第28話
「あー腹いっぱい」
ティッシュで口元を拭いながら夫が言う。
「さっさと結婚できるといいな、こいつら」
ティッシュをポンとテーブルに置いて夫は椅子から立ち上がった。
私は生ぬるくなったグラスのお茶を喉に流し込んで、抑えきれなかったため息をついて俯いた。目線の先にはパンくずが散っている。きっと夫の方にはもっと多くのパンくずが散っていることだろう。
夫の一日は終わっても妻の一日はまだ終わらない。食器を洗って、風呂の掃除までしてやっと一日が終わる。そして数時間もすればまた新しい一日が始まるのだ。
死ぬまで繰り返されるルーティーン。
自分の屍。夫の笑顔。カウンターの向こうにいる彼。全てがメビウスの輪に乗っかって頭の中で回り始める。体は疲れているのになぜか脳はやたら元気によく回る。今日は夢にまで途切れない輪っかが出てくるかもしれない。
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