第11話 はしゃぐ女神



「ついに、ついに、この時が来ました!」


 ガチャリカは両腕を広げてくるくると回っていた。

 回りすぎて金髪が体に巻き付いている。

 ぴたりと止まって、ニコッと笑う。


「ガチャの時間です!」


 俺たちがいるのは『ガチャの塔』――その入り口の前だ。

 杭打ち少女キルユーに俺たちの攻撃は効かなかった。

 倒せる装備を手に入れるため、こうして『ガチャの塔』にやってきたわけだった。


「あの、大丈夫でしょうか……」


「安心しろって。まだ破られてはないから」


 背後を気にするソシャルに俺は答えた。

 一時撤退するにあたって、キルユーは障壁で覆って閉じ込めてある。

 直接的な攻撃は効果がなかったが、閉じ込めることには成功した。

 今も破ろうと中で暴れているが、俺の魔力が尽きるまでなら障壁を維持することは可能だ。


「それも心配ではあるのですけど……。本当にここで釘打ち少女キルユーを倒せる装備が手に入るのかな……って」


「たぶんな。あの防御力は制限のあるタイプだろ。他の攻撃に対して無敵なぶん、弱点があるはずだ。というか、その弱点を知ってたりは?」


 名前を知っていたからもしかしてと思ったが、ソシャルは首を振った。


「すみません。名前以外は解析が進んでいなくて」


「いや、攻略のしがいがあるってもんだ」


「早く、早く行きましょう! ガチャがわたしを呼んでいます!」


 ガチャの塔の入り口は巨大な門に閉ざされていた。

 数人の警備兵が立っている。

 ソシャルに気づくと敬礼してきた。


「おお、聖女様! ご無事でしたか! 『魔王のガチャ』が降ってきたので心配していたのです! 修行を終えてすぐに『勇者召喚確定台座』に向かわれたと聞きましたが……すると、この方々が?」


 ソシャルがうなずく。


「ええ。ですが今は詳しい説明をしている時間がありません。至急『ガチャの間』を解放してください」


「おお……! ついに我らが反撃の時が!」


 警備兵たちが慌ただしく動き、重たい門が開き始めた。

 俺たちが通り抜けるとき、彼らは敬礼とともに期待に満ちた視線を送ってきた。


「「「皆様、どうかこの世界を救ってください!」」」


 ガチャリカがぐっと親指を立てた。こんなふうに


「あ、はい。ガチャ回せるならなんでもいいです!」


 キラキラ輝く笑顔だった。

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