第12話

 今日の空は晴れ。水色の空には刷毛で掃いたような薄い雲が描かれている。夏の眩しいくらいに澄んだ青い空から徐々に秋の落ち着いた色の空に変わりつつある今、私を置いて時間とともに季節も過ぎて行っているのだと実感する。ほとんど家から出ることのない私は外の変化に疎い。無関心なわけではないが、気付いて観察できるほど視野が広いわけでもなかった。自分の殻に閉じこもってばかりいる私のもとにももう少しで木々の葉が色付く控えめにも鮮やかな季節が訪れるのだ。


 時間や季節が移り替わるスピードは速いので、私など置いて行かれるのも無理はない。今生きているこの時も、私が死んでしまった後でも時はいつでも驚異的なスピードで流れていくのだろう。そのスピードは死神すら凌駕するほどの勢いで神羅万象を司るのだ。私のような塵みたいな存在など「置いて行かれる」などという言葉を使うことすら可笑しいに違いない。


 しかし今私の見上げている空は穏やかだ。時の激しさなど微塵も感じさせない空は今日もゆっくり風と共に私を見下ろしている。


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