生産職は最強職!

因幡 天兔

第0話 不審者

「どうもこんにちは。自称神です」

「…は?」


目の前に立つ全裸の男に、もうそろそろで大学受験という呪縛から解き放たれる青年は答える。

いい気持ちで寝ているところを起こされた青年の名は江藤えとう 和也かずやといい、高校三年生。あと少しでセンター試験も始まり勉強漬けになっている毎日を送っている。

眠い目を擦りながら見る目覚まし時計は午前2時を指している。

しかしその眠気も目の前に現れた全裸の男のせいで眠気も吹っ飛んだ。


「誰だっお前?!最近ここらで出てる変質者か?!」


深夜に近所迷惑だとは思うが、そんなことは気にせず。


「俺はレミリア。変質者ではないのでそこのところは気を付けてもらいたい。頼みがあってきたのだ」

「いやいや!どこから見ても変質者だろ!」


レミリアの変質者じゃない発言は絶対に嘘だ。

和也は部屋を見渡し、すぐに逃げられるよう逃げ道の確保に徹する。

俺が扉に駆け寄る前にレミリアが行動を起こす。


「逃げないでくれ」


そう言いつつレミリアが手をパンッと叩く。

すると和也の部屋から真っ白の何もない空間に変わる。


「へ?!」


急に地面が無くなり、和也は態勢を崩す。


「え?え?え?」

「地球の技術じゃ考えられないだろうか、一旦落ち着け。ただ空間を移動しただけだ」

「空間を移動?!どこのファンタジー世界だよ!!」


あまりに現実離れした現象に和也は突っ込むしかなかった。

ああ、これは夢か。とも思ったが、そんな考えを呼んだのかレミリアが首を横に振る。


「夢ではないぞ」

「いやいやいや、ありえないでしょ!」

「一旦落ち着けと言ったろ。地球人からしたら信じられないかもしれないが今は気にするな」

「わかった、落ち着こう。お前は何者だ。それに俺に頼みがあると言っていたな。なんだ」

「俺か?俺は地球人で言う宇宙人だな。地球より進んだ世界のな」

「宇宙人?ほんとに居たんだな」

「ほんとに落ち着いているんだな。なんでだ?普通もっと焦ったりするものだろ」

「そりゃ、俺の為にこんなに大がかりのセットを使うわけもないだろ。そしたらお前の話を信じるしかないだろ?」

「そりゃ、まあ、確かにな。大人びてるな、お前」


それにしても宇宙人って言われても俺たちに姿がよく似ているな。てっきり宇宙人ってやつはグレイとかでっかいタコとかそんな形をしてるのかと思ってたのだが。


「それはお前たちの勝手な想像だ。宇宙人だって姿かたちはそんなに気持ち悪いものではないぞ。それにこれは俺の本当の姿じゃないしな」


やはり普通の人では無いようだ。和也の心の中を呼んで答えを返してくる。


「じゃあ服も着ればいいのに」

「あれは身体を高速されている気がして嫌なのだ」

「意味わからん」

「分かってもらえるとも思ってないさ。そろそろ本題に戻りたいのだが」


やはりこいつは変質者で間違いない。本題に戻ってもらおう。


「で、なんで俺の場所に来たんだ」

「驚かずに聞いてくれよ。君はこれから30分後に火災で焼死する。そこでだ、君を俺のダチが趣味でやっている世界箱庭の住人になってほしいんだ」

「俺がこれから死ぬ?現実味がないんだが」

「それもそうだろう。だが、信じてほしいな。死んでからじゃ世界箱庭に招待できないからね」

「でも、家族とかと離れるのもな…」

「どうせ30分後に君が死んでも家族は生きてますから。それにここで死ねば受験戦争から逃れられますよ」


この言葉に和也は一瞬心が揺らいだ。和也の行きたい大学は倍率20倍の超難関校だ。その勉強から解放されるかと思うと、心が揺らぐ。

しかし、和也が死んでも家族が死なないのなら、と思うところもある。


「それにもし君を世界箱庭に招待すれば君の存在はこの世界の皆から消されるので大丈夫ですよ」

「でもなんで俺なんですか?他にもっといい人が居たでしょう」

「それはな—」


レミリアはもう一度手を叩くと、空中に映画館並みのどでかいウィンドウが現れる。

そこには青い惑星地球と見たことのない真っ黒い球体が映し出されている。


「この黒い惑星は俺の生まれた星、俺達は黒死星と呼んでいる。名前通りこの星は死んでしまっているんだ。そこで俺の今いる星、白聖球では黒死星を復活させようという計画が出てな、そのエネルギー源として君が選ばれたんだ」

「いくつか気になることが」

「なんだ」

「まず、なんで黒死星という惑星は滅んだんですか?もしかしてですけどエネルギー不足とかじゃ」

「ほお、よくわかったな。その通りだ。黒死星は星核からエネルギーを抽出しすぎて星が枯れたんだ。で、まだ気になることはあるのか」

「俺がエネルギー源に選ばれたってことですか?」

「そうだ。この世界で一番いいエネルギーになるとわかったのが君だったんだ。」

「で、自称神と言ってましたが、どうゆうことですか?」

 

レミリアは和也との出会い頭にそう自分のことを名乗っていた。


「それは俺が白聖球で呼ばれている俗称だ。地球人から見たら世界の管理人みたいなものだ」

「世界の管理人ですか。スケールがデカすぎてイメージできない」

「それもそうだろう。だがそれはこの話には関係ないから気にしなくていいよ」


レミリアはまた手を叩いてウィンドウに映る映像を変える。そこには目の前にいるレミリアが数多くの民に崇められている風景が映っている。

数秒映像を映すと、また手を叩いてウィンドウの画面を切り替えた。


「それでどうだ?どうせ死ぬんだしいいだろ?」

「いやー、でもなー。もう少し考えさせてもらっても?」

「別にいいが後20分しかないぞ」


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「わかりました。その招待受けます。けどその前にどんな世界箱庭か聞いても」


俺がこれから行く世界箱庭は地球と同じ球体で、大きさが地球の約100倍。太陽と同じくらいだ。

月は地球とは違い、二つある。北と南の月に別れていて、世界の周りを周っている。太陽も月と代わりばんこで世界を周っていて、地球と月の関係だ。

曰く、剣と魔法の世界で、いろいろな種族が暮らしている。だが、種族同士は中のいい種族もいるが、犬猿の仲の種族もいるらしい。

世界箱庭が作られてから1万年と少し経っていて、自分たちの世界(白聖球の世界)に近づかないように千年に一度、文明を破壊しに行っているらしい。

最後の世界箱庭破壊が行われたのは500年前らしい。


「剣と魔法の世界ですか。まるでファンタジーの世界ですね」


ラノベやRPGゲーム、ファンタジー系の物語が好きな和也は行ってみたいとよりいっそ強く思った。


「ファンタジーというものはよくわからないが、まあそうだろう。魔法という超常現象が使えるようになる」

「じゃあ、そろそろ君は死んでしまうから手続きを始めてもいいか」

「はい。じゃあよろしくお願いします」

「よしわかった。じゃあ、君のあっちの世界でのなりふりを決めよう。何か注文はあるか」

「何が選べるんですか」

「何でもなれるぞ。王様だろうが勇者だろうが絶対強者だろうが性別を変えることもできるぞ。もちろん異種族になることも可能だ」

「異種族はなしかな。やっぱりこの体で第二の人生も楽しみたいし、王とか勇者なんかもなしかな。いろいろと旅をしたいし、そういうのに役に立つのがいいな」

「そうか。そうなるとかなり絞られるな」


そう言ってレミリアが選んでくれた選択肢を空中のウィンドウに映し出してくれる。

表示されたのは、吟遊詩人や曲芸師、旅芸人など、さまざまだった。これでも絞ってくれたのだから、一から選ばなくてよかったと思う。


「才能や運動神経なども底上げできるがやるか?」

「それは頼む。あと、この中からランダムに選んでもらうってできない?」

「別にできないことはないが、それでもいいのか?」

和也は首を縦に振って肯定する。


「才能などを決めるのは後でいいな。その前にランダムで決めるんだよな。これでいいか」


またまたレミリアが手を叩くと画面の表示が変わる。出てきたのは四角い格子の中に小さく文字が書かれている表だった。その中の一つが黄色く光っている。


「この光が動き出したら、自分のタイミングで「ストップ」と言ってくれ。そしたら光が徐々に止まりだすから。その止まったのが君のあっちの世界でのなりふりになる」

「わかった」


用はルーレットだ。レミリアが「行くぞ」と声をかけると、表の中の光が動き出す。その動きはランダムで規則性はない。


「ストップ」


光は徐々にマスを移動する速度を遅め、止まった。止まったマスの文字がウィンドウに大きく表示される。


「生産職?」

「これは、あらゆる生産するものの知識と腕、生産に使う・使える魔法、生産に使われる道具を渡すことになる。知識は当たり前だがあっちの知識だ。生命が作れるものなら何でも作れるぞ。素材は調達する必要があるが、カタログと呼ばれる素材が詰め込まれている本もプレゼントするぞ。ただしこれには回数制限があるから気をつけろよ。でどうする。これにするか?」

「それは楽しそうだな。それに役にも立ちそうだ」


剣と魔法の世界なので、普通の剣とかではないはずだ。魔法剣や魔法の代物が作れるはずだ。これはいいものを当てたかもしれない。


「実際、あっちの世界ではズル過ぎる能力かもしれないな。自分の作ったものだ。身を守るのにも信用できるだろうしな」

「身を守るほど、危険なんですか?聞いてないですよ」

「もしもの話だよ」


今レミリアが爆弾発言をした気がしたが、流していいのだろうか?


「じゃあ、ようやく才能を決めよう。こんなにずるい能力を貰えるんだ。控えめにしろよな」

「じゃあ、少し身体能力をあげてもらうだけで大丈夫ですよ」

「そうか?じゃあ、次は出現地だな。あと所持品もか。そうそう、君は既になんでも収納できるバックが生産職の道具類に含まれてるから」


レミリアは出現地について深く考え込む様子を見せる。


「ここなんかどうだ?レライド大陸の西部、セルシオ王国の中のパージュ村っていうところの近くの山の中にある小屋の中。セルシオ王国はここ最近は平和だから安全だと思うし」

「そこでいいよ」

「よし分かった。じゃあ、そっちの台に寝てくれ。データを君にインプットしていくから」


またまたレミリアが手を叩くと何もなかった真っ白な空間の一部が膨れて、長方形の台が現れた。


「じゃあ、第二の人生楽しんで来いよ」


そう言われると、俺の意識はだんだんと朦朧としてきた。そしてあと少しで意識を手放そうという時。


「そうだ。言うの忘れてたけど君は寿命では死ねないから。不老ってやつだね。じゃあ、行ってらっしゃい」


お、おい!心の中で叫んだがこの言葉がレミリアに届いたかどうか。

俺は完全に意識を手放した。




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