第36話

 

 今日はどう過ごそうか・・・。


 このメールを見てから一切の家事を放棄したくなった。夫の顔など見たくもないし、夫好みの食事を作ることも考えただけでうんざりした。


 彼がいないとわかっていても店に行ってみようか。少しでも家から離れられれば、このメールを見つめながら彼と過ごした記憶に焼き付いている時間を想い起こして幸せな気持ちに浸れることだろう。


 行こう。店に彼がいなくても思い切って『彼がいた』空間に行って日常から離れてみようと思った。しかし今日は宅配便の不在票に連絡しておいた分の荷物を受け取らなければならない。面倒なことに、主婦には普段の家事の他にも、割とやらなければならない細々とした雑用も多い。


 荷物が来るのは昼過ぎだから、それを受け取ってから早めに夕飯の用意もしておけば、夕方からなら短時間だが出かけられそうだ。時間が気になるなら今日は自転車でぱっと行って夫が帰って来るギリギリに戻ってくればいい。


 そう自分を許すと体の強張りが解けた。そして夕方のために頑張ろうと気力が湧きだした。

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