投げつけ連なって走っていた三体を弾き飛ばし、すぐさま反対側を駆けていた一体に体当たりのようにぶつかってナイフを斬りつける。ミカはその一体の頭を確実に落とし、トゲトゲボールを手元に引き戻した。
この間の怪鳥相手のあと蝙蝠を仕込んで自律して戻って来るように進化したトゲトゲボールである。骸骨一体一体は正直そんなに強くはなかったが、次々と走り込んでくるため止まることができなかった。
反対側ではミカの放った蝙蝠が近づいてくる骸骨たちを弾き飛ばし続けていた。それでも20を越える数に折り紙の蝙蝠だけでは手が足りず、じりじりと骸骨たちが距離を詰めて来ている。
ミカも目は向けずとも繋がっているのか、その様子には気づいており、自分が居るほうは守れたとしても後ろが危ういと感じていた。蝙蝠はぶつかるたびに摩耗して、そろそろ力尽きてただの折り紙に戻ってしまうだろう。
こちらを早く再起不能にして向かわなければ。そう思って残った骸骨へ首を巡らし、違和感に気付く。
数が、減っていない。足止めの戦いに夢中になっていたとはいえ、それでも何体かは首を落とし、再結合しないようしっかり殺していたはずだった。少なくとも骨を操る呪術ならこれで止められるはずである。
それなのに、骸骨たちは何事もなかったかのように、欠けた部分は骨粉が集まって立ち上がり続けていた。
「げぇ、マジかー」
言いながらも気力は衰えず、しっかりとボールを構えているミカだったのだが、唐突に異変が訪れた。
一気に全身が重くなり、耐えきれず膝をつくミカ。戦闘中に骸骨に何かされただろうか。そう思ったが心当たりはない。それともこれは――。
「生と死を司る……。アオ、頑張って! ミカ、もう足止めは良いからこっちに!」
「どういう、こった」
「これは。この力は多分”反転”だと思う。生を殺し、死を生かす。アオとミカにまでその力の影響が出始めてるんだ。アオ、結界を!」
ミカが転がるようにアオたちの元へと戻り、宗の叫びと骸骨たちの突入が重なった瞬間、アオを中心に結界が広がった。
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