第3話 魔剣



「これ、あんたが作ったのか?!」


和也がカウンターの上に作った67本のポーションを置くと、店主は目を大きく見開きそう問てきた。


「そうですけど。作ったのは初めてなので効果は期待しないでください」


本当は効果はちゃんとしてるけどこういうのがセオリーだと、知識が教えてくれるのでその通りにする。


「これで初めてだと…」


店主の顔色が次第に青白くなっていく。

少ししてハッとと頭をあげた店長はポーションの査定を始めた。


「これは痛み止めだったよね?」


和也は首を縦に振って肯定する。


「それじゃあ、赤が1本金貨1枚。紫が銀貨1枚。黄は大銅貨1枚だな」

「わかりました。それでいいです」


交渉でもう少し値を上げられるかもしれないけど、別にお金に困ってるわけでもないから今はいいだろう。それに十分すぎる金額だし。


「合計で110500リオンだ。釣りは王金貨がないから大金貨で勘弁してくれ」


そう言って店主はトレーに乗せた大金貨2枚と金貨と大銅貨一枚づつを渡してきた。和也はそれを受け取って財布(巾着袋)にしまう。


「そうだ、あんた。うちの雇用薬師になる気はないか?」


雇用薬師、それは、この道具屋専属の薬師になって、普通に買い取る金額より安くなるが、その分定期的にちゃんとした収入が入るということだ。

別に和也は薬師ではないのでこれを受けるつもりはない。

だが、ここできっぱりと断ってしまうのはこの世界の常識上よくない。


「考えときます」


これがこの世界での満点の答え方だ。


「そうかわかった。いい答えを期待しているよ」

「はい。あと追加で大瓶を10個ほど欲しいんですが、ありますか?」

「ああ、あるぞ。そっちの棚から好きなだけ持って行ってくれ。金は要らん」

「え?いいんですか?」


別に和也は瓶を買う必要はない―硝子を一から精製できるから―のだが、帰りにまた湖の清水を汲むのに使うので必要なのだ。空き瓶を持ってくるのを忘れたのでね。


「ああ、その代わりこれからもこの道具屋を贔屓にしてくれ」

「わかりました」


それを最後に道具を後にした。


(次は食料だ。次こそは忘れないぞ)



「いらっしゃい」

「食材や保存食、食料はありますか?」

「ああ、あるよ。何が欲しい?」


和也は店に入って開口一番忘れないように目的を店主に告げた。

今回欲しいのは調味料と素材、あとおいしい肉が欲しい。


「調味料と葉野菜、あと特上の肉を一か月ほど」

「わかった。揃えるのに少し時間がかかる。村の中を少しふらふらしててくれ。小一時間ほどしたらもう一度来てくれ」

「わかりました。では一時間後」


この開いた一時間何をするか?

和也の服装は、茶色の麻服、革の丈夫で動きやすいズボンと靴。和也は小屋にあった小振りのナイフしか持っていない。得物を持っていないのだ。


(よし、武器を買おう)


別に武器くらいならもらった知識で市販のやつより強いのが作れるが、やっぱりこの世界のことを知りたい。


村の中は一軒家ばかりで目立ったものは特にない。どの店も店の特徴を示した看板が表にかかっている。

武器屋の看板には盾とその後ろに交差する日本の剣が彫られている。



「いらっしゃいませ。本日はどのような武具をお求めですか?」


そう和也に声をかけたのは、薄い赤色の髪をしたかわいい少女だった。


(しまった。まだどの武器にするか決めてなかった)


うーん?どれにしようか?和也は頭中に思い浮かべた武器からどれが一番自分に合うか考えている。頭の中で仮想敵とのシュミレーションを行ったりもしている。


「じゃあ、短剣を二つ」

「わかりました!短剣はあちらのガラスケースの中です。気になったのがありましたらお声かけください!」


少女は店の少し奥に入った所の中央にあるガラスケースを指さして、気を掛けてくれる。


ガラスケースの中には様々な形や大きさをしたナイフや短剣が置かれている。

その中には小太刀のようなものからサバイバルナイフのようなもの、ククリナイフと呼ばれるものまで揃っていた。

その中で和也が一番気になったのは―


「すいません。この小太刀取り出してもらってもいいですか?」

「わかりました!」


そう言って少女は店の奥から鍵を取り出し、ガラスケースの中から刃部分に黒い麻布が巻かれている小太刀を取り出し、和也に渡す。


「これ、布とってもいいですか?」

「はい!大丈夫ですよ!」


何かとこの少女は会話の時に元気になる。カウンターに座っている時はどこか上の空なのに。どうしてだろうか。


小太刀に巻かれている麻布を取ると、中から真っ黒の刀身が姿を現した。

普通の人では感じ取れないかもしれないが、和也は感じ取った。


(この刀身。魔力を帯びている?)


そう、この小太刀は魔力を帯びていた。すなわちというやつだ。


「あの、この小太刀って何か特別なものですか?」

「いいえ、ただの小太刀ですよ。前にこの村に来た冒険者の方が路銀の足しにうちに売っていったものです!」


その売っていった冒険者もこの小太刀が魔剣だとは知らなかったのだろうか?それに少女、この店の人たちもこれが魔剣だとは気づいていない様子だ。


「いくらですか?」

「15000リオンです!」


(魔剣なのに激安だな!)


「本当にその値段でいいんですか?」

「ええ、いいですよ!」


やっぱりこの小太刀の本当の値打ちを知らないらしい。けれどそれを和也が教える義理もない。

そして、ガラスケースの中にはもう一振り。これと同じ小太刀がある。


「じゃあ、あっちの小太刀もいいですか?」

「あの真っ白の刀身のやつですか?」

「そう、それです」


ガラスケースの中にはもう一振り、真っ白な刀身をした小太刀が置かれている。

ガラスケースの中から取り出した白い刀身の小太刀を少女はカズヤに渡してくる。


「これも15000リオンですか?」

「それは魔剣なので50000リオンです!」


流石にこれは魔剣だとわかったらしい。けれど、二つ合わせても65000リオンだ。魔剣二つでその値段だと激安だろう。

和也は大金貨と金貨と大銀貨一枚づつを支払って店を出た。


そろそろ約束の一時間後だ。食材屋に向かおう。


数ヶ月後、この武器屋に二つの小太刀を路銀の足しに売った冒険者がすごい形相で買い戻しに来たのは別のお話。



「おお、ちょうどいいところに来たね。ほら、これで注文を受けていたもの全部だ」


店の端には注文した、調味料壺一杯分、葉野菜麻袋一杯分、上等の肉50キログラムが置かれていた。その近くに注文はしていない木箱が置かれている。


「あの木箱は?」

「ああ、あれは東国で取れるというやつでね。お試しで付けといたよ」


和也が木箱の蓋を半分開けて中身を確認すると、中には白い粒、米が20㎏ほど入っていた。米は少し縦長でタイ米みたいだ。


「これ無料ですか?」

「ああ、おいしかったら教えてくれ。でも次からは金をとるからな」


和也は注文した食材たちを順にカバンの中に閉まっていく。

店主はその光景を見て目を点にしてが、魔法道具だと伝えると納得したように首をウンウンと振っていた。


(これで村で買いたかったものは全部買ったかな。じゃあ、小屋に戻るか)


小屋に帰る前にまた湖により、買った大瓶に静水を組んでから戻っていった。



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