40. 終戦の、本当の終わりは

つくづく、戦争によるひとへのダメージとは深いものがある。


 令和4年の5月末。

 世界が「戦争犯罪」という言葉に様々な反応をしているなかの、とある話。


 北海道の海の、とある位置にて。

 観光船が沈む事件が起きた。

 

  その「とある位置」には、過去の戦争にて命を落としたたくさんの魂が眠っている。

 その当時は、戦争目下ということもあり骨を拾ってくれるなんてこともなく。

 家族には、紙一枚の知らせで、それは「終わった」ことにされてしまう。

 しかし、家族にとっては到底「終わった話」になることはなく。

 そこに続くのは、紙一枚への悲しみと怒り。


 そして、現在。

 家族は思い出す。

 なんの関係もない、同じ場所で起こった事件を聞くことで。

 海に沈みし、戦争の犠牲となった魂を。


 ──そう。消えるなんてことはないのだ。


 戦争により傷を負った心は、ほんの少しのことでも簡単に、無関係に思えることとも繋ぎ合わせることができ、思い出す。

 当時のことを鮮明に思い出し、怒りや悲しみは

「憎悪」という、より強い感情になるひとも多くいる。

 その憎悪は、きっと「忘れる」ことは求めていない。どんなに暗い、重い感情なれど。

 時の波の中でもひとは想い、伝えていく。

 

 ──忘れるな。戦地に赴き、殺し殺され、最後には無残に散りし我らの魂を。

 こんな想いを繰り返すことを、決して許すな。



 きっと、海の底からそう訴えていることだろう。

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