12#『魔力』の代わりに
「何て我が儘なアヒルなんだ!」
マガモのマガークは、アヒルのピッピに不服だった。
「要するに、こいつの我が儘で女王様の『魔力』が無くなったんだろ?
俺達の患者の治療の『命令』まで奪いやがって!!」
オオワシのリックも、苦虫を噛んだ。
ばら撒き風船事件の被害鳥達の様態も、すっかり良くなり、湖の周辺で飛ぶ為のリハビリをする者やお互い鳥同士の交流を深める者で、賑やかになった。
「あたい、この湖でひとりぼっちだったからねえ。
思い出すわ。まだ、あたいがハクチョウ仲間のリーダーだった頃。
行く先々の湖はいつも賑やかで・・・」
「へ?ハクチョウのリーダーだったの?ハクチョウさん。」
隣のアヒルのピッピは、聞いてみた。
「ははっ!『リーダー』なんて形だけ!
実は他に実質的なリーダーがいてね。あたいは『リーダー』と呼ばれた『パシリ』だったの。
他の仲間に無理難題を突きつけられて、出来なかったら袋叩きにされたわ。
実質的な『リーダー』のもとでね。
もう、群れに戻りたくないわ。
本当は、『ひとりぼっち』が気楽でいいわ。でも・・・」
ハクチョウの女王様は、顔を曇らせた。
「あたいが『魔力』を持ったから、女王様気取りだったけど、無くした今、また昔のあたいに戻ったような・・・」
「そんなことないわ。ほうら、この湖は『あなた』の物でしょ?あなたは湖の主の風格あるわ。」
「そうかなあ・・・
ありがとう。あなたのその言葉であたい、自信が沸いてきたわ。」
ハクチョウのメグ女王様は、胸に息を深く吸い込んだ。
「さあて、この湖にいる鳥達と何かやりたいわ。とてもウズウズしてきた。
ねえー!マガークちゃん!どっかにあると思うけど、1個萎んでる風船持ってきて!」
「はーい!」
ガサゴソ・・・
サッ!
「ん?」
「ん?」
「あーーーっガチョウの奴!どこほっつき歩いてたんだ!」
「しまった!」
ガチョウのブンは、マガモのマガークの姿を見るなりそそくさと逃げ出して行った。
「何やってんだろ、あいつ。」
マガモのマガークは、木のうろにストックしてある、ちょっとゴムが若干伸びきっている萎んだ風船を嘴にくわえると、ハクチョウのメグ女王様のところへ持っていった。
「あ、マガークありがと。」
ハクチョウの女王様は、チュッ!と嘴をマガークの頬へキスすると、その風船を嘴にくわえ、
ぷぅーーーーーっ・・・
すぅーーーーーっ・・・
ぷぅーーーーーっ・・・
すぅーーーーーっ・・・
と、何度も息を吹いたり吸ったり呼吸した。
「ふぅー。何とか落ち着いたわ。」
ぽいっ。
「あーっ!俺貰う!!俺貰う!!」
「雄鳥ってやーねぇ!!こぞって、美しいハクチョウのメグ女王様が嘴をつけた、涎付の風船を奪い合いするんだもん!
嫉妬しちゃうわ!」
「はいはい、皆さん落ち着いてっ!
みーんな元気ぃーーーーーー?」
「元気ぃーーーーーー!!」
「じゃあみんな、いっぱい集まったことだし、親睦を深めるためにオリエンテーリングしましょ!」
「はぁーい!」
「じゃあ!『ドッキリ』してみない?
『ドッキリ』を引っかけるターゲットは、今留守中のガチョウのブンちゃんだよっ!」
・・・『魔力』が使えない代わりよ・・・
・・・本当は、皆で被害に逢わせた風船をあたいが再生して、その風船を膨らまし割りをする『儀式』で親睦したいけど、皆で何か一緒にやることでそれが親睦になれば・・・
・・・それにしても、ガチョウのブンだよね・・・
・・・あんな大変な時に、どこをほっつき歩いてたんだろ・・・
・・・皆で引っかける『ドッキリ』に遇わせて、今おかれている現状を痛いほど解らせてやるわ・・・!!
「じゃあ、早速役割分担しましょ!
今さっき、あたいが膨らました風船もゲットしたのだあれ?」
「はぁーい!コクチョウのプラッキィでぇーす!」
「あ、プラッキィちゃんとやら、あたいの助手ね。一緒に行動よん!」
「ありがとございましゅ!」
コクチョウのプラッキィは、そこまで言うと女王様の風船に嘴にくわえて、ぷぅーーーーーっ!!と膨らました。
「間接キッス!!」
雄鳥一堂はギロッと、どや顔のプラッキィを恨めしそうに睨んだ。
「んまあ、プラッキィったらテンション高いねえ!『白黒』同士、よろしく頼むわ!
じゃあ、次!!あのガチョウの苦手な風船の調達は、カラス達よ!」
「はぁーい!」
「じゃあ、何か動物の鳴き声得意の奴いなーい?」
・・・と、ハクチョウの女王様は、次々と鳥達おのおのに役割分担を決め、今度はアヒルのピッピの番になった。
「アヒルさん。あなたには重要なことをやって貰うよ!」
「なあに?それは?ハクチョウさん!」
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