第24話

 「平成のこの時代でも、なんだかんだで選ぶのは男の方なんだから、女性は選ばれる容姿で男の前に出るべきだと思うんだよなぁ」


 夫はバゲットをぽいと口の中に放り込んで、したり顔でテレビを見ている。


 「そんなことないよ。今の時代、男の人より社会的地位が高かったり経済力のある女性は増えているんだから、女性だって男性を選ぶと思うよ」


 夫の女性蔑視な感じのする言葉に少しイライラした。きっと朝から続いている本に関するモヤモヤで精神的に疲れて短気になっているのだろう。しかし夫から見れば、気楽な専業主婦の私が普段以上に疲れているところを見せるわけにはいかなかった。怪しまれないためにも私はいつも通りの私でいなければならないのだが、心と頭をフル活用した今日は難しかった。


 「まぁね、でも男より能力が上の女は怖いなぁ。かかあ天下になりそうだし、尻に敷かれ続ける人生なんてやってらんないからさ」


 笑いながら話す夫を見る私の顔は、きっと能面のようだったと思う。有能な女性を嫌がる夫に選ばれた私は有能な女ではなく、平凡で男性より格下な存在なのだということが突然はっきりしてしまった。そして夫はそういう目で私を見ているということもわかった。


 私は自分のことを有能だと思ったことはないし、経歴や能力からしても優れた女だと己惚れることすら難しい人間であるということはきちんと心得ていた。しかしいくら自分のことを分かっているとはいえ、夫の無神経過ぎる発言は聞き流すことができなかった。怒りがこみあげてきている私に気付かず、話し続ける彼に向けている私の顔が能面から般若の面に変わっていなければいいのだが・・・。

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