第17話
その付箋を見た後、私の頭の中は一瞬真っ白になり、その後に猛烈な気恥ずかしさが襲いかかってきた。今まで生きてきて、男性からこんなアプローチを受けたことなどなかった。もしかしたらこれはいたずらで、私の反応を陰でこっそり見ながら店のみんなで笑っているのかもしれない。しかし店のスタッフたちは私の方を気にしたりはしていない。では一体何なのか。彼は私に何を求めてアドレスを教えて来たのか。
付箋と彼の顔と主婦という私の立場が円になってグルグル回り、頭の中は混乱するばかりで考えようとしてもまるで機能しなかった。メールアドレスを書いた彼の心情と私の心が乱れている訳、そして店を出てから変わっていきそうな私たちの関係性。私には何一つわからなかった。心を掻き乱されている私は、突然やってきた嵐に巻き上げられた木の葉のように頼りなく、無防備だった。
レジでさっきと変わらず客に笑顔を振りまいている彼の顔を見ながら、どうしたものかと再び手で顔を覆ってしまった。その手に触れた頬はおかしいくらい熱くなっていた。
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