第1話 チートすぎる能力

和也が目を覚ますと、耳には小鳥のさえずり、木々の擦れる音が聞こえてくる。


「俺ほんとに異世界に来たんだな」


周りを見渡すと木のテーブルやイス、棚などが見える。手元には一つの革製のカバンがポツンと置かれている。

これがたくさん収納できるカバンか、とその小ささに驚きながら手に取る。

カバンは何も入ってないくらいに軽く、軽く振ってみても中身の者同士がぶつかる感触はない。

カバンを逆さにしてみると―


ドサッ、バサー


カバンの中身だと思われるものが溢れ出てきた。出てきたものはとてもこの小さなカバンに入る容量ではない。


和也は溢れ出たものを一つ一つ確認しながらカバンの中にしまっていく。物をカバンの中に入れると、まるで吸い込まれていったかのように消えていく。


(これが知識がある感覚か。違和感を感じる)


道具を見るだけでこれが何に使われて、どのように使うのかが勝手に分かる。不思議な感覚だ。


和也は一旦小屋の外に出てみることにした。


外は木々に囲まれていて森の中だということがすぐに分かる。目覚めた小屋はログハウスと呼ばれるものだ。

ログハウスの周りにはこの小屋を作ったのに使われたと思われる切り株や倒された木々があり、少し開けたスペースができている。


とりあえず和也はできることからやっていくことにする。


まずは辺りに倒れてる木から木刀作りだ。木を切る機材はカバンの中に入っている。


まずは倒れている木を二メートルほどにカットし、表面を削っていく。

木をカットするのは当たり前でノコギリだが、あまり力を入れずに切ることができた。同じく削るのも大して力を込める必要はなかった。


そこからは大方の形を取り、少しずつ調整していく作業だった。


木をカットしてから数十分。初めての木刀ができた。出来は上々の出来だろう。左右のバランスが違うということもなく、店で売れるほどの作品が出来上がった。


(知識に従って作ったけどすごいものだ。初めて作るのにこのクオリティ。俺って天才か?)


そんなことを考え、木刀に軽く装飾を施してみる。またしても簡単に出来てしまう。

そう言えばレミリアが近くにパージュ村というのがあると言っていた、ことを思い出し和也の次の目的が決まった。

その前にカバンの中身をもう一度確認してみる。

<カバンの中身(大雑把)>

・鍛冶生産道具

・武具作成道具

・魔法道具作成道具

・家具作成道具

・薬作成道具

・裁縫生産道具

・硝子精製道具

・革(皮)精製道具

・建築生産道具

・その他

・カタログ

・財布(巾着袋)

━━━━━━━━━━


さぁ、パージュ村に行ってみよう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


小屋のある森を出て数十分で村が見えてきた。

大小の木の柵に囲まれた村で、入り口は東と西に一つずつ。男爵家の領地で、門の付近には男爵家の兵が数人立っている。村を覆っている柵の外れには畑があり、数人の農夫が鍬をもって土を耕している。

和也が門に近づくと、一人の兵がこちらに駆けよってくる。


「止めれ。初めて見る顔だな。この村に何の用だ」

「私は江藤和也といいます。旅をしているものです。この村にも寄りたく来たのですが」


兵は俺の身なりを見て一瞬顔を顰めたが、俺のカバンを見ると何か納得したのか小さく頷いた。


「かなり荷物が少ないように見えるがそのカバンだけか?」

「はい。これは魔法道具マジックアイテムの一つでして」


与えられた知識の中からこの現状を打破できる口実を見つける。


「そうか。一応注意しておくが、村の中ではおとなしくな。暴れたりすることのないように」

「ええ、わかっていますよ。ああ、そうだ。何か観光名所はありますか?」


旅をしていることになっているのに何も見ずに帰るのはおかしい。何かしらの観光名所は見て帰るべきだろう。


「そうだな、村から出て数分歩いたところに、昔水龍が住んでいたと言うとても澄んだ湖がある。行ってみるといい」


兵は北の方を指して、大まかな位置を教えてくれる。水が綺麗だと良い薬が作れると、知識が教えてくれるので後で汲みに行こう。

和也は兵に案内されて無事に村の中に入ることができた。



村に入って最初に道具屋へと向かった。作る道具はあっても、それをしまう容器がないのだ。


「すいません。開いてますか?」

「冷やかしなら帰ってくれ」


店は見るからに閉まっているようだったが、幟が上がっているため恐る恐る店に入る。


「すいません。ここに小瓶って売ってますか?ポーションなんかを入れる」

「おや?あんたは薬師か何かかい?小瓶ならそっちの棚に置いてあるよ」


店主は和也の隣の棚を指さし教えてくれた。棚には大中小の小瓶が少し埃をかぶって売られていた。和也はその中から小瓶を5つ、中と大の瓶を3つずつ手に取りカウンターに持っていく。


「小瓶が一つ200リオン。中瓶が300リオン。大瓶が500リオンで合計で3400リオンだ」


リオンとはこの世界のお金の単位である。


<この世界の硬貨>

     単位(リオン)

銭貨・・・10

銅貨・・・100

大銅貨・・・500

銀貨・・・1000

大銀貨・・・5000

金貨・・・10000

大金貨・・・50000

王金貨・・・100000


━━━━━━━━━━


和也はカバンの中に入っている財布(レミリアが多分善意で入れてくれたであろうお金が入ってい)から大銀貨一枚を取り出し、カウンターに置く。店主はそれを取るとカウンターの下からトレーに乗せて、銀貨一枚、大銅貨一枚、銅貨一枚を渡してきた。それを受け取り財布にしまい、店を出た。


これで今日村に来て、やりたいことは終わった。あとは森に帰るついでで、湖から今日買った大瓶に水を汲むだけだ。


湖は確かに透き通っていて綺麗だったが、綺麗すぎて魚が居ない、住めないのだろう。知識ではこの水は清水と出ている。ポーションを作るのに最も適してる水なんだそうだ。

その水を大瓶3つ分汲むと小屋へと帰っていった。


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