第7話

 空っぽな会話と食器とカトラリーが発する音に支えられた食事は夫が一足先に食べ終わって、身支度を整えにリビングを出て行った。私はトーストを齧りながらテレビの方へ視線を移す。右から左へと耳を素通りしていくアナウンサーが伝える情報を冷めた顔でやり過ごしていると自分のスマートフォンが鳴った。パンくずの付いた手を皿の上で軽く払ってスマートフォンを操作する。メールだった。


 よく行くカフェのキャンペーン情報だった。季節限定の商品が今日から発売されるという知らせで、会員には五パーセントオフで商品を提供するとのことだった。テレビでもスマートフォンからでも私が求める本当の情報などは発信されない。知っていても知らなくても生きていける情報ばかりが流れ込んでくる。


 誰一人として私の求めているもの、行き先、居場所の情報を教えてくれない。平坦な道をただただ歩き続けるだけの毎日に道標や地図は存在しない。私は一人、不気味に続く道を何者かの力によって歩かされている。その何者かを知るとき、私はきっと今の自分の人生に覚醒するのだと信じている。

 

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