7#アヒルのために、ハクチョウの女王様は空を飛ぼうとした。
「マガモの奴もガチョウの奴も、オオワシも出はからってる。さあて・・・」
ばさっ!!
ハクチョウのメグ女王様は、大きな翼を拡げた。
羽根が折れて無いか、
羽根が抜け落ちてないか、
羽根が汚れて無いか、
「大丈夫だわ。何ともなってなかったわ。不幸中の幸いって、このことを言メグ女王様は今度は、尻を振って尾羽を確かめた。
ふりふりふりふりふり。
「これも大丈夫だわ。これでバランスもおっけーね。」
ばさっ・・・
「それっと!」
メグ女王様は、翼をはためかせた。
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ
翼の羽根や羽毛の一つ一つに、風を送り込み、ふわふわに膨らませた。
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ
・・・まだ浮かない、まだ浮かない・・・
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ
ハクチョウの女王様は、翼をばたつかせて風を掴もうも、一向に体を浮かすことができなかった。
「あれ?どうやって飛んだんだったっけ?」
女王様は、本当に肝心なことを忘れてしまった。
「えっと・・・えっと・・・えっと・・・えっと・・・」
メグ女王様は、目の前に拡がる湖の水面を見詰めて必死に思い出していた。
「水面・・・水面・・・水面・・・滑走路・・・そうよっ!!これよっ!」
ハクチョウのメグは、湖の端まで泳いだ。
岸辺には、女王様が『魔術』で割れた風船を花に変えた『花畑』が微風に煽れて揺れているのが見えた。
・・・もし、あたいが飛べるようになったら、もう『魔術』が使えない・・・
・・・そしたら、マガモ達が持ってくる風船のゴミはどうしよう・・・
・・・でも・・・!!
ハクチョウの女王様は、飛ぶことに『逃げてた』挙げ句、アヒルのピッピを悲しませた『罪』を思った。
「もういいわ。あたい・・・」
ハクチョウの女王様はそう呟くと、目から一筋の涙が溢れた。
ハクチョウのメグの目前には、広大な湖の『滑走路』が続いていた。
「いくわよ・・・。」
女王様は、息を思いっきり吸い込んだ。
すぅーーーーーーーー・・・
ハクチョウのメグ女王様は、頬っぺたをぷうっとパンパンに膨らませ、気合いを入れた。
「さあ、飛ぶわよ・・・!!」
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ
ハクチョウのメグは、翼をはためかせて水面を走った。
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ
もうすぐ、向こう岸だ。
「い、一向に飛べない!!」
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ
ドタッ!!
ハクチョウのメグは、岸辺の石に鰭脚を引っかけて激しくつまずいた。
「つう・・・いてていてて!!と、飛べない!!もう一度!」
ハクチョウのメグは、方向転換すると、また翼をばたつかせて湖の上を走った。
ばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさばさ・・・
「うわっ!」
ドタッ!!
またハクチョウのメグは、向こう岸まで羽ばたいてそのまま転けた。
「いたた・・・くっそぉ!もう一度!」
と、ハクチョウのメグは、何往復も何往復も何往復も何往復も何往復も何往復も何往復も何往復も何往復も何往復も、何十回も、何百回も、湖を羽ばたいて走り回った。
「駄目だわ・・・何度羽ばたいても、全く飛べないわ・・・」
相当ヘトヘトに疲れたハクチョウのメグは、そのまま湖の畔で眠り込んでしまった。
・・・・・・
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