31. 言葉がないから、不仲なの?

 よく、世間の話では、こんな現象がある。

 「あの芸能人のおめでたい話に、彼はコメントを出していない」

「実は、あのグループは不仲なんじゃないか」

「あの人とあの人は、実はあんまり仲良くないのかもしれない」


 そう。

 芸能人で、コメントを出していないのは、仲が悪いからなのか。

 本当は、あの二人は、犬猿の仲なのでは?

 よく、そういう憶測が、ネットでは特に、飛び交っているものだ。

 しかし、なかには。


「肩を組んでいないから」

「目が合っている感じがないから」

 

 そんな、興味のない人間からすれば、「そんなことで?」というくらい些細なことでできる不仲説もある。

 その説を立てられるのは、バンドやら、コンビやら、グループでなど、多種多様だ。

 また、芸能人に限った話でもないだろう。学校でも、職場だのでもあるものだ。


 けれど。その説に振り回されるのは、意外と当人同士でもある。

 風の噂だとかの、影でのコソコソ話は、案外巡りに巡って、本人の耳にまでたどり着くことも多い。

 すると。

 「不仲説」のせいで、妙に意識してしまい、「ちょっと合わない」くらいの間柄だったのが、本当に不仲になることもあるかもしれない。

 ひとは、そういう話を好む生き物なのか。

 そうなった時に、誰も責任なんてとれないのに。



 ――最初の話に戻ろう。


 例えば。

 とある、A氏の結婚に。

 たくさんの人から、お祝いのコメントが「発表」されても。

 同じグループの中の、B氏からのコメントは発表されていない。ほかのメンバーからのコメントはあったのに。

 とすると。

 「A氏とB氏は仲が悪い」という説が、世に出る。

 けれど。B氏は思う。


 「ちゃんと、本人に伝えたいことを伝えたから、それでいい」


 ――そう。

 ちゃんとB氏は、A氏を祝っている。ただ、「テレビ向けの発表」を、していないだけの話だ。

 こんなようにして、「誤解」が生まれることもあると思う。

 巷の「憶測」は、外部からの評価であり、それが本当に「真実」とは限らないのだ。

 それに、私達は「感情」で生きている生き物。

 ちょっとやそっとの衝突は、つきものだろう。

 

 そして、「心」というものも、時を持って移り変わるもの。それを、人工的に制御出来るかというと、そういう計算式のものでもない。

 だからこそ。

 日々のあれこれを。もっと大切に、抱えて生きるのも、悪くはないと私は思う。

 ……まあ。抱えすぎて、疲れてしまわないようにすることも大切だと、常日頃思うけれど。

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