第5話

 夫から不満が出ないように出来立ての朝食を提供するための計画的な行動。彼が起きてから席に着くまでの時間を計算して調理しているのだ。別に愛情があっての行動ではない。仕事をしている社員として上司からダメ出しをされないように任された仕事をこなして、末永く雇い続けてもらえるように励む感覚に似ている。自分にしかわからない責任感に操られながら毎日仕事をするように家事をしている。


 テーブルにランチョンマットとカトラリーをセットしていると、ぱたぱたと気怠そうにスリッパを鳴らしながらリビングに眠たそうな顔をした夫が現れた。


 「おはよう。ごはんもうできるからちょっと待ってて」


 「おはよう。今日の新聞は・・・あ、朝刊は休みの日だったか」


 会話のような独り言のようなやり取りをしながら目を合わせることなくそれぞれ違うところを見て違うことをしながら食卓を囲むまでの時を過ごす。


 楽しみでも苦痛でもない無の時間。心の中も無にして私は皿に食べ物を乗せることだけに集中した。


 

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