旅に出る

逞雅&ガルガード視点


逞雅「…………」


逞雅 父さん母さん………


真っ白な雪を彩る赤と肌色………逞雅が大急ぎで白息を吐きながら、買い物が終わったら落ち合うと約束した場所に行った時にはもう………逞雅の父と母は息をしていなかった………


逞雅「…………」


逞雅 きっと金銭を狙われた………Gランク故に武器も持てずに………


逞雅は最下級のGランク者………日本では最早「奴隷」と言われてもおかしくないランクで………目の前でGランクの人が殺されても誰も何もしようとしない………例えそこに1人生き残ってしまった子供が泣いていようが………


逞雅「この世界は狂ってる………」


亡くなった両親の近くで膝立ちになり泣きながら逞雅は呟いた………「この世界は狂ってる」と……


逞雅「…………」


一頻り泣いた後 逞雅は1人亡骸を埋葬し家に帰った………もう何の音もない静かな部屋で1人……何もせずにただそこにいる


「コンコン」


ふと扉をノックされて逞雅はその扉を開ける……するとそこには黒装飾のフードを深くかぶった青年がいて、逞雅は一瞬身構えたが武器を持っていないのでそれを解きとりあえず部屋の中に案内


???「………親御さんを亡くしたみたいだね」


逞雅「…………」


???「君の手から血の臭いがする しかも死後1時間は経ってるな」


逞雅「…………」


逞雅 なんでこの人知ってるんだろ………血の臭いは俺感じないんだけど………


???「君がそう無言では何も話せない」


逞雅「貴方は誰」


???「それは言えない だがいずれ分かる」


逞雅「なんでここに来たの」


逞雅は青年の言葉に特に追求せずに別の質問をする


???「君を「更生者」に選んだ」


逞雅「Gランクの下級層で武器も持たないのに?」


???「持ってるだろ 隠して使わないだけで」


逞雅 なんでその事を………


???「これを君に」


逞雅「うわ黒」


???「返り血が目立たない色にしてあるからな 着てみてくれ」


逞雅は青年に渡された服に素早く「黒い」と言いつつ「着てみてくれ」と言われて着てみると………サイズぴったりの変にしっくりきて逞雅はクエスチョンマーク


逞雅「サイズぴったり………」


???「その服は特殊加工で着たその人の体格に合うように自動で調節される 勿論「更生者」に選ばれた者にしか扱えない代物だ」


逞雅「もし違う人が着たら?」


???「服内部で焼かれて最後には激痛の中意識も途切れぬまま死ぬ」


逞雅 うわ怖っ


???「君は別に戦闘方法を変えずともやって行ける 武器はそれぞれ決まった場所にしまえるから」


逞雅「お兄さんは武器持ってないの?」


???「持っていても必要が無いからな 後内ポケットに「更生者の証」があるから使う時は出してね」


逞雅「わかった」


逞雅 この人なんで俺の戦闘方法とか知ってるんだろ………


色々と不思議なところはあるがあえて突っ込まない


逞雅「ねぇお兄さん」


???「ん?」


逞雅「お兄さんはなんで俺を更生者に選んだの?」


???「君なら世界を更生することが出来ると思ったから」


理由こそ単純だが彼も彼で真面目に考えた上で決めている


逞雅「なんでお兄さんは俺が武器を隠し持っているのを知っていたの?両親にも教えたことないのに」


???「単純に鉄の臭いでわかったんだけどね 君は「パラレルワールド」って知ってる?」


逞雅「同じ世界だけど違う平行世界だっけ?」


???「そう 俺はパラレルワールドを自由に行き来できるんだ………それこそ未来にも過去にも行ける」


逞雅 つまり何が言いたいんだ?


逞雅「つまり?」


???「俺は行こうと思えばどんな世界でも行ける けれど君の武器の隠し場所はどの世界でも同じだったってこと」


逞雅「どんだけ俺同じところに武器隠してんのさ」


???「(俺も同じ所に隠してたからな………この家で唯一一切バレずに隠せるのがそこだった………)」


それを思い出すと泣きそうになるので逞雅(未来)はぐっと堪える


???「近々君は2つ先の街から来た「更生者」と旅をすることになる 実力も頭脳も君と並んでいる更生者だ」


逞雅「その人と旅を?」


???「良い相棒になれる」


逞雅 2つ先の街って確か街自体が中級階級の街だよな………気が合うかな………


???「君にだけヒントをあげる 「更生することだけが全てではない」」


逞雅「???」


???「旅をしていけばわかるよ 俺の正体もね」


そう言って青年は立ち上がり家から出て行った


逞雅「…………」


逞雅は彼が立ち上がった時に少しだけ生まれつきであろう白い髪が見えた………自分と同じ生まれつきの白髪なんてそうそういないのだが………逞雅にはまだ分からない


逞雅「…………」


子供「あっ 兄ちゃん!」


取り敢えず逞雅は何もしないでいるのが嫌になり服を着た状態で街に出て、血は繋がっていないが自分のことを「兄」と呼び慕う子供達の所へ


逞雅「………人減ったな」


たまに行く度に減っていく子供達に心を痛めつつ買ってきた食事を渡す


子供「兄ちゃんありがとう!」


逞雅「どういたしまして」


逞雅 親に捨てられて死にかけていたところを俺に助けられて………少しずつ減っていく………単純に大人に気に入られて一緒に行くってこともあるが………


基本減っていく理由としては餓死やランクの少し高い人からのうさ晴らしでの暴力………それによってまだ幼い子供達は傷つき死んでしまう


逞雅「…………」


ガルガード「思い悩んでるようだな」


逞雅「?!」


ガルガード「初対面に武器向けるなよ………お前 「更生者」だろ?」


逞雅 同じ服………つまりこの人があのお兄さんが言っていた人か………


ガルガード「………まだ小さいな お前の兄弟か?」


逞雅「いや………血は繋がってない」


いつの間にか怯えていた子供を安心させているガルガードが逞雅に質問しそれに返答


ガルガード「そう」


逞雅「名前は?」


ガルガード「ガルーガと名乗っているが本名は「ガルガード」」


逞雅「逞雅だ」


ガルガード 逞雅………か………覚えないと


ガルガードは人の名前を覚えるのが苦手ですぐに覚えられない


子供「お兄ちゃんも黒い服だけど兄ちゃんと同じ「更生者」なの?」


ガルガード「ついこの前選ばれてな 飴食うか?」


子供「食べる!」


ガルガード「元気なこった」


ガルガードは瞬く間に子供達に懐かれついこの前までのことを思い出す………


逞雅「ガルガード」


ガルガード「ん?」


逞雅「辛いことでもあったのか?泣いてるぞ」


ガルガード「え?」


ついこの前までのことを思い出して知らずの内に涙が流れていたガルガードはそれを拭う………すると逞雅は何かを察したのか「これ食えよ」と言って暖かい缶ジュースを渡す


逞雅「ガルガード 少しいいか」


ガルガード「ああ」


缶ジュースをすぐに飲み終えたガルガードに対して逞雅は別の場所に移動させて話をする


逞雅「ガルガードも黒装飾のフードの被った人に選ばれたのか?」


ガルガード「ああ 逞雅………だよな?………お前と同じ見た目をしていたぞ?白髪に赤い目で……目は死んでいたが」


逞雅「え?」


ガルガード「単なる偶然だとは思うが凄い似てる」


ガルガード と言っても逞雅はまだ目が死んでいないし生き生きとしているが………


逞雅「確かに同じ白髪なのは見えたが………目は見てないんだよな………」


ガルガード「世界に3人は同じ顔がいるからな たまたまだろ」


逞雅「でもその人俺の武器の隠し場所知ってたんだよね 親が死んだことも知ってたし」


ガルガード「そこまであの人に知られてんのも怖くねぇか?」


逞雅 確かに言われてみれば………


逞雅「どんな武器をどこに隠すとか知ってるだけなんじゃないか?」


ガルガード「有り得なくはないがあの人武器持ってなかったぞ?それにこの黒い服だってあの人のと酷似してる」


逞雅「「返り血が目立たないように」って黒いのは言われたけど………でも動きやすいからそれを重視したんじゃないの?」


ガルガード「有り得るっちゃ有り得るがそれにしたってあの人は謎が多すぎる」


頭の良さが災いしてどんどんややこしい話になっていく


逞雅「と言うかあの人名乗ったか?」


ガルガード「「名前は捨てた」って言われたぞ」


逞雅「つまり名乗ってないのか………「パラレルワールドを自由に行き来できる」とも言ってたし……もしかしてパラレルワールドから来た俺って可能性も………」


ガルガード「なくはない」


ガルガード 身長も逞雅より少し高いくらいだからもう少し身長か伸びれば恐らく同じ高さになるだろ………


ガルガード「逞雅 戻るぞ」


不意にガルガードは何か嫌な感覚がして逞雅と先程いた場所戻るが………


逞雅「…………」


ガルガード「…………」


先程まで生き生きとしていた子供達が無残にも赤に彩られ………横たわっていた


逞雅「………んで………」


ガルガード「…………」


逞雅「なんで………この子らが犠牲に………」


ガルガード「…………」


ガルガードは死んだ子供を抱きしめて泣く逞雅に何も言わずに呆然と立ちすくむ


ガルガード「…………」


ガルガード 俺と同じだ………


ガルガードにも前まで血の繋がりのない「弟」がいて………その子を無残にも殺されて殺した相手に復讐をするために武器を持った………結局仇討ちをしても意味はなかったが………それでも逞雅の気持ちはわかる


ガルガード「埋葬してやろう」


逞雅「ああ」


逞雅が泣き止むのを待ちガルガードが頃合いを見て殺された子供達を逞雅と埋葬


ガルガード「………俺にもいたんだ 血の繋がりのない「弟」と呼んだ子供が」


逞雅「え?」


ガルガード「ついこの前まで俺のことを本当の兄のように思っててくれてて………可愛がってた……けど雪が降ってきて暖かい飲み物を買いに行っている間に殺された………復讐をするために俺は武器を持った………結局仇討ちをしても意味はなかったが………お前の気持ちはよく分かるよ」


そう言ってガルガードは埋葬を終えた場所に花を乗せる………


ガルガード「この世界は狂ってる だから構成をしに行こう」


ガルガードは逞雅に手を伸ばした………


ガルガード「復讐は何も生み出さないが………この世界を更生し俺達のような悲しみを生み出さない世界にすればいい 違うか?」


逞雅「………」


ガルガード「俺達は「更生者」に選ばれたんだ この世界を変える必要がある」


ガルガードは逞雅にそう言いながら手を取ってくれるのを待つ


ガルガード「旅に出れば俺たちの知らないことがわかる」


逞雅「………これから宜しく 相棒?」


ガルガード「おう!」


逞雅はガルガードと手を取り隣を歩きながらその場を後にした………世界を更生しもう自分達と同じような悲しみを生み出させないと………そう心に誓って………

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

更生すべき世界 ガルガード @Garugard

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ