248帖 すっぽんぽん
『今は昔、広く
昼飯後、僕から誘わんでもムハマドやカレムから泉に行こうと誘われる。部屋で少し休憩してから泉に行ってみると、ゼフラ以外はみんなもう既に泉に入ってる。
泉に近寄って行くと僕を見つけたゼフラが、
「ねーキタノ。私も泳ぎたい」
みたいな事を泉を指差して言うてる。
「私に泳ぎを教えて?」
当然ゼフラは泳げへんやろし、僕を頼ってる様や。
「ほんなら水着持ってるか?」
まぁ男の子はみんなパンツか短パンで泳いでるけど流石にゼフラは6歳といえど女の子やし……。
わっ、わっ、わっ!
そう思てたらゼフラは黄色いワンピースを脱いで恥ずかしげも無くパンイチになってしまう。
まぁ、まだおっぱいは出てないからそんなに違和感はないけど……。
ほんで僕はゼフラに手を掴んで泉の傍まで連れて行かれる。
しょうがないなぁ。
Tシャツを脱ぎ、僕が先に水に入りゼフラを呼ぶ。
ああー、冷たくて気持ちいい!
「さぁ、ゼフラおいで」
「キタノ。大丈夫」
「大丈夫。ちゃんと捕まえておくさかい」
ゼフラを掴んでそっと水に入れる。
「わー、冷たいよー」
「あはは。大丈夫かぁ?」
「うん。気持ちいい!」
ゼフラはキャッキャ言うて喜んでる。泉の端に捕まってたユスフも少し泳いで僕の肩に捕まってくる。
「もう、ユスフはあっち行ってよう」
「やーだよ!」
みたいな言い合いをして、ユスフがゼフラに水をかける。
「もう止めてよー」
ゼフラはまだ水が苦手なんか顔に掛かった水を拭ってる。
「ユスフ、そのくらいにしときや」
と言うたとたんに、僕の肩を掴んでた手が滑って水中に潜ってしもたユスフは溺れかけてる。直ぐ様右手でユスフを捕まえて、泉の端に捕まらせた。
ゴホゴホ言うてるユスフに、
「ほら、バチが当たったのよ」
みたいな事をゼフラが叫んでた。それに対してユスフも反論してるし、これは言い合いになるなと思て泉の反対側まで水の中を歩きながら移動する。
するとゼフラは見よう見真似か足をバタバタさせる。身体を水面まで出して上げて進むと上手いことバタ足出来る様になった。
「おお、ゼフラ。上手やで」
「うふふ」
なんとか反対側まで行き、泉の端に捕まって休憩や。ゼフラは、はぁはぁ言うてる。そんなのはお構いなしに、
「ゼフラは顔を水に浸けられる?」
と言うて見本を見せる。するとゼフラは真似して顔を水に浸けたけど水を飲んでしもたかゴホゴホと咳き込んでた。やっぱり水には慣れてない様や。
「ごめんごめん。これはまた練習しよう。さっきみたいにバタバタと足を動かしてごらん」
とゼフラの両手を持って歩きだす。ゼフラはまたキャッキャ言いながらバタ足をする。反対側まで行くと今度はユスフがやって欲しいと言うてるし、泉の端にゼフラを捕まらせた後、ユスフの腕を取って水の中を進んだ。声こそ出さんかったけど、ユスフも嬉しそうにバタ足をしてる。それを見てたムハマドが僕と同じ様にアフメットの手を持ってバタ足をさせてた。水泳教室をやってるみたいで楽しなってきたわ。
砂漠のオアシスで水泳教室。実に趣深い……。
戻ってきたらゼフラがせがんでくるんで、今度はゼフラの手を掴んでバタ足をさせる。
「もっと速く!」
みたいな事を言うてきたんで速く進むとゼフラはめっちゃ喜んでる。
「すいー、すいー!」
もう一段速くすると顔に水が掛かってしもたのにケラケラと笑いながら喜んでる。そやのにバタ足は止まってしもた。
「足をバタバタして」
と言うてもゼフラはニコニコしてるだけ。
おかしいなと思てたらゼフラは恥ずかしそうに、
「パンツ脱げたぁ」
みたいな事を言いながら後ろを振り向く。そっちの方を見ると、白いパンツがふわふわと浮いてた。
もしかして、ゼフラはすっぽんぽん?
ゼフラを見てみると、ニヤニヤ笑ろてるだけやった。
僕はゼフラを泉の端に掴まらせ、沈んでいくパンツを追っかけ掴むと戻って水中でゼフラにパンツを履かせる。
このすっぽんぽん事件を見てたみんなは爆笑してる。勿論ゼフラも笑ろてた。
一旦水から上がりみんなで休憩をする事に。
冷えた身体に砂漠の太陽は気持ちがええんやけど、風が吹くと結構寒く感じる。乾燥してるからか気化熱を奪い易いんやと思うけど、砂漠で昼間に寒いやなんて不思議な体験やわ。
休憩して冷えた身体を温めてたらラビアの声が聞こえてくる。エシラ、ミライと共におやつに切った西瓜を持ってきてくれた。カレムが駆け寄って行きラビアの皿を受け取ると僕の所に持ってきてくれる。
ラビアはパンイチのゼフラを見つけると驚いた様な声を出して、その後説教を始める。
「まぁ、ゼフラ。女の子がなんて格好をしてるの」
「えへへ。泉で泳いだんだよ」
「女の子がそんな事をするもんではありません」
「でも沢山泳げたよ。キタノが教えてくれたの」
「もう、早く服を着なさい」
「はーい」
みたいな感じでゼフラは服を着せられてラビアに連れて行かれてしもた。食べ終わるとミライとエシラが皿を回収して持って行ってくれる。
その時もミライは目も合わさず淡々と帰って行ってしもた。やっぱり今日のミライはなんか変で、いつもと様子が違う様に見える。ニコっとも笑わへんし、僕の傍にも寄って来うへん。
朝にアズラが言うてた事が全く信じられへん様に感じてきて、僕は少し寂しい気分になってしもた。
つづく
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