第8話 逆恨みの女神
「にょわあああああ!」
「あっ、ふあっ」
少女二人の悲鳴があがる。
飛来した巨大な黒い球体により、俺たちが召喚された台座は粉々に押しつぶされた。
衝撃波で破片と土砂が飛び散る。
俺は周囲に物理障壁を張ることで、脇に抱えた少女二人を、それらから守っていた。
障壁越しに、俺は落下した黒い球体を見上げる。
抱えた片方――法衣の少女の言葉を頭の中で反芻する。
「『魔王のガチャ』、か……」
「あ! カツキさんが悪い顔になりましたよ! わたしにイジワルするときの顔です! 知ってますよ! わかってますよ!」
「勇者様が……笑ってらっしゃる……?」
俺のステータスは、最初に大女神に召喚された際に、元の世界でのゲーマーレベルを元に設定されている。
チート的スキルの付与も勧められはしたが、努力して得た実力以上のものを得るつもりはなかった。
つまり『チートではないが、世界のことわり内における最強』あたりが、俺の現在のステータスだ。
ゲーマーであれば、このあたりまでやり込む者は、珍しくもないだろう。
そして、そういった者たちのための舞台もまた、用意される。
俗に、エンドコンテンツと呼ばれるものだ。
――黒い球体からは、エンドコンテンツのにおいがする。
「なるほど。楽しめそうだ」
衝撃波が治まったので、俺は抱えた少女を地面におろした。
俺が障壁を張った場所以外の地面は無残にえぐられ、むき出しの地層が見えるようになっている。
俺は法衣の少女に目を向けた。
彼女はよろめきはしたが、へたり込むことなく立っている。
「ええと、キミの名前は?」
「あ……はい。わたくしはソシャルといいます。勇者様」
「単刀直入に聞くが、『魔王のガチャ』っていうのは、なんなんだ?」
「はい。『魔王のガチャ』とは魔王による召喚術です。強力な魔力によって魔界から強力な魔獣を呼び出すんです。SR以上の魔獣が確定で召喚される恐ろしい攻撃なんです。そして、今目の前にあるのは、大きさから見て間違いなくSSR……いえ、それ以上かもしれません! 逃げてください! 貴方をここで失うわけには! わたくしが時間を稼ぎます!」
法衣の少女――ソシャルは俺の前に出ようとした。
だが、それより早く動いたヤツがいたのだ。
「なっ、魔王がガチャ回してるんですか!? わたしが回せていないのに!? そして1発でSSRを出したと!? 許せません……。許せませんよ……。魔王はわたしを怒らせましたよ……! ゼッタイに許せません。ゼッタイにゼッタイのゼッタイに!」
拳を振り上げ、ガチャリカは駆けていった。
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