その10 なかくとはひにすひく

 検索結果……引き算


 十回記念ということで、十文字にしてみました。

 加算・減算・乗算・除算、和・差・積・商と言うと算数でも頭がよく聞こえますよねえ。私がバカなんでしょうか?


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 A案 『私』マイナス『普通』イコール

 私は『普通』だ。

 つまり私イコール普通。私イズ普通で普通イズ私。

 周りが異常なだけなのさ。運動神経がよかったり、勉強ができたり、顔が良かったり、背が高かったり、おっぱいが大きかったり、家がお金持ちだったり……。

 世界はこんなにも個性で溢れているのに、私には何もない。

 私から普通を引いたら、きっとゼロになる。

 みんなどこで個性を見つけたんだろう? 購買で売ってるのかな。今度聞いてみよう。


 B案 シアワセ度数

 人の運をデータ化する技術が開発されてから、この『シアワセ度数』は瞬く間に世界に浸透した。

 1.シアワセ度数は生きているだけで減っていく。良いことが起こっても減る。

 2.良いことをすると、シアワセ度数は増える。悪事なら減る。

 3.シアワセ度数は人に分け与えられる。

 4.シアワセ度数は不可能を可能にはできない。確率が上がるだけ。

 5.シアワセ度数はゼロになると死ぬ。一度ゼロになると二度と増えない。

 世界中にカードが配られて『平和と幸福のための発明』とうたわれたそれは、実際にこの世界から戦争や犯罪を消し去った。人々はみな善行を積むようになり、町からゴミが消え、平均寿命だって延びた。世界一平等で信用できる通貨だとかで、国際的な取引なんかにも使われてる。

 オレ、向井幸太むかいこうたもこれは良い発明なんだって思ってた……あの事故に遭うまでは。

 自転車で交通事故に巻き込まれた俺は、知らないおじさんからシアワセを分けてもらって生き延びた。記憶はないけど、そうデータの履歴には残ってた。……おじさんの死因は俺だった。

 遺族の方からは「あの人の分まで生きてくださいね」なんて言われてる。家族でもない人の涙が、こんなにも辛いものだとは思わなかったよ。

 今ではオレの“シアワセ”も安定している。ねえおじさん、俺はいつまで“シアワセ”でいればいいのかな……。


 C案 引き算カード

 引き算カードに何かを書いて公衆電話に入れれば、この世からソレが消える。

 ただし代わりに使用者からは、消した物と同等の価値の何かが消えてしまう。

 俺はそんな都市伝説みたいなものを、偶然近所の公衆電話で見つけた。深夜なのにピー、ピーとうるさいもんだから確認してみれば、そこにはこのカードがあったわけだ。見た目は真っ白なテレフォンカードだが、手に取ると不思議とこれが引き算カードなのだと理解できた。

 試しにジュースを一本買ってから『嫌いな奴の家の冷蔵庫に入ってるジュース』と書いて使ってみる。カードを入れて受話器を取ると、何も音がならずに真っ白なカードが吐き出されてきた。俺のポケットからはジュースが消えている……。

 ふふふ、次は何に使おうかな。



 以上、三本です。

 シアワセ度数がちょっと細かいのは、以前自分でプロットを書いたからですね。想像以上に鬱エンドで、本文書く前にげんなりしましたが……。

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