3#湖の精霊
ぐう・・・
ぐう・・・
もやもやもや・・・
もやのかかる湖の岸辺に、何者かが現れた。
「ハクチョウさん、ハクチョウさん、」
何者かは、オオハクチョウのメグに優しく呼び掛けた。
パンっ!
ハクチョウのメグの鼻提灯がパンクした。
「ん・・・んん・・・あ、貴方はだあれ?」
「わたしは、ドードー。この湖の精霊じゃ。」
「ドードー?あのかつて、生きていた伝説の鳥・・・」
「そうじゃ。そうともいう。ま、今は体は滅びて心だけ残ってるじゃが。ほほほほ。」
ハクチョウのメグは目を疑した。
目の前に、鳥仲間で語り草になっていた、あのドードーが目の前にいることを。
「貴方の『やさしさ』と『けなげさ』に、わたしは心を打たれたのじゃ・・・
不慮の事故でここに墜落したのも、何らかの運命じゃろう。
貴方は、『罪を憎んで者を憎まず』という、素晴らしい心構えがよくわかったのじゃ!」
「な、何でですか?精霊様?」
「風船じゃ。貴方は風船が体に絡んで、事故に遭ってもけっしてその風船を憎まず、一緒に仲良く遊んだじゃろ?
わたしは生身があった頃、風船が大好きじゃて、よくこの森に落ちている風船や妖力で他の場所に落ちている風船を呼び寄せて、よく遊んだもんじゃ。
そこでじゃ!こっちこいや。」
ドードーの精霊は、ハクチョウのメグを呼びのせて、先が黒光りする大きな嘴を明るく輝く光でさらに輝かせて言った。
「貴方に特別な『魔力』を授けよう。
それはな、風船を修復する魔力と、吐息をヘリウムガス状に軽くする魔力、そして風船を割れずに延々に大きく膨らます魔力じゃ!」
「へえ?」
ハクチョウのメグは、半信半疑で首を傾げた。
「たーだーしじゃ!それには条件がある。」
「それは、どんなことですか?精霊様?」
「それは、風船をかき集めることじゃ!この世に要らなくなって捨てられた、可哀想なゴム風船を片っ端からわたしに献上することじゃ!」
「ちょ、ちょっと待ってください精霊様!あたいは・・・あたいは・・・この通り、翼が風船の束の紐で絡まって飛べなくなってしまってるんですよ・・・」
「だーからー、誰が『めしつかい』を募って、そいつに持ってくるように頼めばいいじゃん!!あんたは、『魔力』が使える『女王様』だもん!」
「『女王様』?あたいが?」
ハクチョウのメグは、訳が分からなくなった。
「それと、『魔力』を与えるという見返りに何か失わなければなりませぬのが、『魔界』の常ですので、」
「え?」
「そうです!あなたの飛べる力を奪います。」
「ええええええ!!そんなあ!」
「だって、紐が絡んでるでしょ?飛べないじゃん!だから、丁度いいじゃないかい?」
「そんな横暴なぁ!!」
「こらっ!『精霊』に向かって横暴とは何だあ!」「すいませんん!」
「言っとくがな、もしあんたが飛べるようになったら、『魔力』も消えるのでそのつもりで・・・!!」
湖の精霊のドードーは、小さな翼の裏から、膨らましてない風船を取り出すと、大声で言った。
「じゃあ、これからあんたに『魔力』を授けよう!!」
ドードーはそう言うと、思いっきり息を深く深く深く深く深ーーーくお腹が数倍膨らむ位に深く吸い込むと、膨らましてない風船の吹き口を、先が黒光りする太い嘴にくわえ、渾身の力を込めて思いっきり吐息を入れて膨らせ始めた。
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!
ぷぅーーーーーーーーーーっ!!
精霊のドードーの膨らます風船は、みるみるうちにどんどんどんどんどんどんどんどんどんどん大きく大きく大きく大きく大きく大きく膨らみ、遂にハクチョウのメグを押し潰す位に大きく大きくなった。
「ぶふっ!ゴムがっ!ゴムがっ!!苦しいっ!!ゴムがっ!!ゴムがっ!!」
ぶぉーーーーーーーーっ!
ぶぉーーーーーーーーっ!
ぶぉーーーーーーーーっ!
ぶぉーーーーーーーーっ!
精霊のドードーの、超巨大に膨らんでいく風船に激しく吹き込まれる吐息の轟音が、ハクチョウのメグの耳に正に押し潰さんとするゴムの表面から響いて、畏怖を駆り立てた。
ぶぉーーーーーーーーっ!
ぶぉーーーーーーーーっ!
ぶぉーーーーーーーーっ!
ぶぉーーーーーーーーっ!
ぶぉーーーーーーーーっ!
精霊ドードーの膨らます風船が湖どころか、周辺の山林を覆う位にとてつもなく大きくなっていった頃。
ぷすっ。
「あっ!木の枝が風船を突っついちゃった!!」
「え?」
どばぁーーーーーーーーーーん!!!!!!!!
ドードー精霊の膨らます風船がドデかい爆音をたててパンクした。
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