第17話 魔獣コイン

 チャリーン。


 と、キルユーの消滅した場所の床に、なにかが落ちた。

 俺は隣のソシャルに訊ねた。


「あれは?」


「さあ……なんでしょうか。魔王ガチャの魔獣を倒したことはなかったので……」


「ふむ。初めて見る現象なわけか」


「なにかなー。なにかなー」


 ガチャリカが、ひょいっとそれを摘まみあげた。


「むむ。これは! なにかのコインみたいです」


「コイン? なるほど。コインか……。ガチャリカ、見せてくれ」


「べつにいいですよ。はい」


 ガチャリカが放ってきたコインを俺は受け取った。

 たしかにコインだ。

 金属の円盤。

 材質はプラチナが近い。

 白っぽい色で、光を虹色に反射している。

 表面には、見覚えのあるパイルバンカーを象った絵が彫られていた。


「やっぱりな」


「勇者様。なにかわかったのでしょうか」


「俺の予想が正しければ……。よし、試してみるか」


 俺はガチャの間の中央にある台座からチョコのカプセルをどかしたあと、真ん中のくぼみにコインを置いた。

 ぱんぱん、と手を2回叩く。

 それを合図にガチャの塔が機能を発揮する。

 コインが輝き――


「ああっ、またですか!? またカツキさんだけガチャを!」


 次の瞬間、カプセルが現れていた。

 上半分が半透明で中身が見えず、下半分がコインと同じプラチナのカプセルだ。


「ずるいです! ずるいですよ! ドロップさせたのはわたしだったじゃないですかぁ!」


「いや、これはガチャじゃないから。たんなる作業だから」


「はぁ? ガチャじゃない? どういう意味ですか?」


「出てくるものが決まってるんだ」


 俺が手を触れると、かぱっとカプセルは開いた。

 中身が露わになる。


「きるる?」


 先ほど消滅したはずの少女が、そこにいた。


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