第1章 (ガチャの)やりがいのある世界

第7話 新世界の女神

「おっ、お待ちしていました、勇者様……」


 目を開けると、神官のような白い法衣を纏った少女がいた。

 うやうやしく頭を下げていて、編み込んだ黒髪が肩から垂れている。

 俺はいったん景色に目を向けた。

 場所は小高い丘である。幾何学模様の陣が描かれた台座の上だった。

 広がる森と、遠くに『ガチャの塔』が見える。

 転移する前に大女神から聞いていた。

 ここは、前と同じところもあるが、違う世界である。


「このたびは召喚に応えていただき、ありがとうございます。わたくしは――」


「やったー! やってきました異世界!」


 と、俺の横でガチャリカが言った。


「あ、あの……」


「さあさあ、約束ですよ、カツキさん! ガチャをしに行きましょう!」


「いや、その前にこの子の話を聞かなきゃだぞ」


「そんなものはスキップです! あらすじで十分ですよ。『少女は、この世界は魔王が復活していて、カツキさんを召還したのでいっしょに倒しに行きましょうって言うのであった。』。以上! 早くガチャ引かせてくださいよ!」


 言うなりガチャリカは台座を跳び降りようとして――


 ゴチン!


 見えない壁にぶつかってひっくり返った。


「うう、空があお……くはないです。曇り空ですね。ん? あれ? 何か黒っぽいものがこっちに向かってきてます……?」


 俺にも見えていた。

 黒いものは、どんどん大きくなっていた。近づいて大きさがわかるようになったと言うべきか。

 巨大な球体。

 直径は100メートルほどだ。

 法衣の少女が叫ぶ。


「に、逃げてください! 『魔王のガチャ』です! ひゃわっ」


 俺は法衣の少女とガチャリカを脇に抱え、台座を飛び降りた。

 降ってくる黒い球体の下敷きにならない場所に待避する。

 直後――

 さっきまで俺たちのいた台座に黒い球体は激突した。

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