14. 「かわいそう」という言葉

――かわいそう。


 それは、私の嫌いな言葉の中のひとつだ。

 同時に、小さいころからなんとなく聞いていて、いい加減聞き飽きた響きの言葉でもある。

 だって、その一言で。

 そのひとの、それまでの生まれから、境遇やら。

 病気だったり、障がいへ対すること。

 「それ」にちゃんと向き合おうとする勇気も。

 物事が上手くいかないことへの苛立ちと、それでも前へ進もうという「強い意志」も。

 更には、そのひとを支える周りのことも。


 時には。

 あえて突き放したり、厳しくすることで、本人を成長させようとする試み。それへは、ただただ批判をして。どれだけそのひとが頑張って、心を鬼にして、助けたいのを我慢していることかなんて、知ったこっちゃなく。


それらの、「努力」だったり、挑戦することへの「勇気」や、ただ耐えるしかない周りからの「冷たい視線」の数々。

 

 それでも、前へ行こうと。

 ひたすらに足掻くひと。 

 なんとか、この世の中で。

 「親」なき後でも生きていけるように、教えるひと達。

 それら全てをひっくるめて。


 ――「かわいそう」


 なんと、酷く他人事で無責任な言葉か。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る