4#アヒルとの出逢い

 ・・・・・・ 




 「ん、んんん・・・夢??」




  湖の真ん中で眠りこけていたメグは目を覚まして薄目をあけると、一羽の黄色い雛と目が合った。


 「えっ?き、君は誰?」


 「わ、わたしはあー、アヒルちゃんでーす。つーか、君は『ハクチョウ』でしょ?飛ぶのを観たいのー!でっかい翼を拡げてさあ、優雅にふうわりと。

 でも、わたしはアヒル。名前を『ピッピ』っていうの!まだヒヨコだけどアヒルなの!飛べないアヒルなの!

 憧れちゃうなあーーー!!」


 アヒルの子は、ソワソワしながら粒羅な目をキラキラ輝かせて、ハクチョウのメグを見詰めていた。


 「ご、ごめん!あ、あたい・・・ほら、つ、翼がふ、風船の紐が絡まって・・・」


 「風船の紐?わ、私が取っちゃった!!」


 「えっ?」


 ハクチョウのメグは、湖畔の岩台を見ると、すっかり萎びた風船が紐でぐるぐる巻きにして置いてあった。


 「んもー、大変だったんだからぁ!まるで複雑なパズルだったわ!おかげで、暇潰しができたよん!」


 アヒルの子の小さな嘴をよく見ると、ハクチョウのメグにの体に食い込んだ紐で擦れた血がついていた。


 「あ、ああ・・・あんたがやってくれたの?こ、こんな小さな体で・・・何度何周あたいの体を往復したの?

 あ、ありがと!」


 ハクチョウのメグは、感激の余り思わずアヒルの子を抱き締めようとした。




 ぐきっ!!




 メグの翼に激痛がはしった。


 「ぐわああああっ!」


 ハクチョウのメグは、のたうち回った。


 「ご、ごめん!かなり体に紐がめり込んでたから、手荒なことしちゃった!

 でも・・・」


 「でも?」ハクチョウのメグは顔をひきつらせて聞いた。


 「これで飛べる?」


 「飛べる訳ないでしょ?あたいがどんな状態か見て、解らないの?」 「飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!」


 アヒルの子は、バシャバシャと湖を跳び跳ねてしつこくせがんだ。


 「ダメって言ったら、ダメ!!」


 遂に、メグはブチキレてしまった。


 「うっ・・・うっ・・・うっ・・・」


 アヒルの子は、目に涙をこぼしてしゃくりあげた。


 ・・・や、やば・・・!!


 「うわあああああん!!」


 アヒルの子は、突然激しく泣き初めてしまった。


 「ご、ごめん!つ、つい・・・あ、ありがと・・・!でも、体の紐を取ってくれてね・・・!!だ、だから・・・」


 ハクチョウのメグは、岩の上の萎びた風船の束に目をやった。


 ・・・そうだわ・・・精霊・・・?


 「飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!飛んで!」


 アヒルの子は、バシャバシャと湖を跳び跳ねてしつこくせがんだ。


 「ダメって言ったら、ダメ!!」


 遂に、メグはブチキレてしまった。貰った『魔力』は本当か、試してみよう・・・


 ハクチョウのメグは、風船のかなり萎んだものを紐からひとつ外し、ぷうーっ!と膨らましてみた。


 そして、紐の留め具に風船を再び止め、まだ泣きじゃくるアヒルの子に持っていった。


 「はいっ!アヒルちゃん!風船あげるから、泣くのはおよし!」


 ハクチョウのメグは、アヒルの子に風船を嘴渡しであげ与えようとしたとたん・・・



 「し、しまった!」



 ふうわり・・・



 ハクチョウのメグの渡し損ねた風船は、空の上空へと舞い上がって行ってしまった。


 「あーあ。飛んでっちゃった。」


 アヒルの子は、残念そうに点粒になって雲間に吸い込まれる風船を見上げた。


 


 ・・・えっ・・・吐息で風船が飛んでっちゃった・・・!!




 ・・・まさか・・・?




 ハクチョウのメグは、今度は割れた風船を嘴でガムのように噛んでみた。




 むにゅっむにゅっむにゅっむにゅっむ

にゅっむにゅっむにゅっむにゅっ・・・



 ぷくっ・・・




 「?!」 




 ぷぅーーーーーーーーーーっ!!




 「割れた風船が膨らんじゃったぁ!」


 メグは目を丸くした。


 そして、その『再生』された風船を紐に装着すると、


 「今度は離さないでね。」


 と、アヒルの子に渡した。


 「はいっ!」


 「ありがと、ハクチョウさん。ねえ、今度会ったら飛べるようになる?」


 「えっ?」ハクチョウのメグは言葉が詰まった。


 「え、ええ。多分・・・」


 ハクチョウのメグは頬を翼で掻いて、生半可な返事を返した。


 「じゃあ、また会いに来たら飛べるようにねーー!」


 アヒルの子はそう言うと、嘴にくわえ風船にウキウキして歩いて行ってしまった。


 ・・・困ったなあ・・・!!

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