第4話

 朝はほぼ同じ時間に夫より先に起きて、いつも通り身支度を済ませたら朝食の準備に取り掛かる。


 サラダ用の野菜を洗って皿に盛りつけた後、トースターに食パンを入れてトーストする。夫が休みの週末以外は朝から夜まで、まるでロボットのように決められたタイミングで決められたことをしている。これから何十年と繰り返していくであろう日課を今日も淡々とこなしていく。


 意味があるようで無いような作業だが、外で働かない代わりに家の中で仕事をしているのだと思えばそんなに苦ではなくなる。窮屈な満員電車に乗ることも面倒な上司に悩まされることもない、なかなか快適な仕事だ。給料は出ないけど。


 オレンジ色のライトに当てられながらオーブントースターの中でゆっくり色付くパンを眺めながら凝った首をぐるりと回していると薄い壁の向こうで寝室のドアを開ける音がした。そこからすぐ別の扉を開ける音がしてドアが閉まった。リビングに入る前にトイレに行ったのだろう。


 私はまた仕事を始める。フライパンに油を敷いて卵を落としてから蓋をして蒸し焼きにした。この動作は夫が起きて来るタイミングを見ながらやっている。

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