第3話

 しかし自分が望んだ通りの恵まれた生活の中で、私は毎日同じ景色を眺めながら死神の訪れを待っている。自分でもなぜこんな状態になってしまったのかはわからない。所謂鬱というものなのか、それとも贅沢なことにこの幸せな日常に飽きてしまったからなのか・・・。


 わからないなりに自分で自分を分析してみると、ただただこの世に未練がなくなったという理由が一番分かりやすい分析結果な気がする。猛烈に欲しいと思う物は無いし、会いたいと思う人もいない。やりたいことも行きたい場所もない。あの世は除いては。


 不自由も不満もない生活を送っているうちに欲までなくなり、今では抜け殻のようになってしまった。


 私は空っぽだった。面倒な仕事や煩わしい人間関係から距離を置いて手に入れた自由と引き換えに、私は名も知らぬ大海に一人で放り出されたような虚しさに苛まれるようになった。大海をふわふわと漂ううちに先に進むことも戻ることもできない場所に来てしまった。波さえ来ない凪いだ海で一人、私は空を見上げてどうすることもできずに浮かんでいる。

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