2#オオワシとオオタカ、そしてイヌワシ
「はあーーー!!ビックリしたぁ!!
危うく人間の空港に侵入して、航空機の『筒』に一緒に巻き込まれるとこだったぜ!!
しっかし奇遇だなあ!いたのぉ?!『大量風船被害』の鳥達の中に、お前も居たとはなあ!」
「居ましたよぉ!俺居たでしょ!!自慢の脚に風船の紐が無茶苦茶絡み付いてたでしょ?ドジだよなあ俺。風船を狩ろうとしたんだもん。」
故郷の北の国に向かうオオワシのリックは途中で出会ったオオタカのピケと一緒にランデブー飛行をしていた。
「おお!覚えてんよ『ピケ』よお!確か、頬っぺたをオオタカの精悍をも感じぬ程にパンパンにして、もの凄い勢いで黄色い風船を膨らましてたオオタカだろ?」
「あはは!そこかよ!俺、狩りのテクと肺活量は他のオオタカには負けないぜ!
何せ『どっきり』では200回膨らませたからな。」「ぷっ!」
ぐるる、きゅるる。
「なあ、ピケよお!腹へってきたなあ。長距離飛ぶとすぐ腹減るなあ。
どっかで休憩して、何か食い物狩ろうぜ!ネズミとかウサギとかキツネとか。」
「でも、ここの下はずーーーっとゴルフ場だぜ!うわっ!ゴルフボールが飛んできた!!」
「な、なに?う、うわっ!」
ヒューーー・・・
「うわっ!アブねえ!」
オオワシのリックはスレスレに、飛んできたゴルフボールを避けた。
「お、お見事『イーグルショット』!!」
オオタカのピケは、冷や汗ダラタラのオオワシのリックに笑いかけた
「じょ、冗談言うなよピケ。お前も目がいいなあ。」
「リックさんも『モウキンルイ』だから、目がいいだろ?ふふん・・・」
オオタカのピケはそこまで言うと、顔色を曇らせた。
「なあ、リックさん・・・俺の故郷もうないんだ・・・生まれ育った森は人間のゴルフ場になってさあ・・・」
「ここ?」
「いや、違うとこ。だから俺はずっと『宿無し』さ。他の森も、既に違う奴に縄張りを占領されまくってるんだぜ・・・
で、お前さんの北の故郷は?」
「えっ・・・と、俺は北の故郷全部さっ!!」
「げぇーっ!故郷全部が縄張りなの?!」
オオタカのピケは感嘆の声をあげた。
「じゃ、じゃなくて、北の故郷は俺の巣みたいなものだっつーのこと!」
「なーんだ!」
と、『風来坊』オオタカのピケと『北帰行』オオワシのリックは、ワイワイと雑談をしたり、風に乗って自由に飛び回ったり、下に獲物があれば、獲って一緒に食べたりしてのんびりと長旅を楽しんだ。
「ん?何だ?この白い鉄塔は?」
オオワシのリックとオオタカのピケは奇妙なプロペラの付いた鉄塔が海沿いの浜に何本も建っているのを見つけた。
「あっよせ!それは・・・!!」
後ろで誰かが、その奇妙な鉄塔に向かっていく猛禽2羽を呼び止めようとしたが、2羽には聞こえなかった。
「おーい!オオワシやーい!面白れえ!スラローム飛行しようぜ!」
「おおー!オオタカやーい!待ってくれー!!」
オオワシのリックとオオタカのリックは、目の前に連なる風車の鉄塔へと向かって飛んでいった。
「おいー!ワシ!!タカ!!
行くな!近寄るな!!」
声の主の声は、どんどんボルテージをあげた。
びゅううううううううう・・・
ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ・・・
「??!!!」
「?!!!」
それは、オオタカやオオワシには予期せぬことだった。
風が吹いてきた。
そして、鉄塔のプロペラが回り始め、2羽に向かってその『刃』が向かって来たのだ。
「あぶなーーーーーーい!」
「うわあーーーーーー!!」
ぴとっ・・・
「!!」
「!!!!」
プロペラが止まった。
「あれ?」
「あれれ?」
「バカタレ!!早くそこから逃げろ!!」
「??」
「はいっ!」
オオワシとオオタカは、翼を大きくはためかせ、鉄塔から急いで離脱した。
「ふぅーーーー・・・」
「ビックリしたぁーーー・・・」
ばぁーーーーーーーん!!
突然、風船が破裂する音が轟き、再び鉄塔のプロペラは回り始めた。
「し、死ぬかと思った・・・」
「あ、危ないとこありがとう・・・だ、誰?」
2羽の猛禽が荒い息を切らしている側で、一羽のクマタカが禍々しくガン視していた。
「お前ら、風力発電所へ何しに来た?死にたいのか?」
「・・・い、いいや・・・」
「つ、つい・・・まさか、風車が回るとは・・・」
オオタカのピケもオオワシのリックも、クマタカの剣幕にはただ、脚がすくむだけが精一杯だった。
「俺の名は、『マーク』っていうんだ!『風車守りのイヌワシのマーク』で名が通ってる。
で、うぬらは?」
「俺はオオワシのリックだ!」
「俺はオオタカのピケだ!」
「『リック』に『ピケ』か。いい名前だな。
うぬら、ちょっと来てくれ。」
ばさばさばさばさばさ・・・
「こ、これは・・・」
2羽の猛禽がイヌワシのマークに連れられて来たのは、こんもりと土が盛られた空き地の一角だった。
「これはな・・・あの忌まわしい風力発電所の風車の犠牲になった鳥達の亡骸だ。
どちらも、体が真っ二つになってたり、翼がもげてたりしてる奴ばかりだ・・・。」
「・・・!!」
「・・・!!」
オオタカもオオワシも言葉を失った。
「俺はな・・・俺はな・・・この巨大な凶器を建てた人間どもを心から恨んでるんだ・・・!!
何でこんなところに・・・
何で鳥がよく行き交うこの場所に・・・!!」
イヌワシのマークは、そう言うと目に悔し涙を流した。
「ううう・・・ば、『バード・ストライク』め・・・!!」
「な、何?その『バードなんちゃら』って?」
オオワシのリックが聞いた。
「それはな・・・鳥が飛行機や風車とかの回転するプロペラに巻き込まれて命を落とす事故のことだ・・・」
マークのその説明に2羽の猛禽は、激しいショックを受けた。
「お、俺達は危うくその事故に巻き込まれてそうになってたってことか?」
「風船飛ばしといい、人間はどんぐらい俺ら鳥に危害を加えれば気が済むんだ・・・!!」
「で・・・俺、今さっき風車を止めただろ・・・その話を今からする。」
オオタカのピケとオオワシのリックは、ゴクリと唾を呑み込んだ。
「俺、『魔力』が使えるんだ。『魔力』が使えるイヌワシなんだ。」
「ええっ!」
オオワシのリックは仰天した。
・・・まさか、ハクチョウの女王様の他に『魔力』が使える鳥が居たなんて・・・!!
「あ、そうだ。まだ君達の自己紹介はまだだったね!」
イヌワシのマークは2羽の猛禽に降った。
「俺はオオタカのピケって言うんだ!よろしくな!!」
「俺の名はオオワシのリック!!」
「オオワシのリック?あ、噂の霧の中の不思議の湖から来た、風船ハクチョウの『召使い』鳥だよね!」
「おお!リック!有名じゃん!」
オオタカのピケは、照れるオオワシのリックに言った。
「えへへ!ハクチョウの女王様も『魔力』で翔んでくる風船の被害で傷つきた鳥達を癒やしてるんだ。あ、このオオタカも今度は『召使い』になったし。」
「え?そうだっけ?」
オオタカのピケは慌てた。
「だってそうハクチョウの女王様言ってたじゃん!大量の風船飛ばし被害で集まった鳥達はみんな『召使い』にしてあげるってね!」
「え?そうだっけ?」
と、オオタカのピケはとぼけた。
イヌワシのマークは話を続けた。
「故郷で寝ていた時、夢枕に出てきたんだ。この林の『精霊』に。」
「まさか、ドードーだった?そいつ。女王様も夢枕で・・・」
「俺、言われたよ。
「お前はこの林で鳥達のリーダー役として、よくやってる!お前に何かあげよう。」
と言われてな。
で、頼んじゃったんだ。「巨大なゴム気球が欲しい」って!
俺、巣立って初めて高く飛んだ時、見たんだ。白いでっかいゴム気球!!
下に、何か黒い四角い物を付けてさあ。
見とれたね。おおらかにフワフワと昇っていくの。
そしたら、ドードーの妖精さん。俺の嘴で息を吹き続ければ、嘴からいくらでも大きな風船が膨らむようにしてくれたんだ。
それには、道端に墜ちている風船の破片が必要だと言うので、俺は森とかで飛んできてひっかかってた風船とか、それを拾ったカラスから奪うかして、草原とかででっかく膨らまして楽しんでたんだ。
あ、その『魔力』見せてあげようか?ビックリするなよおー!!
持ってる?萎んでるか割れてるゴム風船?」
イヌワシのマークは、ニヤリとして2羽の猛禽に振った。
「あ、ああ!こんなとこで役に立つとは思わなかったなあ!」
オオワシのリックは、逞しい指にひっしと掴んでいた、割れた青い風船をマークに差し出した。
「よおし!今から、俺の『魔力』を見せるぞ!せーの・・・はっ!」
イヌワシのマークは、風力発電の風車に気配を感じ振り向いた。
「じぇじぇーーー!!」
風車の側に、鳥影を見たマークはすかさず飛び出し、持ってた割れた青い風船を嘴にあてがって、
ぶぉーーーーーーーっ!
と、息を吹き込んだ。
すると、割れてた筈の風船がとてつもなく大きく大きく大きく大きく大きく風車の高さより超巨大に大きく膨らみ、
ぽーーーーん・・・
と、鳥影を風船のゴムにバウンドさせて撥ね飛ばした。
ぷしゅーーーーー・・・
超巨大に膨らんだ風船は、みるみるうちに萎み、鳥影がイヌワシのマークに会釈をする姿が見えると、すぐオオワシのリックとオオタカのピケの元に飛んで戻ってきた。
「ふぅ・・・危うくあのチョウゲンボウの奴、発電のプロペラに鋏まれるとこだった・・・!!」
身体中の空気を使い果たし、汗だくになって戻ってきたイヌワシのマークに、2羽の猛禽は寄ってきた。
「あらら・・・こんなに風船のゴムが伸びきっちゃった・・・俺らの身体以上に。」
オオワシのリックは、鼻を鳴らして感嘆した。
「俺、こいつに息を吹き込んだら全体に息が行き渡るまで何時間かかるかなあ?」
オオタカのピケも、深いため息をついた。
「全く・・・気が気でないぜ。」
マークは、伸びきりすぎた青い風船を折り畳むと、2羽の猛禽に「はい。ありがと」と返した。
「これ、本当に俺が拾った風船か?」
オオワシのリックは、その風船のゴムの匂いを黄色い嘴の鼻の孔に押しあてクンクン嗅いだ。
「やっぱりそうだ。すげえな。イヌワシよお!」
「あ!俺にも貸せ!」
オオタカのピケも、その伸びきった風船の匂いを嗅いだ。
「こんなに膨らんで、よく割れないもんだよ!」
「どうだい?俺の『魔力』!どんな状態の風船でも、無限大に大きく膨らます『魔力』を!
あー頬っぺた痛い!」
「おー!」「ぶらぼー!」
ぱんぱんぱんぱんぱんぱん!
2羽は、翼で大きく拍手をした。
「こうやって喜んでくれる奴がいてくれて、俺嬉しいよ・・・俺、報われたような・・・」
イヌワシのマークの目に、一筋の涙が溢れた。
「ねえ、何で泣いてるの?そんなに嬉しいの?」
オオタカのピケが聞いた。
「それもあるけど・・・お前の湖のハクチョウの女王様ってさあ、『魔力持ち方』って聞いたけど・・・」「はい?」
「その時、何か失ったとか知ってるか?」
イヌワシのマークは2羽に聞いた。
「うん。ハクチョウの女王様は『飛び方』を失ったって。」
オオワシのリックは言った。
「そうかぁ・・・やっぱりな。
ドードーから『魔力』を授かる時、何か自分の『大切なもの』を失なわなければならない摂理があるのは本当なんだな・・・」
イヌワシのマークはボソッと言った。
「失うって?ああ・・・君は何を・・・」
「言っていいか?オオワシ君。」
「無論いいよ。どんなのでも気にしないよ。」
「君は?オオタカ君。」
「もちのろんです。」
「本当に怒らないで聞いてくれ・・・」
イヌワシのマークは、深く深呼吸してぼそっと言った。
「それは・・・自分の『故郷』だ・・・
自分の大切な、本当に大切な、『故郷』を失ったんだ・・・俺の我儘が・・・巨大な風船が欲しいという我儘を叶える『魔力』が・・・『故郷』を殺した・・・!!」
「えっ?」「何で??」
「地震が起こった・・・大地震が起こった・・・俺の我儘のせいで・・・
近くの原子力発電所が壊れた・・・放射能が・・・放射能が・・・俺の我儘のせいで・・・俺の『故郷』を殺した・・・俺のせいだ・・・俺のせいだ・・・うわあああああああ!!!!御免よおおおお!!!!」
突然、イヌワシのマークは嗚咽して泣き喚いた。
「泣くなよ、イヌワシよお。誰がお前をそう責めたんだ?お前の自意識過剰じゃねえか?」
オオワシのリックは、大泣きしているマークを宥めた。
「誰がそう言ったんだい?君の思い込みじゃないの?」
オオタカのピケも、マークに必死に言い聞かせた。
「俺・・・俺・・・怖くなって逃げたんだ・・・放射能に巻かれて死んでいった仲間を置いてきぼりに・・・
俺は、この地に降りた・・・
ここも、大地震で被害が大きかった場所だ。
見ただろう・・・人間の住んでた場所の瓦礫を・・・」
「・・・」「そうだな・・・」
2羽の猛禽は頷いた。
「俺は・・・フラフラと、飛んでいた。
前に、ここを案内するミサゴの奴に連れられて・・・
俺達はこの鉄塔の前まで来た。
「さあ、ここを抜けるぞ!!」
の、合図で鉄塔の側を・・・
そのとたん・・・
プロペラが動いて・・・
ミサゴの奴・・・
真っ二つに・・・
翼がもげて・・・
バラバラに・・・!!
下見ると・・・
鳥の躯だらけ・・・!!
もう嫌だ・・・!!
他の鳥達が言ってたよ・・・
あれは、地震のせいで破壊された原子力発電の代わりに建てられた、風力発電だって・・・
俺のせいだ・・・!!
俺が全部、この風力発電の風車で鳥達を殺したんだんだ・・・!!」
「で、償いの為にここで風力発電のプロペラに巻き込まれそうになる奴を守ってきた訳だね、君は。」
「そ、そうだ・・・」
イヌワシのマークは、涙を垂らして項垂れてぼそっと答えた。
「お前のせいじゃない。全部人間のせいだ。」
オオワシのリックは、泣きじゃくるマークの頭を翼で撫でて微笑んだ。
「そうさ、人間がこんな危険な物を『ここ』に作ったからさ。君は巻き込まれただけだよ。」
オオタカのピケも、ニコッとマークの目の涙を翼でぬぐった。
「ありがとう・・・みんな・・・」
イヌワシのマークは、2羽に笑顔で答えた。
「『なっちゃった』は『なっちゃった』で取り戻せないね!
『これから』を見なきゃね!」
イヌワシのマークはそう言うと、徐に風船の切れ端を嘴に宛がうと、気嚢がはち切れる位に息を思いっきり吸い込み、
ぶぅーーーーーーーっ!
と息を吹き込んだ。
ぼよん!
「どお?これが、君達を風車から守った仕掛けだよ。」
「うわー!ゴムが伸びすぎて、薄く透明に!」
「破裂しない?怖いなあ?」
2羽の猛禽は、翼で物凄く大きく膨らんだ透けた風船の感触を確かめた。
「だぁいじょーぶ!」
イヌワシのマークは、嘴から膨らんだ風船を離すと、
ぶしゅーーーーーーーー!!
と、吹っ飛んでいった。
「にしても、イヌワシさん。頬の膨らみかたも凄いね。イヌワシの精悍さが覆る程、顔が何倍にむくれたかと思ったよ!」
「何だか凄いね。俺、普通の風船で精一杯だ。」「俺もパンパンにするのに、息が持つか持たないかだもん!」
2羽の猛禽はただ、羨望の声しか出なかった。
「ついでに言っておくんだけど、君達向こうの国際空港で飛行機への『バード・ストライク』を監視している、ノスリに逢わなかったかい?」
「ノスリ・・・あっ!!」
オオタカのピケは、はっ!と気付いた。
「リック、俺達確か「近道していこう!!」と空港のの中をショートカットしていった時、いきなり「何しに来た?」とこの施設を回避するように指図してきたあいつ・・・」
「あっ!思いだした!!ふてぶてしく俺達を睨み付けてた、あのノスリ野郎・・・」
2羽の猛禽は顔を見合せた。
「そのノスリ、俺の弟子だから。『魔力』を分け与えたんだ。
つーか『魔法使いの弟子』みたいなもんだし!ワハハハ!!
それはさておき、あいつも「仲間を航空機のエンジンに巻き込まれて、命を落としたからその『復讐』に弟子にして貰いたい!」って言われた時には、心を打たれたな。俺と同じ意思の奴がいたからには・・・」
クマタカのマークは感慨の余り、立派な尾羽を震わせて言った。
「そっか・・・白鳥の女王様の意思を継ぐ鳥がここにもいたとは・・・」
「飛んでくる風船も、風車や航空機も鳥にとっちゃ脅威だからな。人間って、便利な文明に甘えて俺達鳥のことなんか、どうでもいいんだろうな・・・」
オオタカのピケも、オオワシのリックも、クマタカのマークの強い意思に心を打たれて涙を溢した。
「ちなみにあいつ、ノスリのパラダも俺と同じように、風船を巨大に膨らましが出来るんだぜ?!
しっかし、あいつは風船を巨大に膨らますことが出来るけど、空港から飛び立つ航空機から鳥を護る奴でしょ?
膨らました風船が航空機の飛ぶ邪魔になったり、膨らましの途中で、柵の有刺鉄線に刺さってドデカイパンク音で気絶しちゃうから、めったにこの『魔法』は使わないんだって!!ふふん。」
・・・・・・
・・・・・・
「へっぷし!!」
空港の柵の前で、暇潰しにオレンジ色のゴム風船を大きく膨らましていて翼で突いていたノスリのパルダは、豪快にくしゃみをした。
ぱんっ!!
「ひゃっ!!鉄条網にぶつかって割れちゃった!!」
・・・・・・
・・・・・・
「あ、おふたりさん!せっかくだから、一緒に風船膨らませようよ!!」
「ここで?」
オオタカのピケは、恥ずかしそうに言った。
「うん!ほら!俺が膨らましに使う風船があるから!!」
「おおっ!!これは、膨らましがいのある大きなゴム風船だなあ!!」
オオタカのピケはそう言うと頬をぷうっ!と膨らませた。
「俺も頬をぷぅーするぞぉー!」
オオワシのリックも、頬をめいいっぱい膨らませた。
「ぷうーっ!ぷはははははは!!」
イヌワシのマークは、2羽の猛禽の膨れっ面に思わず吹き出して、笑い転げた。
マークがこんなに笑ったのは、被災前の故郷で今は亡き兄弟とふざけあった時以来だった。
「あーーーっははははははは!!
じゃあ、にらめっこしようぜ!
にらめっこしましょ!あっぷっぷ!」
こうして、オオワシのリックとオオタカのピケ、そしてクマタカのマークは一緒になってはしゃいで、ふざけて、笑って、思いっきり遊んだ。
段々、イヌワシのマークはハイテンションになってきた。
もう、『魔力』の引き合いに故郷を失った悲しみは薄らいだ。
これから、次の日々を前を向いて飛び立とうと思った。
この忌まわしい風力発電の風車の驚異から、『魔力』の巨大風船で鳥達を守りながら・・・
「おーい!お前ら!!これから、俺の縄張りつーか、人間が地震から復興していく街並み見に行くかぁー!
俺、この風景を見ると励みに生るんだぁ!」
「連れてってくれるの?」
「おおよ!お前のその街を見せてくれ!!」
「じゃあ、行こうぜ!!」
ばあっ!
3羽の猛禽類は、雄々しい翼を拡げて瓦礫がまだ残る村や街並みの上を、優しい風を受けて飛んでいった。
・・・『北帰行』も道草もいいな・・・
・・・『風来坊』ってこんなもんかなあ・・・
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