第14話 気づいてしまった女神

「これ、どうしますか?」


 ガチャリカが、カプセルから溢れている大量のチョコレート――加工された板チョコをひとつ摘んで言ってくる。


「なあ、思ったんだが、すべてのものが入ってるガチャってすごい闇鍋だよな」


「イベント期間なら討伐ピックアップされてるんじゃないですかね?」


「いまってイベント期間か?」


「イベント期間と思ったときが、イベント期間です!」


 強い意志で、ある程度確率は偏らせることは可能ということだ。

 ただ、闇鍋であることには変わりない。

 しかし、そうなると――

 低レアとはいえチョコばかり出たのは、無意識の結果としては偏りすぎではないか?


「はぐはぐ。あまにがーい! ビタースイートぅ」


 ガチャリカは板チョコをパキパキ割って食べ始めた。

 チョコで膨らませた頬に手を当てて、はわ~と幸せな吐息をついている。


「どうするかな……」


 杭打ち少女キルユーを倒す装備がほしいのに、手に入らなかった。

 追加してガチャを回そうにも資金が尽きている。


「あの、勇者様。やはり我々の蓄えを使っていただけないでしょうか」


「いや、それはできない」


「ポリシーは理解いたしました。ですが、このままでは杭打ち少女キルユーに全滅させられてしまいます。ですから、どうか……」


「もぐもぐ。もぐもぐ。ハッ、そういえばわたしまだガチャ回してませんよ!?」


「資金は尽きた」


「ちょっ、え? うそ……わ、わたしのぶんも回したって言うんですか……?」


 ガチャリカは信じられないものを見る目を向けてきた。心外である。


「いや、お前はもともと一文無しだろ。前の世界のクエストで稼いだぶんは借金返済で消えてるし」


「だとしてもッ。だとしてもですよッ、1回くらい回させてくださいよおおおお!」


「いや、あの、ですから……我々の蓄えを……」


「そ、そうですよー、カツキさん! わたしが回すぶんくらいもらってもいいじゃないですか!? タダで回せるチャンスですよ!」


「というかな。そもそも、もう回せないと思うぞ」


 俺の言葉にガチャリカとソシャルが「え?」と声を漏らした。


「時間切れだ」


 ドガアアアン!

 背後で、鉄の扉がぶち抜かれる音が響いた。

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