27. 寄り添うということ

 どうすれば、いいのだろう。

 どうしたら、そのひとの痛みに、寄り添うことができるのだろう。



 ひとのなかには、その「心に寄り添う」ことが、いとも容易く出来る人もいれば、逆に困難を極める人もいる。

 そのつもりはないのに、いつの間にか結果として「寄り添って」いたというひともいるし、頑張って、一生懸命近づいているつもりでも、実際はなかなか上手くいかない、なんてひともいるだろう。


 ふと、私は思う。

 「頑張って寄り添おう」と言ううちは、まだ無理だ。そこは、力むところではない気がする。

 ただまずは、「聞く」だけでもいいんだ。

 そして、それを想像して、自分の事のように感じてみる。

 そうして。

「大変だったんだね」

「頑張ったね」

「無理しなくていいんだよ」

 そんな、簡単な言葉でも、いいんだ。あとは、感情が表情に追いついてくる。



 そう言うと、「それが難しいんだ」と、声が聞こえそうだけれど。

 だから、日頃から「想像力」を高めるのも、1つの大事な手だ。

 まるでそれが、自分の身に起こった事のように喜んで、怒って、悲しんで、笑う。それを日頃から、ちょっとだけオーバー気味に感じるのも良い。

 その「喜怒哀楽」を見せるだけでも、時には容易く、ひとの心を揺り動かすこともあるのだから。

 そういうのは、意外と伝染する事も多いものだ。

 たぶん、この話に関しては、頭で考えるだけじゃ上手くいかないと思う。


「寄り添う」


 難しいようで、思うよりは単純。

 身近な言葉のくせに、一筋縄ではいかないこともある。

 どろどろとした、ひとの嫉妬。

 きらきらとした、子どもの眼。

 ぽろぽろと落ちる、誰かの涙。

 たくさんの音で奏でる、笑い声。

 それは、人間が「感情」を司る生き物である所以だろう。

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