7#???
ボーーーーン!
ドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドゴーーーーンドタバタドタバタドタバタドタバタドタバタドゴーーーーン!!
もくもくもくもく・・・
プスプスプスプス・・・
「きゅぅーーー・・・」
・・・・・・
ぶちゅっ!
ふぅーーーーーーっ!!
「ん・・・うわっ!!」
突然の衝撃で気絶していたガチョウのブンは、ムクッと起き出したとたん、ビックリ仰天した。
「あ、アヒルさん・・・い、生きてたの・・・?!」
ふぅーーーーーーっ!!
ガチョウのブンの目の前に、死んだ筈のアヒルのピッピが嘴をブンの嘴に『キス』していたのだ。
ふぅーーーーーーっ!!
「あ、アヒルさん!!生きてたのは嬉しいけど、な、何で俺に息を吹き込んでるの?」
「全然膨らまないねえ。この風船!!」
「風船って・・・俺ガチョウだよ!」
「風船でしょ?ガチョウの形の風船!!」
「じゃあ、君はアヒルの形の風船ね!」
ぶちゅっ!
ふぅーーーーーーっ!!
ガチョウのブンも負けじと、アヒルのピッピの嘴へ息を吹き込んだ。
ふぅーーーーーーっ!!
ふぅーーーーーーっ!!
「よっ!アヒルにガチョウ!!濃厚なディープキスとはお熱いねえ!ひゅーひゅー!!」
ガチョウとアヒルは振り向くと、全身を泥と抜けた羽毛だらけのハクチョウのメグ女王様がニヤニヤしてやって来た。
「じょ・・・女王様!!な、何でこ、こ、ここにいらっしゃるんですかあ?・・・で、あ、あ、貴方は飛べたんですかぁ?!」
突然のハクチョウの女王様の登場で仰天したガチョウのブンは、震え声で聞いた。
バシッ!!
「な、何だよ後ろから叩く奴は!あ・・・お前!!」
ガチョウのブンが振り向いた先には、ドヤ顔でブンをまじまじと見詰めるマガモのマガークの姿があった。
「てめえ!湖の時はよくも・・!!」
「まあまあ、怒るなよガチョウ!!あれはな・・・」
マガモのマガークは、ガチョウのブンの顔に嘴を当てて耳打ちした。
「えええええええええ!!演技?!」
「うん!演技!!ねー!アヒルさん!!」
「ねー!マガモさん!!」
「???」
ガチョウのブンの頭は混乱を極めた。
・・・い、今までの涙は何だったんだ あ・・・!!
・・・ぼ、僕は全部騙されてたの・・・?
・・・『カモ』だったの?僕は・・・???
「でもねえ、ガチョウさん・・・本当に『牡』らしかったよ・・・!
本当に愛しちゃった・・・!!」
アヒルのピッピは、ガチョウのブンにウインクした。
ぽっ・・・
ガチョウのブンは、胸がグッとなって思わず言った。
「お、俺もアヒルさんのことだ、大好きです!」
「ひゅーひゅー!!ひゅーひゅー!!」
「難いねえ!!種族を越えた『愛』ねえ!!」
どさどさどさどさ!!ばさばさばさばさ!!
どさどさどさどさ!!ばさばさばさばさ!!
どさどさどさどさ!!ばさばさばさばさ!!
どさどさどさどさ!!ばさばさばさばさ!!
どさどさどさどさ!!ばさばさばさばさ!!どさどさどさどさ!!ばさばさばさばさ!!
「!!」
ガチョウのブン達の背後から、何百羽もの鳥達が、茂みの中からワイワイと躍り出てきた。
「女王様ぁー!!」「いつ見てもお美しい!!」
「あーら、『作戦』ご苦労さーん!
『鳥海戦術』ご苦労さーん!」
「女王様ぁ!そ、それ、ど、どういうこと?!」
ガチョウのブンは、震え声で聞いた。
メグ女王様はふふーん!と嘴の鼻を鳴らして言った。
「それはね、」
そこで、いきなり女王様は下に落ちていた萎んだ赤い風船を嘴で思いっきり、
ぷぅーーーーーーーーーーーーっ!!
ぱぁーーーーーーーーん!!
「ぎゃああああああっ!」
「きゃっ!」
ガチョウのブンとアヒルのピッピは、いきなり女王様の膨らまし割った風船の破裂音に、ビックリして飛び上がった。
「こういうことなの!」
「へ?」
ガチョウのブンは呆然とした。
「ほうら、ガチョウとアヒルさん、お互い翼で抱き締め合ってるじゃん!」
「ん?」「あら?」
ブンとピッピは、お互い顔を赤らめて見つめあった。
「こういうことなの!」
「だから、どういうなの?」
「あんたが、風船が割れる音が苦手なのを利用して、全員で壮大な『ドッキリ』を仕掛けたの!!
紹介するわ!これから、みんなあんたと同じ『召し使い』になったメンバーよ。
みんな志願したの。あの大量の風船飛ばしの被害に逢って、みんな心までも傷ついててね、
その怒りと悲しみを、私が全部引き受けたのよ。
私はね、これから風船の犠牲だけでなくて、人間本意に傷つけられた鳥達をあたい達の湖に招きたいの。
貴方達も、そうだったでしょ?元々。」
「さすが女王様!!」
ガチョウのブンも、マガモのマガークも、異口同音に答えた。
「一気にライバル増えたな!俺達。」
隣にやってきたオオワシのリックは、マガモのマガークに大きな翼を頭を撫でた。
「え?何で?」
「聞いてなかったのか?マガーク。あの鳥達も、落着風船ゴミの採取をするんだってさ。
女王様に命を救われて癒された感謝に、何かしてあげようとみんな率先してくれたんだよ。
嬉しいじゃないか!もう、俺達だけがあっちこっち出回る手間もなくなったし、俺だって西南の方に飛んでって、そこに住む鳥どもや人間に『珍鳥』がられることもなくなったぜ。」
オオワシのリックは、ニヤリと微笑んだ。
「で、もう『ぺしぺし』はされなくても?」
「おおよ!俺達もあの鳥達と同等の扱いじゃ!もう役割分担は決まってるぜ。
各々の住んでる場所の周辺だってよ!
マガークは、生まれ故郷のあの遥か向こうの方の沼地地区。俺は、北の大地だ。
生まれ故郷でまた行けるって、嬉しいじゃん!」
「んん。まあ・・・。」
オオワシのリックは、大きな翼でギュッとマガモのマガークを抱き締めて首筋同士をすりすりと嬉しそうに刷り寄せて言った。
「でも、ここだけの話、女王様の美貌に誘惑されて・・・」
「今、何言ってるの?『女王様の美貌が何だって?』」
ハクチョウのメグ女王様は、鼻の孔を膨らませてニコニコとオオワシのリックの側に顔を覗かせた。
「あっ!ここだけの話だって!ここだけの話!」
「すいませーん!ぼ、僕は?」
ガチョウのブンがそこに割り込んできた。
「ガチョウはねえ、従来と同じ!違うのは、アヒルと一緒にこの湖周辺の係ね!」
「え?」
「『え?』じゃないよ。そこにいるじゃん!種族が違うけど、お前さんの大大切な『パートナー』が。」
メグ女王様は、アヒルのピッピに向かってウインクをすると、ピッピもウインクをして、ブンの側にヒョコヒョコとやってきた。
「宜しくねっ!ガチョウさん。これから、お互い頑張ろ!」
「うん!あ、そうだ。」「なあに?」
「みんなの前では話せないから、こっち来て!」
ガチョウのブンは、モジモジしながら聞いた。
ガサガサ・・・
2羽は、鳥達と離れた場所に移動すると、ヒソヒソと会話した。
「だ、大丈夫なの?鳥インフル・・・」
「がーっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっはっは!!」
「ばかっ!何大笑いしてるの!みんなに聴こえるでしょ!」
ガチョウのブンは大慌てした。
「それ?演技!!演技よ!ねえ!女王様!!」
「ええ!そうよ!『死にかけ』の演技うまいねえ!ピッピちゃんは!」
「ええええええええええ!!どういうことなの?アヒルさん!女王様!!」
ガチョウのブンの頭は混乱した。
「だぁかぁらぁ、今さっき言ったでしょ!壮大な『ドッキリ』って!あんたを騙すドッキリをね!」
「?????」
ブンは顔を真っ赤にしてアヒルに聞いた。
「アヒルさん!熱が出たのも演技なの?」
「うん!調達されたホカロンで頭を暖めたの!!私、一瞬消えたでしょ!その時よ!!」
「??????」
「ハクチョウの女王様ぁー!!後片付け終わりましたぁー!!」
そこに、鳥集団のカラス達が女王様のとこにやってきた。
「おっ!ありがと!キュットちゃんにコナーズ君とフマキラ君とチョール君!」
ハクチョウのメグ女王様は、ニコニコして答えた。。
「何これ?こんなにいっぱいの萎んだ風船は?」
「これ?これはねえ、釣り針風船被害の鳥集団達全員で膨らまして一斉に、あんたに向けて萎ませた風船よ!
鳥海戦術で、物凄くとっても強烈な『突風』になったでしょ!」
・・・そっかぁ!「ふーふーふー」という、不気味な物音は鳥達が風船を嘴で膨らましている音がだったんだ・・・?
「俺、風船膨らましすぎて割っちゃった!!」
「わたし、風船を膨らましてたら嘴離しちゃって、外にふっ飛んじゃった!」
「あーら、シラサギのカルド君と、アオサギのアルゼちゃん!ビックリしたでしょ?ドンマイね!」
「女王様ぁー、わいは100回以上風船を膨らましまくりましたんや!どうやっ!!(ドヤ顔)
お陰で、頬っぺたと頬袋がじんじん痛むねん!」
「おお!カワウのレンスはん、おいどんは風船を120回ぷーぷーしたですたい!」
「何をおっしゃる、ナベヅルのビリーさん。僕は90回も・・・」
「何故減るんだ、ヒドリガモのフィルよお!俺は79回も。」
「減りすぎだ!カイツブリのハップさんよお!(爆笑)」
「僕・・・小鳥だから、50回が限度でしたあ。つつぴー!」
「おい、シジュウカラのシーズちゃんよお、そんな時は2羽で嘴を一つの吹き口をぷーぷーすりゃいいんだよ!なあボブ!」
「ドバト同士の絆は最高だな!ポスカ!」
「いや、絆ならドバトよりキジバトだよなあ、キジバト最高!!なあ、ジュネちゃん。」
「うん!ジバンさん!」
「なにぃ!」「このぉ!」
「まあまあ!ハト同士喧嘩すんなよ。『ピース』のシンボルだろ?ハトらしくな!
おいらは、ツグミと風船ふくらましたぜぇー!
種族なんか垣根越えるのが『ピース』だぜぇー!なあ!ツグミのツンコ!」
「おうよ!ヒヨドリのピーキン!俺達小鳥コンビ最高!!いえーい!」
「いえーい!(と、ヒヨドリとツグミは翼でハイタッチ)」
「僕たちちっちゃいから、3羽で1個の風船吹いたよ!だって僕たち可愛いメジロだもん!」
「おいおい!自分で『可愛い』って言うなよ。食っちゃうぞ!」
「ぞっ!」
「ははは!冗談だよ!メジロちゃん達!」
「で、で、で、オオタカさんはど、ど、どのくらい膨らましたの?」
「おうよ!200回だ!」
「うわっ!新記録だ!オオタカのピケすげえー!」
「俺、185回!同じ猛禽類として負けた!」
「そんなことないぜ!ノスリのフェル。そこまで膨らませば上出来よお!!」
「でもぷぷ!膨が猛禽感台無し!」「君もな!ぷ!」
「オオタカのピケより、わしの201個には及ばんだべ!えっへん!」
「トビのリン君!正に『トビに油揚さらわれた』だぜえ!」
「そんなお前はどうだっぺ?ヤマドリのヤンコよお。」
「ヤンちゃんはねえ、69個ぷーしたよぉん!(長い尾羽を悩ましげにフリフリしながら)」
「僕達『シギチ・アンド・アジサシ』グループ皆で力と吐息を合わせて、全部で86回膨らましたよーん!」
「わたくし、希少種ながら、90回位風船膨らましたですの。」
「こ、コウノトリだぁ!ひょえー!君も風船の被害に・・・?」
「うん!コーちゃん、ドジっちゃったですの。(と、嘴をカタカタと鳴らした)」
「僕らも言わせてくれ。」
「おっカモメさん達!すげえよな!一気に全員で早いサイクルでぷー!ぷー!してたからな。」
かき集めた、使い終えた割れた風船を嘴でびよーん!びよーん!引き延ばしながら、カラスのフマキラは感嘆した。
「カラスさん達も頬っぺたも頬袋をめいいっぱいはらませて力一杯、ぷー!ぷー!ぷー!ぷー!と負けじと膨らましてたじゃん!」
ばちっ!
「いてっ!」カラスのフマキラの伸ばしてた、割れた風船のゴムが顔に当たった。
「いてて・・・か、カモメさん達だって、風船膨らましてて頬っぺたがぷくーっとはらみすぎて、顔が何倍も浮腫んで凄い形相たよ!」
「ん、んん。本当は、遠くの海岸の『片足カモメのスターオ』に行かなきゃいけないけど、僕らも釣り針風船に傷つけられたから急遽こっちに参加したんだぜ!
女王様!!『片足カモメのスターオ』って、ご存知ですか?」
カモメ達の一羽のオギが言った。
「知ってるー!知ってるわよー!名前だけ!!」
「名前だけ?」「うん!今知った!」
「へ?」オギは首を傾げた。
「冗談よ!逢ったこと無いけど、どっかの砂浜で、風船の紐が絡まって切断された片足を庇いながら、有志のカモメさん達や海鳥さん達を雇って、波にのって砂浜漂泊してきた風船を回収しているカモメさんでしょ?」
・・・・・・
「へーーっぷし!!」
所変わってとある港。セグロカモメのスターオはセグロカモメのトフミと、朝の食事をしていたとこだ。
「何くしゃみしてるの?スターオさん!」
「んーにゃ!誰かが噂してるんだよん。トフミ君。」
・・・・・・
「女王様ぁ、本当は『飛べる』んだから、女王様が直に・・・」
「おだまり!」
べしっ!べしっ!
ハクチョウの女王様に言い返そうとした、マガモのマガークの体に、大きな翼を渾身の力を込めて女王様は鞭のように打ち付けた。
「ひゃーっ!公開『べしべし』!!」
オオワシのリックは苦笑いした。
べしっ!べしっ!べしっ!べしっ!
「ひぃーーっ!!女王様ぁ!ご勘弁を!!あ、貴方が!『飛べない』のは風船の!被害じゃなく!!着陸が!!大の苦手だった!!こと位!!な!内緒だと!!ひぃっ!ひぃっ!」
べしっ!べしっ!べしっ!べしっ!
「おだまり!おだまり!って!内緒のことを!そうやって!バラして!許せるもんか!!」
べしっ!べしっ!くべしっ!べしっ!
「ははっ!マガークの奴、笑ってるぜ!」
オオワシのリックは腹を抱えて爆笑した。
「あはは!マガークって、根は『まぞ』かもね。
あっそうだ!女王様ぁ、ちょっといいかなあ?」
「なあに?ガチョウさぁん。」
羽根を散乱する程ボロボロでも、快感そうに「気持ちいい・・・」と半笑いのマガモのマガークを脚鰭で踏みつけている、ハクチョウのメグ女王様はガチョウのブンの方に笑顔で振り向いた。
「こんなに沢山の風船って、どっから調達したのかなあ?おせーて!」
「それはねえぇーー!おらが全部調達したんだよぉーー!!」
茂みに集まる鳥達の集団から、一羽の顔を布で巻いた一羽のカラスがノコノコと歩いてきた。
「んー?お、おらはぁあ・・・」
そのカラスは、語尾を尻上がりでオドオドした口調で喋り始めた。
「おら、実は・・・・・・」
「なにーっ!!そんなことが・・・!!」
一同は絶句した。
「何だか怖い・・・」
「でも、現実に起きた事なんだから、本当に君は『修羅場』を潜り抜けてきたんだな。
カラス君、それでも過去の過ちを背負ってまで生きることを選んだんだから」
「・・・・・・・」
「布の中の顔見ていい?」
「見たいんですかぁーあ?おらの顔。卒倒しないでねぇえ・・・」
するっ。
さっ。
頬被りのカラスは、顔に巻いた薄汚れた黒い布を取った。
「こりゃひでえ・・・!!」
「翼ボロボロじゃん。飛べるのかよ!」
「よくバランス失うけどぉーお、それもおらへの『戒め』だと思ってますからーぁあ!」
「羽根だけじゃなくて、尾羽もボロボロ・・・苦労したんだね・・・」
ハクチョウの女王様もしみじみと、尻上がりのカラスを見つめた。
「で、心入れ換えてーぇえ!『自分は探し』の旅に出たらーぁあ、鳥のみんながワイワイやってるのを見つけてーぇえ!おらも・・・!」
「で、肝心の風船はどこから?ボロカラスさん。」
「ぼ、『ボロカラス』でなくてぇー、ちゃんと『エッジ』という名前なんですけどぉーおっ!
べ、別に『ボロカラス』でいいけどぉーお!ん、んん。えっ・・・とお!向こうの都会でーぇえ!風船をいーっぱい持ってたカラスーう・・・確かーあ・・・『風船割りのジョイ』っていうやつからーぁあ!くすねてきたのぉーお!」
・・・・・・
「はーっくしょん!!」
ここは、とある街の生ゴミ集積場所。
「どうしたん?ジョイさん。鳥インフル?」
「うるせーな!キュキュト!冗談もほどあるぜ!拙者の風船を根こそぎぶん盗られた腹いせに、腹一杯食いまくってるのにぃ!」
「他鳥に八つ当たりするなよ、ジョイ。もとはと言えば、お前さんの落ち度じゃん!」
「ごもっとも。拙者はぐうの音も出ん・・・ムシャムシャ!!ガツガツ!!」
「あーっ!ジョイ!てめえ!俺のキープした生肉がぁ!」
・・・・・・
「ふーん。で、君な、釣り針風船の被害にはなってないけど、何で参加を・・・」
ガチョウのブンは、尻上がりカラスに聞こうとした。
「だから今さっき言ったでしょ!!女王様は風船だけでなく、人間そのものの迫害に逢った鳥達を受け入れることにしたって!
ひとの話聞いてないの?ブン。」
オオワシのリックは、ガチョウのブンに口を挟んだ。
「いやいやいやあ。そもそもぉーお!、おらが何か外から覗いて面白そうだなーぁあ!と、参加したからーぁあ!
そしたらーぁあ、みんな偶然とはいえみんな同じ境遇だとは思えなかったんだーぁあねーえ!」
「あっ!このカラスだ!ねえー!こいつすげえよ!だって、風船を300回も膨らましたんだから!300回も!!」
「えっ!本当なの?そこのカワウさん!こんなに肺活量すげえの?」
「それほどじゃないけどーぉ!カモさぁーぁん!!」
「君が風船膨らしてるの見たいなあ!じゃあ、風船膨らましてみて!」
マガモのマガークは、尻上がりのカラスの嘴に白い萎んだ風船の吹き口を押しつけた。
「んーんん!」
尻上がりのカラスは息を思いっきり吸い込むと、
ぶぅっ!
「どーぉお?」
尻上がりのカラスは、鉤爪で風船の吹き口を抑えて膨らました風船を鳥達に見せつけた。
「うわーっ!ひと吹きでこんなにパンパンに膨らんだぁ!」
「いゃーぁあ、それほどでもーぉお・・・」
ぼぉーーーーーーーーーーん!
「どひゃあーっつ!!」
突然、パンパンに膨らんだ風船がとてつもない破裂音をたててパンクした。
余りにもどでかいパンク音に鳥達はビックリ仰天し、
ぎゃお!ぎゃお!ぎゃお!
かーかーかーかー!!
ぴーぴーぴーぴー!!
ぐぁー!ぐぁー!ぐぁー!ぐぁー!
と鳴き叫び、バァッと一斉に飛び上がり、パニックになった。
「ぎゃあああーーあああああああ!!ぐわー!ぐわー!ああああ!!」
ガチョウのブンも、激しく取り乱して大声を挙げて騒ぎ出した。
「は、ははは、あはは!ブン!!ま、全くお前さんの割れる風船嫌いは直らないなあ!またやるか?風船責めを。」
オオワシのリックも、興奮気味で苦笑いしながら言った。
「で、でも、す、すげえど、ド迫力!!風船が粉々にパンクしたあ!」
マガモのマガークもまた、腰を抜かして怖じ気づいていた。
「ごめんねーぇえ!まさかパンしちゃうと思ってなかったーぁあ!
まじごめんねーぇえ!
じゃ、今から『風船割りガラスのジョイ』のとこに風船全部返してきまーーっすう!」
ばっさばっさばっさばっさ・・・
「ありがとなー!尻上がりのカラスさーん!」
「大丈夫かなあ?風船の重みかも知れんけど、ヨロヨロ飛んでるよ。」
「まあ、大丈夫でしょ。あのカラスは、修羅場をくぐってきた逞しいカラスだぜ。じゃあ、この本読めよ。」
「・・・と、ということなの、が、ガチョウさん!」
アヒルのピッピもまた、尻上がりカラスの風船の激しい破裂音で興奮しながら、やっと正気を取り戻したガチョウのブンに話しかけた。
「ちょっと、話はダラダラしたけど、解った?」
「うん、うん。大体わかったけど・・・一つ解らないことがあるんだけど・・・」
「それはぁ?」
「野犬の吠える声がしたんだけど・・・」
ガチョウのブンは、半ば声をこわらばせて聞いた。
「ガチョウちゃーん!それは、お・ら・だ・よっ!うーばうっ!ばうっ!おらは、物真似大好きカケスのペスってもんだぁ!」
「ペスって奴はすげえよ!風船を72回膨らましたんだぜ!」
「あんがと!トビのエトス!あんただって85回も膨らましたべさ!うーーばうっ!ばうっ!ばうっ!」「お上手!!お上手!!」
「うーーばうっ!!ばうっ!!」
カケスのペスは調子に乗って、今度はガチョウのブンに吠えたてた。
「サンキュ!カケスさん」
ガチョウのブンは、カケスのペスの頭を翼で撫でた。
「はっ!はっ!はっ!はっ!」
「カケスの奴、本当に犬になりきってるよ!」「あははははは!!」
これには、鳥達には爆笑した。
「も、もうひとつ分からないことがあるんだけど?」「なあに?」
「僕とアヒルさんはキツネに殺られそうになって、命拾いしたんだけど、誰がキツネを連れてきたの?」
「えっ??わ、私はそんなこと・・・」
アヒルのピッピは首を振った。
「あたいは、そんな演出なんか考えてなかったけど?」
ハクチョウのメグ女王様も、困惑した表情を見せた。
「俺知らねえ。」「僕じゃない。」「あたしじゃないわ。」「わいじゃねよ。」「わてじゃねえべさ。」「おらじゃねえじゃけん。」「じゃあ誰やねん!」「ち、違うよ!俺じゃねえってば!」
鳥達は、口々に全員否定した。
「じゃあ、誰が・・・?」
「まさか、想定外にあっちから・・・?」
ぞおおおおおっ!
「あれ?」
「なんか・・・外の動物達の視線が・・・」
「早くここ離れましょうぜ・・・何だか怖いぜ・・・」
「はいっ!みんなあーーー!今日は御苦労さぁーーん!
これから湖に戻って、みんなの大歓迎パーティをしよう!
木の実とか一杯美味しい食べ物用意しといているわぁーーー!!」
「わぁーーーーーーーい!!」
バサバサバサバサバサバサ・・・
「なーんだ、やっぱり女王様飛べるんだ。」
「でも飛び方、ハクチョウとしては優雅さ無いねぇー!!ぎごちないというか、みっともないというか・・・」
「おだまり!マガーク!帰ってから倍返しの『ぺしぺし』してやる!」
「ひいいいっ!ご勘弁を!女王様ぁーー!!」
「ははっ!」
「あれっ?ガチョウとアヒルは?」
「そうだ!こいつら飛べないんだっけ!」
「大丈夫だよ・・・あいつらなら・・・ほら、あんなに絆深いもん。」
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