第四部:鳥の絆と風船と編
1#アヒルとガチョウ、そしてカモ達
「あれ?ガチョウの子供・・・じゃなくて、ガンの子供達は?あれ?あんたの奥さんもいないじゃん?!」
アヒルのピッピは、寂しい顔をして空を見上げているガチョウのブンに話しかけた。
「みーんな飛んでっちゃった。」
ガチョウのブンは、『飛べない翼』を見て深いため息をついた。
「また冬の始め頃に帰ってくるってさ。それまで、気候のいい場所まで修業の旅に出かけるって、さっさと行っちゃった。僕も行きたかったなあ。
お前はいいよ。ママが飛べてても、雛は『アヒル』だから、空を飛べないで、ここでノホホン出来るんだから。」
「何言ってるの?ガチョウさん。
私の子は、毎日皆で結界の外に行ったり来たりよ。
向こうで何かに巻き込まれたら、気が気でないわ。」
「そんなことは無いぜ、アヒルさん。
こうやって、いろんな経験して一致ょまえのアヒルになるもんさ。
そろそろ、カルガモさんと来期の繁殖を・・・」
「いやん!!」
アヒルのピッピは羞じらった。
「まあ、そんなこと言わず・・・!!」
「まだそんな気はないわ!」
・・・『種族』の壁が無かったらなあ・・・
・・・僕はアヒルさんと・・・
・・・思い出すぜ。あの日の『どっきり』を・・・
・・・あの『愛』をもう一度・・・
「だぁかぁらぁ、いいでしょ?ねえ、いいでしょ?」
「だ、だめよ!だめってばぁ!」
ドサッ!!
ばさっ!
「こちょこちょこちょこちょこちょこちょこちょ!!」
「あはははははは!!」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
「?!」「?!!!」
「ガチョウうう・・・俺の許嫁に何するんだ・・・」
ガチョウのブンとアヒルのピッピがふざけあいしている目の前に、仁王立ちしてカルガモのガスタが顰めっ面でブンを睨みをきかせていたのだ。
「ふっふっふ・・・なーんだ!これ?」
「カルガモさん・・・何で萎んだ風船なんか持ってるの?」
「拾ったんだよばーか!!
手ぶらで帰ってくると思うなよ!!」
「まさか・・・膨らますの?」
「うん!愛するピッピちゃーん!ガチョウを羽交い締めしといて!」
「はぁーい!」
ガシッ!!
「図ったなっ!!ピッピぃーー!!」
「じゃあ、いくどーーーガチョウが大嫌いな風船膨らまし割りぃーーーーー!!」
「面白れえー!!俺もやるーーっ!」
「私もーーー!!」
そこに、マガモのマガークとクッコ夫妻が嘴に萎んだ風船をくわえて笑いながらやってきた。
「ど、どおしたのぉ?その風船!で、今さっきまで卵産む準備はぁ?」
ガチョウのブンは、声が裏返る程に恐怖が走った。
「カルガモさんに貰った!それに、気張っても卵出ないから、風船を膨らませて尻を緩ませる効果あるからねえ!」
「風船ぱーん!卵ぽーん!うふふふ!」
マガモ夫妻はガチョウのブンの方を睨んで、不気味にニヤニヤした。
「ひゃあああー!!」
「いくよー!ガチョウ!!カモの吐息を受けてみろーー!せーのっ!」
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
「ひええええーーーっ!!物凄い勢いで膨らんでいくぅーーーー!!」
ガチョウのブンが逃げもがいても、アヒルのピッピががっしり羽交い締めしているので、逃げられなかった。
しかも・・・
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ガチョウのブンの顔の側で、風船が大きく大きく膨らんでいたのだ。
「あ、アヒルちゃんまで風船を膨らませているぅーーー!!」
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
「わぁーーい!風船だぁーー!!」
「風船がどんどんどんどんでっかくなってるぅーーー!!」
「ママもパパも風船膨らませてるー!!」
「僕も膨らませたーい!」
「きゃーっ!割れちゃう!割れちゃう!きゃっ!きゃっ!」
そこに、戻ってきたアヒルの子達が、カルガモやマガモ、そしてアヒルが息を吹き込んでいる風船を、まじまじと目を輝かせて見詰めていた。
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーー・・・
ぱぁーーん!
「ぎゃああああああ!!」
ぱぁーーん!
「ぎゃああああああ!!」
ぱぁーーん!
「ぎゃああああああ!!」
ぱぁーーん!
「ぎゃああああああ!!」
4羽の膨らましていた風船は、大きくなりすぎて次々と激しい破裂音を湖中に轟かせて連続でパンクし、風船が割れる音が苦手なガチョウのブンは、悲鳴をあげ、取り乱してのたうち回った。
「あら?」
「ガチョウの奴、伸びちゃった。」
「きゅうう。」
「ねえカルガモ。オオワシの奴、最近見かけない?」
割れた風船を片付けるマガモのマガークは、吹き口だけ残った割れた風船をくわえているカルガモのガスタに聞いてみた。
「うーん、知らないなあ。」
「あいつなら・・・北の国に帰った。」
コクチョウのプラッキイは、目を見開いてぜえぜえ言いながら答えた。
「北へ帰った?」
ガスタは言った。
「君、そうとうオオワシさんが好きでショックだったんだね・・・」
雌マガモのクッコはコクチョウのプラッキイの側に来て宥めた。
「違うわい!あんたらが膨らましてた風船が割れる音が、余りにもドデカ過ぎてビックリしたんだい!」
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