3#お客様はカモメ達

 「やあ!コブハクチョウのフッド君!珍しいじゃん!どおしたの?」


 オオハクチョウの女王様は大喜びして、久しぶりに湖にやって来た『お客様』に会釈をした。


 「まあ、今年は『あぶれ』ちゃってね!暇で暇で暇で暇で。

 で、適当に飛んできたら、例の霧に巻き込まれてまたここに来ちゃった!!

 あれ?オオワシとマガモは?」


 コブハクチョウのフッドは、キョロキョロと周りを見回した。


 「ごめーん!オオワシのリックは北の故郷に。

 マガモのマガークは・・・」




 ばさばさばさばさばさばさ・・・




 「女王様ぁーーーー!!こんなの見っけたぁよー!はいっ風船!!」


 ぺらっ。


 「何?このキラキラする丸い袋は?これも風船?」


 ハクチョウの女王様は、その丸いフニャフニャした袋を嘴で突っついたり、しごいたりして感触を確かめた。


 「これ、『マイラー風船』っていうのよ。」


 「あ・・・あなたは・・・マガモのマガークさんの・・・『番』ですか?」


 コブハクチョウのフッドは、マガークの隣の雌マガモに聞いた。


 「ええ、そうよ!『クッコ』って言うの!!コブハクチョウさん。」




 ・・・『番』・・・




 コブハクチョウのフッドは、その場でヘナヘナと空気ビニールのハクチョウ人形から空気が抜けるように、倒れてしまった。


 「おーい、コブハクチョウさーん!大丈夫かーい!」


 「あらやだ。そうとうフラれたのがショックだったんだねえ。」


 


 ふぅーーーーっ!!




 「ぶっ!!」


 コブハクチョウのフッドは、嘴に誰かが息を吹き込む者にビックリして、顔を上げた。


 「き、君は・・・ああっ!!ハシボソガラスのカーキチとカースケ!!

 な、何でここに??」


 「俺達、カモメ達のナビゲート役。一回ここに来たじゃん。君と一緒にな。

 覚えてるう?」

 

 カーキチは首を傾げてコブハクチョウにおどけた。


 「うん・・・覚えてるよ。父ちゃんに叱られながらね・・・

 仲間みんな今、隣の国で起きた鳥インフル騒動で、ルートにそこ通、大事を取って立ち往生だよ。

 自分はその群れに居たけど独立したから・・・」


 「ふーん。ねえお分かり?そこのハシブト。」


 ハシブソガラスのカースケはニヤリとしてポン!と翼を話を聞いていたハシブトガラスのフマキラの頭に乗せた。


 「・・・あのさあ・・・『ブト』を舐めるなよ、『ボソ』・・・」


 フマキラは声色を変えてカースケを睨みつけた。


 「おいフマキラ、大事なお客さんに粗相はやめろよ。」


 「はーい!」


 ハシブトガラスのフマキラは気前よく返事をした。



 

 ばさばさ・・・ばさばさ・・・



 

 空を滑空るように、白い者達が上空からやって来た。


 


 「おーーーーーーい!!女王様ですかあ?約束通りやって着ましたぁーーー!!」


 セグロカモメのオギは、大声で叫びながら悠々と降りてきた。


 


 「カモメ・・・」


 「カモメさんだ・・・」


 ハシブトガラスのフマキラやチョール、その隣のハシボソガラスのキュットとコナーズは口々に感嘆の声を上げた。




 「おおおーいI俺はゼグロカモメのトフミ!!すげえーーーーーー!!!!カラフルな花の絨毯だあーーーー!!」


 「俺は、オオセグロカモメのインディな!!」


 「僕は、ホイグリンカモメのフィーバ!」


 「あたしは、シロカモメのサンキュ!」


 「わいは、セグロカモメのクオリアや!」


 「あたいは、ユリカモメのアディユよ!」


 「おら、オオセグロカモメのガノサンだ!」


 「あちきは、セグロカモメのスタディだす!」


 「わては、ウミネコのプリテンダでないかい?」


 「そして・・・わしが、これら『カモメ風船倶楽部』の長、スターオじゃ!!」




 ふうわり・・・ふうわり・・・




 カモメ達は、湖の周りをバランスを取って舞い、やがて水面を鰭脚を付けてざざーっ!と湖水を蹴って降り立った。


 「あれっ?まだ一羽飛んでるぜ!」


 「よく見ろよ!!あいつ、片足が・・・」


 片脚のカモメは、もう片一方の脚に掴んでいた沢山の萎んだメタリックのマイラー風船を、湖の広場に集うハクチョウ達へ向けて投げ落とすと、



 ひらり、ひらり。




 「ハクチョウの湖のみなさーーーん!風船も持ってきたじょーー!!」


 「またメタリック風船かよー」


 鳥達は、苦手な輝きを放つマイラー風船に嘴をぽかーんと空けた。


 「おーい!片足のスターオ隊長ぉー!ここでぇーす!」


 カラスのカースケとカーキチ、


 そして、




 ばしゃっ!ばしゃっ!ばしゃっ!ばしゃっ!ばしゃっ!ばしゃっ!ばしゃっ!ばしゃっ!



 お供のカモメ達が次々と陸地に上がって、翼を降って着陸点を誘導する合図を送った。




 ばしゃっ!




 「おっしゃーっ!」


 最後に陸地に上がってきたカモメのトフミは、持参のストローを萎んだマイラー風船の吹き口に差すと、




 ぶぶーーーーっ!!


 ぶぶーーーーーーーーっ!!




 と、息を吹き込んで膨らませた。


 「マイラー風船って、こうやって膨らますんだあ。」


 湖の鳥達は、興味深々にカモメのトフミの膨らますマイラー風船を見つめた。




 ・・・うわー!凄い緊張感・・・




 カモメのトフミは、顔を赤らめて更にマイラー風船のメタリックが張るくらいに膨らませる途中・・・




 「トフミぃーーーー!!どけどけどけどけーーー!!」




 ぽん!ぼふっ!ばーーーん!




 セグロカモメのスターオがマイラー風船のクッションがパンパンすぎて、バウンドしたとたん、重みでパンクして、スターオはずっこけた。


 


 ピキピキピキ・・・


 スターオは、怒りの形相でクッションの風船を膨らましすぎたトフミを睨んだ。


 「あ、ああ、す、すいません!!スターオ隊長ぉ!!」




 ばきっ!ぼかっ!ばすっ!




 セグロのスターオは、したっぱカモメのトフミを翼でボコった。


 「よっこらしょっと!オーイ!誰か『義足』頂戴!!」


 セグロのスターオは、びっこの片足にお供のカモメが持ってきた、針金で出来た義足をはめると、ヒョコヒョコとハクチョウのメグ女王様達の側へやって来た。


 「『風船カモメ倶楽部』のスターオさん!とても逢いたかったです!

 で、脚は?」


 ハクチョウの女王様は、スターオの針金の義足の片足を見ていった。


 「ええ、そちらこそ。同じごみ風船を集める者として、光栄じゃよ!

 脚のことじゃが、それは昔、若カモメの頃、脚に風船の紐がきつく絡み付いててな、放置してたらそこから腐って取れちまいやがった。」


 「・・・・・・!!」


 ハクチョウの女王様は絶句した。


 ・・・飛ばした風船の被害がここまで酷いとは・・・


 「ねえ!カモメさん!あたいがその脚、治してあげましょうか?」


 そこに、アヒルのピッピがやって来て、カモメのスターオのびっこの鰭脚を嘴で調べた。


 もわーん・・・


 「腐っ!カモメさんの脚の裏、海臭い!」


 アヒルのピッピは、思わず鼻の孔を翼で塞いだ。


 「君が、大量にばら蒔かれた風船で傷付いた鳥達を次々と直していった、可愛いアヒルちゃんか。

 じゃが、わしはこれをアイデンティティにしてるんだがね。

 風船の本当の恐ろしさを伝え、『風船カモメ倶楽部』設立の意味の『証』として、この脚はあるんじゃよ!

 別にびっこでも、慣れれば・・・」


 「隙ありっ!」 


 ハシブトカラスのハイアスは、セグロカモメのスターオの片脚を『ヒザカックン』させようと、嘴を脚の関節に近付けた。


 「たわけっ!」


 スターオはニヤリと、待ち構えてたカラスのハイアスをぽかん!と振り向き様に嘴で突っついた。


 「イタッ!かあっ!」


 カラスのハイアスは、強烈なセグロカモメのスターオの突きに恐れをなして、飛び逃げた。


 「ああ、ごめん!で、『交流』としてお土産なんだが、はいっ!」



 ばさっ!



 「あら。マイラー風船ばっかりじゃん。」


 湖の鳥達は、マイラー風船の吹き口に嘴を突っ込んで息を吹き込もうとも、なかなか膨らまず、頬だけがめいいっぱいパンパンになるだけだった。


 「そんな時には?」


 「はいっ!ストロー!!」


 カモメ達は、マイラー風船を膨らますのに四苦八苦する湖の鳥達に、ストローを投げ入れた。


 「カモメさん達ぃ、これを吹き口に刺して息を吹き込めばいいのね?」


 「うん!」


 湖の鳥達は、言われた通りマイラー風船の吹き口にストローを刺して、そこから息を入れてみた。




 ぶぶーーーーーーぶぶぶぶ!!




 マイラー風船は、表面のフィルムを吐息でなびかせながら、もっこりとどんどん膨らんでいった。


 「マイラー風船は、ゴム風船みたいに大きく膨らむと、洋梨みたいにならないから!

 パンパンに膨らますコツは、表面のシワが少々無くなってピッシリ張るまで膨らませるんだよ!」


 「なるほろー!カラスのカースケだっけ?こうして見ると、まるで俺の大嫌いな黄色いの目玉のあれみたいだなあー!

 あっ!ハイアスの奴!いつの間に戻ってきたんだ?」


 「おいおい、フマキラよお、そんな目で俺を見つめんなよ。

 つーか、これ一向に膨れないなあ。」




 ぴっちぴち!ぱつん!ぱつん!




 頬袋と頬をめいいっぱいはらませ、顔を真っ赤にして膨らますハシブトガラスのハイアスのマイラー風船は、表面が張りすぎて、接合部分が捲れ、正にはち切れそうになっていた。



 「うわぁ!もういい!お、お前!ゴム風船とか、勘違いしてるんじゃ・・・」




 ぱぁん!!




 ハイアスのマイラー風船は、遂にパンクしてしまい、真っ二つに破けてしまった。


 「ぎょっ!」


 ハイアスは尻餅をついて、目を見開き呆然と仰け反った。


 「あーあ・・・割っちゃった!!お前、お客さんに何度失礼なことするんだ?ハイアス・・・」


 ハシブトガラスのフマキラは、涙目のハイアスにジリジリと食って掛かった。


 「うわーーーん!!風船が割れちゃったあーーーー!!」


 とうとう、ハイアスは泣き出してしまった。


 「おいおい、フマキラってやらよお。ハイアスだって今回は悪気は無かったんだし、いいじゃねえか?」


 ハシボソガラスのカーキチは、フマキラに話しかけた。


 「だいじょーぶ!風船のひとつやふたつ。わしだって何個も何個も何個も何個も膨らましすぎてパンクさせたもんじゃ!

 風船ってのは、しまいにはパンクしちまう運命なんじゃから!ふほほほ!」


 セグロカモメのスターオは、びっこの片脚を自ら膨らませたマイラー風船に乗せ、優しげに微笑んだ。


 「つーことで、その割れた風船。貸してみちょ?」


 「へ?」


 ハイアスは、カモメのスターオに割れたマイラー風船を渡した。


 「よぉーく見ておれ。すぐ『再生』してやっから。」


 スターオはそう言うと、割れたマイラー風船の上にぺたんと座った。


 


 もくもくもく・・・




 スターオの尻の下から、微かな煙が立ち込めた。




 ・・・おお・・・!!




 カラスのハイアスは、目の見開いてスターオを包み込む薄い煙を見つめた。


 やがて、煙が収まると・・・


 「おーい!そこの泣き虫カラや?ちょっと来て。」「俺?」


 カラスのハイアスは、カモメのスターオに呼ばれてやって来た。


 「泣き虫カラスや、ほうら風船が治っ・・・」


 よろっ・・・


 カモメのスターオは、片方脚で立ち上がれず、その場でドサッ!と尻餅をついた。


 「おいー!誰かぁ!義足!」


 「はいっ!義足!」


 お供カモメのガノサンは、スターオの脚がない方に義足を置いてしっかりと固定した。


 「やあー!ありがと。」


 スターオは、嘴で尻に敷いた風船をカラスのハイアスに渡した。


 「はいっ!風船治ったよ!」


 ハイアスは、渡された風船の表面を翼で触れて調べた。


 「す、凄い!!風船の破れが直ってる!!」


 「義足カモメさん!まさか、貴方も?」


 膨らませたマイラー風船の紐をくわえて、引き摺ってやってきたハクチョウの女王様は、カモメのスターオに話しかけた。


 「あ!このハクチョウ凄いんだよ!

 だって、割れちゃったゴム風船を噛んで直しちゃうんだから!」


 カラスのハイアスは、ハイテンションで女王様を紹介した。


 「ほう?!」


 カモメのスターオは、ハクチョウの女王様に目配せした。


 「あら?あたいはゴム風船!」


 「わしはマイラー風船!」

 

 2羽はお互いの嘴を噛み、吐息をお互い吹き込み、翼でお互い抱きしめた。


 「あたい、風船大好き!」


 「わしもじゃ!」


 そして、カモメのスターオより図体の大きいハクチョウの女王様は、首を下にカモメのスターオの顔に突き出して言った。


 「もしかしておたくも、『魔力』持ちなの?」


 「『魔力』?ああ、まだ脚があった頃夢枕でドードーのおっさんが出て来てな。」


 「ああ、やっぱり。」


 「昔、若い頃浜辺に色あせた破れたマイラー風船が打ち上げられてな・・・」


 「・・・で、代価が片脚なの・・・?」


 「ゴム風船の紐が脚に絡んでのお、ほっといたら絡んだ脚の血の気が引いて、草ってポトリ。」


「ひゃあああああああっ!!!」


 側で聞いていたカラス達は、悲鳴をあげた。


 「俺、ここに来た時脚に風船絡まったよね・・・!!」


 ハシブトカラスのフマキラは、震え声で言った。


 「そういや、あのコブハクチョウのフッドも脚にきつく・・

 フッド?フッド!!何してるん?!」 


 ハクチョウの女王様は、コブハクチョウのフッドが激しく取り乱していることに気付いた。


 「風船!風船!膨らまし足りない!!膨らまし足りない!!風船!風船!膨らまし足りない!!膨らまし足りない!!もっと膨らましたい!!もっと膨らましたい!!」


 コブハクチョウのフッドは、自ら膨らましたマイラー風船を大きな翼で抱きしめ、バタバタ暴れていた。


 「ははあーん。『番』にフラれたショックが遂に神経までヤラレタの。」


 「ねえねえ、フッドやい。俺なんか10回も雌にフラれたんだぜ!!」


 ハシボソガラスのカーキチはい言った。


 「カーキチ!俺は13回だ!気にするな。」


 ハシボソガラスのカーキチは、ストローでマイラー風船をふーすーしながら言った。


 「何いってんの?僕は20回だぜ!カラス達よお!」


 セグロカモメのトフミは、嘴の鼻の孔をフンフン!!とさせて言い放った。


 「俺、ラブラブ!!ねー!」「ねー!」


 マガモのマガークとクッコ夫妻は、顔を膨らませたマイラー風船に乗せて言った。


 「カモさんよお嫌味かよ!嘴で風船に穴開けるぞ!!」


 カラス達は尖った嘴をそのマイラー風船に近づけて言った。


 「おいどんは20回!!」「わては32回!!」「おらは何回だっけ?」・・・


 今度はお供カモメ達も失恋話に、顔を突っ込んできた頃、上空から何かが降りてきた。


 「おい!上を見ろ!黄色い風船だ!」


 「黄色い風船じゃないわ?あれは・・・」


 


 「風船膨らましたい!!風船膨らましたい!風船膨らましたい!!!・・・ん?」




 ぽとっ。




 「ふ、風船?」


 まだ取り乱すコブハクチョウのフッドの嘴の丁度コブの上に、萎んだオレンジ色のゴム風船が堕ちてきた。




 ぽとぽとぽとぽとぽとぽとぽとぽとぽとぽと・・・どばーーーー!!!




 萎んだいっぱいのゴム風船が、コブハクチョウのフッドの上に落とされていった。


 「な、何だ?」


 大量の風船を落とした者を調べに、空を見上げると・・・


 「ペリカン・・・ペリカンのバルチ!バルチ!おめえ、ここまで来たのか!」


 コブハクチョウのフッドは、上空を旋回する黄色い嘴袋を畳むペリカンに呼びかけた。


 「うん!そだよ!君を追いかけてたら、ここに来ちゃった!!てへぺろ!」


 ばさばさばさばさ・・・


 「おーい!!何この風船?」


 鳥達は、みんなコブハクチョウの側にやってきた。


 「みんな!紹介するよ!僕の友達、ペリカンのバルチ!!よろしくね!!」


 ばさばさ・・・てくてく


 大きな翼を畳んで降り立ったペリカンのバルチは、にかっ!とおどけて微笑んだ。


 「しっかし、妙だなあ?お前。フラミンゴと友達だったり、今度はペリカンかよ。」


 カラスのカーキチは言った。


 「あーーーーっ!!バルチ?!久しぶりぃ!!」


 牝マガモのクッコが叫んだ。


 「おお!クッコちゃんじゃねえか!」


 「無事だった?」「うん・・・」


 ペリカンのバルチの目から、ほろりと涙がこぼれ、


 「あーん!」と大きな嘴を開き、


 ぱくっ!とマガモのクッコを嘴の中にいれた。


 「く、クッコちゃんが喰われた?!あれ?へ?」


 「いえーい!」クッコはペリカンの口の中で叫び、再びバッ!と口から飛び出した。


 「クッコちゃん、これはどういう仲なの?」

 

 雄マガモのマガークは聞いた。


 「実は・・・このペリカンも、私のいた沼地の仲間でねえ。元々人間のペットで捨てられたとか。

 で、例の鳥インフル対策とかで人間の皆殺しの犠牲になったと思ったら・・・」


 「クッコ・・・」


 「バルチ・・・」


 「逢いたかったあああーーーー!!」


 お互い、翼で抱きしめて大声で泣いた。


 「イイハナシダナアア!!」


 鳥達は、思わず貰い泣きした。


 

 

 ガサゴソ・・・



 「ややっ!こ・・・これは・・・!!」



 セグロカモメのスターオは、びっこを引いてペリカンが持ってきた大量の萎んだ風船を調べた。


 「これ・・・もしかすると・・・

 おーい!!ペリカン!っこの風船、どこから持ってきた?」


 「ぎく!!」


 ペリカンのバルチは、カモメのスターオの声に思わず硬直した。


 「そ、それは・・・」


 つん!!


 「あいてててっ!!自慢の嘴袋に穴が開いたらどうするんだよ!!」 


 「この風船、わしの番屋からくすねてきただろ。」


 「番屋・・・あの海岸のボロ屋のこと?そこにいっぱい風船があって、僕風船が大好きで膨らませて遊ぼうと・・・」


 「このドロボー!!わしの大切な漂泊風船コレクションを!!おめえには、嘴にゴム風船付いてるだろう!!それを膨らましてりゃいいんだよ!!」


 「す、すいませーーーん!!びっこのカモメさん!!」「誰がびっこだって?」「すいません・・・」


 「う、うん!!ハクチョウさん!」

 

 「なあに?」

 

 カモメのスターオは、ハクチョウの女王様を呼んだ。


 「せっかくじゃ!!女王様、この『魔力』で、ペリカンに持ってかれた風船で割れてたり伸びきってるやつを、再生して欲しいんじゃ。」


 「へ?それ、あんたのコレクション・・・」


 「何だかウキウキしてきたんじゃ!!久しぶりにこう・・・体中にヘリウムガスに満たされて風船になった気分じゃ!!

 みんなして、このゴム風船で遊びたくなたんじゃ!!」


 「まあ!!それは楽しそう!!」ハクチョウの女王様は、満面の笑みを浮かべた。


 


 ぷうぅ!!


 「カモメのスターオすげえ!!!ひと吹きでゴム風船パンパンに膨らんだ!!」


 ぷー!!ぷー!!ぷー!!ぷー!!ぷー!!ぷー!!


 「コブハクチョウのフッド、相当失恋の痛手が深いみたいだね。激しくパワフルに風船に息を吹き込んでいるぜ。」


 ぶぶぶぶぶぶぶぶ!!!!


 「ペリカンのバルチ面白れえ!!嘴袋膨らましてるのか、風船膨らましてるのかどっちかにしろー!!あははははは!!「」



 こうして、ハクチョウの女王様とカモメ達、そしてカラス達やカモ等の湖の鳥達は、気嚢が疲れるまで、ゴム風船やマイラー風船を膨らましたり突いたり萎ませたり、割ったりしてお互い楽しんだ。




 こうして、



 ハクチョウの女王様の湖の『愛の仲間達』は、山担当。




 カモメのスターオの『風船カモメ倶楽部』は、海担当。




 と、ごみ風船収集鳥ネットワークの提携を結んだ。

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