第30話
次の日は一日かけて本を読み切った。内容はまずまずだったが、問題はこの読み終わった本をどうするかだった。明日にでも彼がいそうな時間帯に店に行って直接返すか、メモに書かれたアドレスに連絡をして個人的に会って返すか。
もちろん直接店に行って手渡すことが一番スマートで後腐れなく返せる方法だということはわかっているが、簡単に返してしまうことが惜しかった。私はできるだけこの甘い不安定な気分に浸っていたかった。
そう思っていてもなかなかあのアドレスにメールする勇気がわかず、夕方まで悶々と悩んでいた。そんなときにスマートフォンが鳴った。メールの受信を知らせる音だった。
はいはい、と誰に言うでもなく呟きながらスマートフォンを手に取りメールを開く。近所付き合いも友達付き合いもない私にメールしてくる人間と言えば夫か実家の両親くらいしかいない。帰宅時間が迫っている今、連絡してくるのは夫の方だろう。そう思いながら画面を見てみると、案の定メールは夫からだった。
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