第96話 日本ではない別の世界の朝……。 (2)

 だから儂は素知らぬ振りをすることにする。


 そう、世の言う狸寝入りと言う奴をして、妻の儂への欲望をやりすごそうと思う。


 まあ、そう言った事情があるから、儂は狸寝入り──。部屋の扉の方へと向いていた自身の身体を寝返りする振りをしながら。扉の方へと自身の背を向けて、素知らぬ振りをしたのだ。


「がぁ~、がぁ~。ぐぅ~、ぐぅ~」


 と、いびきをかいている振りをしながら。


〈トントン〉


 ん? 儂の寝所の入ってきた妻の可愛い足音がするよ。


 う~ん、まるで~? ウサギがピヨン~、ピヨン~と跳ねながら歩く、可愛らしい足音が聞こえてくる。


 それも更に、ピヨン~、ピヨン~と、飛び跳ねながら部屋の奥にあるクローゼットへと向かっている……ではないね?


 う~ん、どうやら? ウサギやリス、カンガルーのようにリズムよく跳ね歩く足音は、儂が只今横になっているベッドへと向かってきているようだ。


 う~ん、となると?


 儂の妻の誰かが。夫である儂の寝込みを襲いにきたみたいだ?


 う~ん、でも、儂の腹部の下にある聖剣は、昨晩から夜明けまで休む間もなく使用されたから元気の方がないのだ。


 朝の男の性という奴でも勢いと元気の方がない様子なのだ。


 だから儂は先程、傍から見ている皆達に言葉を漏らした通りで、妻(侵入者)に対して、狸寝入りを決め込んだわけなのだ。


 まあ、儂が、狸寝入りの状態でこんなことを自身の脳裏で思案をしていると。


 儂の寝ているベッドが『ギィ~』と軋み沈んだ音が小さく鳴った──!


 となると? 妻の誰かが、夫の儂へと添い寝をしながら甘える状態へと入ったみたいだ?


 う~ん、だから儂は、どうしたらいいのだろうか~?


 先程傍から見ている者達に告げた通りで、儂の聖剣の方は、もう限界なだから、トマホークを発射することはできない。


 た、多分、なぁ~?


〈ピト! スリスリ……〉


 う~ん、もう儂は、自身のトマホークが発射する? しない? をゆっくりと思案をする時間も残されていない。


 だって儂の妻一人が完全に儂の横で添い寝──。


 儂の首筋や背に、自身の濡れた艶やかな唇を当て、甘え始めだしたから。


 それも妻の口から、甘い声色で遠回しに、夫である儂へと要求をしてきたのだ。


 窓の外で鳴く、鳥達のさえずりのようにこんな感じで。


「旦那様~。未だ寝ていらっしゃるのですか~? もう良いお時間ですから~。そろそろ起きないと~」

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