第37話
嘘をついてはいけないと、小さい頃から母に言われて育った。きっと俺だけではなく、ほとんどの子どもはそう言われて育ったのではないかと思う。
しかし嘘をつくことなく大人になる人間はいないだろう。もしいるとしたらそれは大人ではない。子どもだ。嘘をつくという知恵を持たない無垢すぎる赤子だ。俺は勿論子どもじゃない。だから嘘をつく。後ろめたさなどはない。大人ならして当たり前のことをしているだけなのだから。
あの女・・・紗綾に軽くちょっかいを出したことを、今は後悔している。紗綾は俺が何の気なしに言った、ちょっとした社交辞令を真に受けて、店に来るたびに浮かれているようだった。男慣れしていないようには見えないが、長期間夫以外の人との接点を持たない淋しい生活していると、些細なことでも嬉しくなってしまうのかもしれない。
上から偉そうに女を分析しているが、俺だってあの頃、紗綾に負けないくらい淋しい日々を生きていた。
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