第32話 儂は家族に憤怒して家を飛び出した (3)

 だから儂も、「やめやぁ~。押すな~。いい加減にしないと許さない──」と、荒々しい言葉を女房に吐いてやった。


 だってこの家の主である儂を力づくで、追い出そうとするからついついとムキになってしまったよ。


 もう、収まりがつかない。儂の腸は煮えくり返ってうるから、彼女に対して暴力だけは振るはないようにはしようと耐え忍んでいたのだが。もう儂の堪忍袋の緒が切れてしまったから、自身の拳を力強く握り締めた。


「ただいま……」


 ……ん? あれ? 儂が自身の拳を握り締め振り上げ──。女房の顔へと放とうとしたら。家の玄関から息子の声がしてきた。


 すると家の女房が、「おかえり~」と、玄関にいる息子へと告げた。


〈パタパタ……〉


 ……ん? あれ? 可笑しいな? 家の息子は、二階にある自身の部屋へと直接向かわずに、儂等夫婦のいるリビングの方へと向かってきている気がする?


 でッ、リビングのある部屋の扉の前に着くと。


〈ガラガラ……〉


 と、扉のドアを開け儂ら夫婦を凝視──。


「何をしているの、二人共……? いい歳をして喧嘩をして……。あのね? 二人夫婦喧嘩の声が外まで聞こえているから。いい加減にしないと恥ずかしいよ」


 と、儂と女房に告げ諫めてきたのだよ。

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