第12話 ガチャの仕様を語る女神
ぼっ、ぼっ、ぼっ――魔力を帯びた青白い炎が壁の燭台に灯っていく。
ガチャの間は直径20メートルほどの円形の広間だ。
中央に丸いくぼみのある台座が設置してある。
天井を見上げると、真ん中に白い円が、周りには幾何学模様が描かれていた。
「カツキさん。知ってますか? ここには世界のすべてがあるんですよ」
「ああ。そうらしいな」
この世界のガチャの仕様を、俺は大女神から聞いていた。
「ガチャとは可能性です。観測されないままの可能性の具現が、ガチャなんです」
――何が出てくるかわからないのなら、何もかもが出てくるかもしれない。
だから、すべてがある。
「それがわたしたちのガチャです。素敵ですよね! わたしたちのガチャは、願いを叶えるガチャなんです!」
だが、限界はある。
それは『出る』と強く信じられるものしか、出ないことだ。
加えて、誰も知らない『未知』のものは出せない。
つまりこの世界の住人がガチャの塔を使っても、この世界の常識の範囲のものしか手に入れることはできない。
――では、俺なら?
数多の世界の魔王を(ゲームで)倒し、数多の世界を(ゲームで)救ってきた俺なら?
問題は、引き当てられるかどうかである。
ガチャの怖いところだった。
俺は懐の革袋を取り出す。
これで足りるだろうか。
「勇者様、この時のため、わたくしたちは資金を貯めてまいりました。どうぞ、これで……」
「いや、せっかくだが他人のカネは使えない」
「えつ」
「えーっ、なんでですか? せっかく用意してもらってるのに。たくさん回せないじゃないですか?」
「なんでかっていうと、ポリシーだな」
「ポリシーでガチャに勝てるんですか?」
「いい質問だ。覚えておけよ? ポリシーがなくてもガチャは回せる。だがポリシーのないガチャはただの作業だ。そこに勝利はない」
俺はワケあってガチャを禁止している身だが、解禁する条件も決めていた。
勝利のためのガチャだ。勝つためなら、回していい。
革袋からカネを取り出す。ガチャをするための特殊な金属でできたカネだ。
転移前の世界から引き継いだものだが、共通で使えるはずだった。
――さあ、ガチャを回そうか。
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