③この世界を私が救ってみせます!

 今日の仕事は、何かな~♪


 私は今日も天使です。天使以外の何者でもありません。あっ!亜神でもありましたー!忘れてました!テヘペロっ!


 何処かで<世界神>様の溜息が聞こえましたが、そんなの気にしませんっ!


 あっ!ドアノブが赤く光りました!天使さんは今、行きますよっ!待っててくださいっ!


 天使は一つの扉の前に立ち、ドアノブを捻る。扉は開いた。


 この扉の名は世界の扉。数兆程の扉がここにはある。この扉は、一つ一つ違う世界に繋がっている。天使は危機が訪れた世界を救う勇者を救う為、その世界に駆け付ける。


 ◇◆◇◆◇


 <魔境世界ドリメセーデン>


 ここは他の世界よりも魔物が多いという特徴がある世界です。未だ文明はあまり発達していません。天使として私は勇者を救う必要がありますが、天使として話し掛けて良いのは、勇者と教会の巫女や聖職者プリーストだけです。


 私が降り立ったのは、この世界で最も大きい都市。都市の名前は<人民都市アルグワァーデ>です。


『ワァ』という発音は『ワ』と同じだそうです。要するに<アルグワーデ>と言う事ですね。紛らわしいですっ!


 そのアルグワァーデの中央には王宮があります。小さな王城ですが、少しばかりの文明の発達を感じます。そして、その王城から少し離れた場所に……ありました!教会です!


 私はそこを訪れます。中では誰かが話しています。暫く様子を見ましょう。


「勇者は無事なのか?」


 聖職者プリーストである男が尋ねました。


「いえ、現在<連絡屋>が戻ってくるのを待っている状況です。」


 その質問に巫女はこう答えました。


 巫女の言った<連絡屋>とは、<地球>という世界での郵便局みたいなものです。まだ<地球>という世界のように携帯電話やスマートフォンなる物は発達していませんが……後、どれくらいしたら登場するのでしょうか?


「……そうですか。神よ、勇者をお救い下さい。」


 それを聞いた聖職者プリーストは神に祈りを捧げました。巫女も同じく祈りを捧げます。


 やっと私の出番です!


『神に祈る者達よ。』


 えっ?私のいつもとは違う声って?それは私みたいな可愛い女の子の声だったら信じてくれないじゃないですか。女神様が出しそうな声に変換するのです。……誰がチビって言いましたか!?


「め、女神様!!」


 巫女は慌てふためきます。神に祈る事は良いことなのですよ?慌てることはありません。


『落ち着きなさい。私は神として神託を授けます。』


「それは本当ですかっ!?女神様!!」


 ほらぁ!言ったじゃないですか!女神様の声なら絶対に信用してくれるって!これで一万年やり過ごしているんですよ?


『ええ、本当です。私が勇者に力を与えましょう。勇者に教えてあげなさい。神に祈れ、と。そうすれば、勇者に新たな力を授けましょう。』


「分かりました!すぐに向かわせます!」


 聖職者プリーストの男は、教会から出ていった。


『では、また世界に平和が訪れんことを。』


 まあ、魔王を誕生させたのも神様達ですけどね。私は勇者の元へ向かった。もし、勇者が祈れば、すぐにでも分かるようになっている。


 これ以降、勇者が祈らない限り、他の生命体に接触してはならない。これが私の掟です。


 遠目で街を見ていると先程の聖職者プリーストが<連絡屋>で勇者に伝言を伝えるように言っていました。これで恐らく大丈夫でしょうが、心配ですね。<連絡屋>を追いましょう。


 勇者の方へ向かった<連絡屋>は一時間ほどして出てきました。恐らく危険でない道筋をあれこれと考えていたんですねっ!流石、私!名推理!……って、さっきから誰なんですか!?私をチビって言うの!


 私はスタートダッシュが遅れてしまいました。足の早い<連絡屋>を見失う所でした。<連絡屋>は早い勢いで<アルグワァーデ>から出ていきました。<連絡屋>ってだけで都市の出入りは自由なようです。


 悪い人たちも出入りしないのかな?ちょっと警備が甘いと思う。


 まあ、私は私の仕事を果たそう。


 私が追いかけた<連絡屋>が勇者が滞在している街<辺境都市ヴッヅェレランド>に一週間後に着いた。


 この都市も名前が変だわっ!何よ!ヴッヅェレランドって!ブッゼランドって発音なんだから、そのままで良いでしょうが!


 ……私は勇者の住む宿屋に行きました。勇者の住む宿屋は高級宿屋。流石、勇者待遇ですね。


 あっ、<連絡屋>が中に入りました。宿屋の主人と話していますね……。どうやら伝号が伝えられたらしいです。それでは、祈られるのを待つとしましょう!


『神よ、私に力をお貸しください!』


 勇者の祈りですね。では、力を与えましょう。


『勇者よ。祈りは聞きとげました。力を与えましょう。その力で魔王を討伐しなさい。』


 再び女神声ですっ!勇者が感謝していますが、これが私の仕事なので感謝される程のことでも無いんですけどね。それでも嬉しいですね!


 私は任務を遂げたので<神の世界>に帰りますっ!


 ◇◆◇◆◇


 私が<神の世界>に戻って数日後。<神の世界>は他の世界と時間の流れ方が違うので<魔境世界ドリメーセデン>では、数ヶ月です。<世界神>様からある知らせが来ました。


「亜神よ。<魔境世界>は救われたようだ。仕事御苦労。」


「いえ、お気になさらずに。」


「そうか、また仕事を頼むよ。」


「はい。」


 私は<世界神>様の部下なので<世界神>様相手に調子に乗りません。いつも乗っていませんが。……聞いていますよ。誰ですか、チビって言ったの!関係ないでしょ!!


 私は最近、空耳が激しいようです。神様病院に言った方が良いのでしょうか?


 それにしても今回も世界が無事で良かったです。私は一万年の間に失敗が無いエリートですが、万が一失敗があっては<世界神>様に怒られてしまいます。頑張らなくっちゃ!!


 そうして、私はまた次の世界を救いに行くのです。

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