6#アヒルとハクチョウの断絶
「いつハクチョウさんは、飛べるようになるの?ねえ!ずっーっと私が嘴酸っぱく言ってるのに!私、ハクチョウが空を飛ぶのが見たいの!ねえ!飛ぶ気があるの?ねえ!ハクチョウさん!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!」
とても、鉛色の雲ゆきが怪しいどんよりとした日だった。
すっかり『女王様』の風格が漂っていたハクチョウのメグは、忘却の彼方だった『肝心なこと』を、忘れた頃にやって来たアヒルのピッピの悲痛な感嘆で思い出した。
「そ・・・それはね・・・!」
ハクチョウの『女王様』のメグは、言葉が詰まった。
今まで、妖精のドードーに授かった『魔力』によって、風船で被害に遭った鳥達を助け、その風船を『再生』して膨らましの『儀式』で風船への畏怖を取り除いて癒したり、召使いのガチョウのブンやマガモのマガークを濃き使っていた。
ハクチョウの『女王様』のメグにトって『魔力』は、『女王様』としての威厳を保つのに必要不可欠だ。
・・・そうだ!!あたい、もし飛べるようになったら、あの妖精に『魔力』を剥奪されるんだった・・・!!
・・・そもそも『魔力』は、飛ぶ能力との引き換えに授かったんだ・・・!!
飛ぶための翼の筋力も衰え、墜落して以来そのトラウマが甦り、空をとても怖がったのも理由だった。
その為『女王様』は飛ぶリハビリの練習を、この湖に墜落してからずっと怠っていた。
「ねえ!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!」
アヒルのピッピは、翼や鰭脚で湖をバシャバシャと水飛沫をあげて叩いて大声で暴れた。
「・・・・・・」
ブチッ!!
ハクチョウの『女王様』は遂にブチキレた。
「あんたね!我が儘もいい加減にしなさいよ!こっちだってね!事情があるのよ!事情が!
ハクチョウが飛ぶのがそんなに見たいなら、他の湖に行って見ればいいでしょ!
甘ったれてんじゃねーよ!」
ドガッ!!
ハクチョウの『女王様』は、アヒルのピッピの頬を鰭脚で渾身の力を込めて思いっきり蹴り倒した。
「うっ・・・ううぅ・・・」
アヒルのピッピの目から、涙がポロポロと流れしゃくりあげた。
「うわああああ!!ハクチョウさんなんか大っ嫌ーーーい!!」
アヒルのピッピは大声で泣きわめいて、湖のほとりから走り去ってしまった。
・・・あたし・・・なんて馬鹿なことをしたんだろう・・・
突然、ハクチョウのメグ『女王様』は激しい罪悪感が芽生えた。
・・・あのアヒルは、あたしの体に絡み付いた風船の紐を雛の体を呈して、外してくれたのに・・・!!
・・・何よ!!あたいは・・・『飛ぶ』ことに逃げてたばかりに・・・!!
・・・『魔術』が何よ・・・!!
・・・別にあたいの『魔術』が消えたって、単なる夢物語じゃないのよ・・・!!
・・・口からヘリウムガスが出ても、風船を再生しても、風船を花を変えても、それがどうしたのよ・・・!!
・・・飛ぶわ・・・
・・・あたい、飛ぶわ・・・!!
・・・飛んでみせるわ・・・!!
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