第4話捜査
スタタタタッ…
廊下を走る音が聞こえる。
警察に話して3日が経つ。病院にも3日いる。
あの時トドメに刺されていたらきっと
もう私はここにはいないだろうし、この世にもいないんだろう。脇腹だけで済んだからもう明日には退院出来る。でもずっとこの事ばかり考えてるから正直自宅に戻るのは怖い。仕事復帰もしなければならないが、あの職場に行くのも気が引ける。
トントン
廊下の騒がしい音が私の部屋の前で止まった。「はい」私は返事すると勢い良く入ってきたのは警察の方だった。
「ハァハァ…筒井さん、はじめましてこの事件の担当となりました竹田です。」
竹田葵と書かれた警察手帳を私に見せ挨拶してきたので私は軽く会釈した。事件と呼ぶくらいの事になってるんだ…となんだか申し訳なくなった私がいた。
「で、今回私がお伺いしたのは筒井さんにもう一度お話して頂きたいからです。
筒井さんが仰っていた男は同僚の浅井という男で間違いありませんか?」
「はい。色白で細身、黒縁メガネをかけています。
どうかされたのですか?」
竹田さんはメモを確認しながら私の話を聞いていた。話を聞き終わるとカバンから資料を出し私に見せ口を開いた。
「こちら筒井さんが通っている会社の全部署の名簿になります。」
私にそれを渡してきた。
「あの…どこの部署にも浅井という男は居なくて。筒井さんが言っていた姿を色々捜査したのですが…」
竹田さんは続けた
「浅井はいないんです…申し訳ないのですが他に心当たりはないですか?」
浅井はいない…?
そんなはずはない、私は朝にデスクにいた姿を見ているし話してもいる。確かにその後は見てないけど…
「私話したんですよ!いないって事がありますか?あの男だけ誰も知らない夢の話を知っていたんです!爪を噛みながら笑って…」
混乱した。
大きな声を出したからか刺された跡が痛かった。
「筒井さん…私も上司から夢の事は聞きました。大変な悪夢でしたね。」
起き上がった私の背中を摩り、あやす様に言った。
「あの…精神科の医師とお話して頂けませんか?」
夢は夢でしかない。
私以外に信じてくれる人なんか現れないと心がざわついた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます