第29話 ネオ・ウトピア

 ネオ・ウトピア


 ノースコリア地方地下基地の中枢で、ファースト・エクソダスの民、オシリスとアラディアの二人が対話していた。

 アラディアの力、時空船となっているゴールドジェネスの上にアラディアが立ち、巨大な円柱のシステムを背にして浮かぶオシリスに告げる。

「オシリス…アナタは、この世界に大変な迷惑を掛けている。分かっているでしょう」

 オシリスは静かに、アラディアを見詰める。 

 オシリスの傍人であるアラディアは、オシリスが言葉を紡がない事に不安になる。

 自分の気持ちをぶつけても、静観状態のオシリスは冷静に分析して相手の答えを理解するだろう。

 だが…それで、オシリスがその答えを受け入れるのは別だ。

 理解する。だが、それを受け入れてくれるというのは、全くの別問題なのだ。

 

 アラディアが説得を変える。

「オシリス…アナタは…どうしたいのですか?」

 オシリスは返答しない。

 アラディアは、オシリスがやってきた事を考えて言葉にする。

「この世界、第五人類が産み出したナノテクノロジーを手にして…アヌビス様の後を追うのですか?」

 オシリスは答えない。

 アラディアは不安になる。

 オシリスの気持ちが分からない。

 アラディアが

「オシリス! 何か言ってください!」

 強く叫んでしまった。

 自分の不安な感情を抑える事が出来なかった。

 アラディアはハッとする。

「ごめんなさい…」

 オシリスが

「気が済んだか…」

 冷たい口調が帰って来た。

 感情がない。冷静な言葉。

 アラディアは自分の胸に手を当て

「オシリス。ごめんなさい…。私も…そう私達は、もっとアナタを理解したいのです。だから…」

 オシリスの冷静な視線が

「帰った所で何になる。そうなれば、皆は絶対に私の考えを否定するだろう。それがどうした」

 アラディアは微笑み

「否定しません。アナタの考えを受け止めて…共に歩める道を」

 オシリスが冷徹な嘲笑を浮かべ

「ウソがヘタだなぁ…昔から…。そうやって、笑う時ほど…君はウソをつく。君の力がウソで揺らいでいるぞ。君は、私を君の思い通りにしようとする時にウソを吐いても罪悪感を感じない。全ては私の為にやった事なんだから…。そうやって私に責任転嫁する」

 アラディアが怯えた顔をする。

 オシリスは冷笑な怒りを向けている。

 気持ちが交わらない。理解されるも、同意はされない。

 アラディアは、縋る様な眼で

「今度こそウソはつきません。だから…」

 オシリスはフッと嘲笑い

「何回目だ。もう…信用に値する程の価値は喪失している」

 アラディアが涙して

「ごめんなさい。でも…本当に…私も皆、オシリスの事が必要なんです。だから!」

 オシリスは背を向けて

「帰れ。そして、新しい傍人を長老達から宛がえてもらえ。我も人、彼も人、故に平等。アラティア…君達にとって私は特別ではない。それだけだ」

 アラティアを拘束しているカーゴが上昇する。

「待って、オシリス!」

と、アラティアは時空船から飛び、オシリスを掴もうとするが、時空船を拘束するケーブルから別のケーブルが伸びてアラティアを拘束して留める。

 アラティアは叫ぶ

「オシリス! アナタでないと私はダメなんです! 私は貴方を…愛しています。だから…一緒に傍にいさせてください」


 上昇するアラティアにオシリスは呆れた顔を見せ

「くだらん。も」

 オシリスの上から光線が飛んで来た。

「それ以上は、言うべきじゃあない」

と、刀真がアイオーンの結晶翼を開いて降りて来た。

”ドミネータープラス”

と、刀真は空間波動の共振を使ってアラティアを拘束するケーブルを切断した。

 アラティアは解放され、アラティアのゴールドジェネシスの力である時空船は変形、アラティアを守る台座のような戦闘機になった。

 それにアラティアは乗り

「ありがとうございます。刀真さん」

 刀真は微笑みを向けた後、冷徹な顔のオシリスを対峙する。


 オシリスは頭を振り

「やれやれ…MYの後継か…」

 刀真がオシリスを見詰め

「今すぐ、計画を中止して…アラティアさんと一緒に帰還して欲しい」

 オシリスは眉間を寄せ

「しろ…という命令でなく、願い出る…とは」

 刀真が真っ直ぐに見詰め

「この基地で、アンタを頼っている連中の状況は分かっている。だが…アンタを頼るべきじゃない。これは…オレ達が抱えるべき問題だ」

 オシリスは腕を組み

「かつて、この世界、第五世代を宇宙民へ進化させる程の大賢人、君の先代であるMYを、自身の愚かなマウンティングと無知な愚行で排斥した、この第五世代民は、その愚かな欲望を暴走させて、ここにいる強化ゲノム兵士達を生み出した。その責任を君達が背負うと…」

 刀真は肯き

「そうだ。オレ達の責任だ」

 オシリスは冷静な視線で

「コードネーム、マサエル…。君は日本出身だったなぁ」

 刀真は警戒する顔をして

「ああ…で」

 オシリスは冷静な口調で

「旧優生保護法という存在を知っているかね?」

 刀真が困惑を見せ

「それが…何の意味が…」

 オシリスは淡々と

「日本というイデオロギーが生みだした。最低な子孫を選別、生みだし道具としてする法なんだよ」

 刀真は驚きを見せる。

「それが…何の!」

と、言い出した所で、オシリスが手を差し出して止め

「その旧優生保護法には、とある言葉があった。優生上の見地から不良な子孫の出生を防止すると…。

 この意味が分かるか?

 自分達が思う、最良の子供でなければ、生む必要ない、殺せ。

 障害者である男女には、子供を産む権利は一切ないから、子孫を残せないように処置しろ…と。

 実際、起こった歴史だ。

 日本という国家は、障害者を増やさない為に、障害者の男女から生殖機能を奪った。

 事実だ」


 刀真は知らない真実に絶句していると、オシリスは冷徹な瞳で続ける。

「分かるか? これは当時の日本という国だけではない。世界中で、その当時、当たり前にあった事だ」

 オシリスが刀真を指さし

「お前は、昔の事だ。関係ないと、言いたいのだろう。残念だが…人間という種族は、永遠にその悪性を駆逐する事はできない。

 分かるか、こういう性質を人類全員が秘めているのだぞ。

 人は差別する。例外はない。

 人の全ては悪意を持ち、善意も同じほど、持つ。

 その善意が、悪意になるのも、人の性質だ。

 お前は、彼ら強化ゲノム兵士達を皆で抱えると言ったな。

 予言してやる。殺し合いが始まるぞ。

 人類は、その悪意こそ共通なのだ。

 お前達、第五世代の歴史と、我ら万年以上にも及ぶファースト・エクソダスの民の歴史からも言える。

 お前達は、絶対に差別する。そして、殺し合う。

 人間から、差別は無くならない。偏見も消えない。格差も終わらない。人間という存在の絶対なる真理だ」


 刀真にはオシリスの言葉が重く感じる。信じられない程の確信的な口調なのだ。

 いや、絶対的な確信があるのだろう。

 オシリスは、おそらく時空を渡れる程のファースト・エクソダスの力を持っている。

 故に、多くの時空を渡り歩き、人類のサガを腐る程に見てきたのだろう。

 見かけは二十歳後半だが、年齢的は数千、いや万を過ごしているのかもしれない。

 それ程の凄みがある。


 オシリスは告げる。

「だからこそ、私は彼ら…強化ゲノム兵士達と共に、この地で立たねばならぬ。彼ら、強化ゲノム兵士達を守ると共に、人類は力のない弱者を認めない」


 刀真が苦しい顔で

「アンタ…やけに連中の肩を持つな」


 オシリスは冷静な口調で

「私を助けてくれた恩義もある。だが…何より共感する部分があった。私がファースト・エクソダスの民の生活をしていた頃よりは…彼らとの生活に、自身の安定と満足感があったからだ。君達の世界の言い方で言うなら…居心地がいい、という事だ」

 

 それをアラディアが聞いた瞬間、俯いてしまった。

 自分達は、一番大事なヒトに安住の場を与える事が出来なかったからだ。


 刀真は右隣に浮かぶ戦闘モードのアラティアが、戦意喪失したのを見て、自分が何とかするしかないと気を張り

「確かにアンタの言い分は分かった。だが、譲れない。確かにオレ達、今の人類はアンタからすればサル以下の獣だろう。自分の感情さえ禄にコントロールも出来ない。愚行ばかり繰り返しているだろう。だがなぁ! 

 ちょっとだけど、前に進んでいるんだよ!

 オレ達が、前に進む為にも、やっぱり譲れない! そして…アンタはアラティアさん達の所へ帰るべきだ!」


 オシリスは呆れて頭を振り

「戻る意味がない」


 刀真は構え

「意味? あるに決まっているだろう! アンタの事を愛している女がいるんだ! そんな女の傍にいてやるのが! 男ってもんだろう!」

 刀真の背後に、デウスマギウスが展開される。

 翡翠色のデウスマギウス。三対の腕は、二対が巨大なハンマーのような形状で、一対は刀真の腕より若干大きいくらい。脚部は、キャタピラ型のスラスターだ。

 刀真のデウスマギス・タヂカラオノが発動した。

 

 オシリスは眉間を寄せ

「やれやれ、原始時代的な考えだ」

と、新たに進化した自分のゴールドジェネシスの力を発動する。

 MYの原子サイズナノマシン、アーベル型ナノマシンを作り出した高次元解釈を得て進化したオシリスの力。

 ゴールドジェネシス式、Gデウスマギウス・トウガクタイテイ。

 黄金の装甲に、胴体と同じサイズの巨大な腕が三対も繋がりが無く浮かび、胸部と脚部はドッキングしたロケットの様な形状だ。


 刀真は、デウスマギウス・タヂカラオノを動かし

「判らず屋には、キツい一撃をお見舞いして眼を覚まさせてやる!」


 オシリスも、Gデウスマギウス・トウガクタイテイを動かし

「野蛮なサルめ! キサマに真理を教えてやる!」


 二人は衝突する。



 

 ◇◆◇◆◇◆◇

 

 エネルギー式ナノマシンの培養槽が並ぶ巨大ドーム空間で、ヴォルグとエステリアは戦っていた。

 ヴォルグと繋がる最終戦争で地球を焼いた人型起動兵器ディアロスを集合融合させ強大にしたルエヴェイトと。

 エステリアの黄金に輝く神々しいドレスのデウスマギウス・ヴァナディースが。


 衝突…ではなく、エステリアが圧倒していた。

 エステリアのデウスマギウス・ヴァナディースの脚部にある大きなドレス式の噴射口から、膨大なフレアが噴出する。

 それは、数キロサイズのドームを完全に破壊して、そこにあったナノマシンの培養槽の群体までも消滅させる。

 巨大な火柱、太陽のプロミネンスの如き炎の柱がドームを突き破って、ヴォルグをルエヴェイトごと、外に出した。

「が…あ…」

 ヴォルグは、ルエヴェイトのシールドに守られているも、エステリアのデウスマギウス・ヴァナディースの攻撃が届いて、所々が焦げてダメージを受けている。

 赤熱の光を放つ穴からデウスマギウス・ヴァナディースのエステリアがゆっくりと浮かび出て、ダメージを受けているヴォルグに

「あら…ちょっと撫でたくらいで、そうなるの?」

と、余裕の笑みを見せる。


 ヴォルグは口元を拭い、鋭い目をする。

 

 圧倒的に強い。

 オシリスの改造を受けてディアロスは強化され、更に融合して強くなったはずのルエヴェイトが、損傷している。

 幾つもあった多腕の殆どが消失して、一対の腕しか残っていない。

 背面の翼と脚部も、半分は損傷している。

 自動再生で修復はされるも…それにエネルギーが使われ攻撃力は落ちる。


 エステリアは、悠然とヴォルグと、ヴォルグと繋がり背にするルエヴェイトを見詰め

「再生するんでしょう。待ってあげるから」


 圧倒的な強者の構えだ。

 いや、エステリアは強者のつもりはない。

 何か…隠し球があると思い、ヘタに追撃しない。

 それに、エネルギー式ナノマシンを作る程の技術を有しているなら再生するだろうと…踏んでもいた。

 そして、再生した場合には、エネルギーを使い攻撃力が落ちるだろう…と予測してもいる。


 ヴォルグは黙ってエステリアを見詰めていると、エステリアの後ろの方で巨大なキノコ雲が上がる。

 あの位置は、土門と、それの追撃に出撃していった同志達の戦場だ。


 エステリアは後ろにある巨大な爆発を、デウスマギウス・ヴァナディースの探査機能で捉えつつ

「どうやら、土門のヤツが…決めたみたいね」



 ◇◆◇◆◇◆◇


 キノコ雲が昇る戦場で、150メートルサイズの白き機神、土門のデウスエクスマキナのアマツミカボシが、キノコ雲を突き破って出現する。

 巨大な腕部、キャタピラのような脚部から膨大な推進のフレアを放出して、爆煙が舞うそこを胸部の操縦場にいる土門が見下ろす。

「やり過ぎたか…」

 アマツミカボシの脚部と肩部にある砲口を開いて、周囲を一瞬にして破壊。

 その周囲にいた、ロボット装甲を纏うヴォルグの部隊が吹き飛ばされた。


 土門がアマツミカボシの探査を使うと、多数の反応があった。

「ほう…無事か…」

 驚きだった。

 これ程の攻撃を浴びて無事なのが不思議だった。

 そう、その無事は、五体満足ではない。

 巨人装甲ロボットスーツは、完全に潰れ、一応は操縦者である強化ゲノム兵士達は無事なのだ。

 

 巨人装甲ロボットスーツの胸部の操縦室から出て来る強化ゲノム兵士達は、上空で鎮座する土門のアマツミカボシを恨めしげに見上げる。


 土門が拡声機能を使い

『このまま、降伏する事を提案する。心配するな、諸君の身柄の安全は保証する』


 その音声を聞いて、脱出してきたヴォルグの副官は出て来た巨人装甲ロボットスーツの装甲を叩く。

 悔しかった。それは嘗て、土門達、戦闘特化型のデウスエクスマキナの部隊に制圧された時と同じだった。

 再び同じ屈辱を味わう。


 土門が拡声機能を使い

『屈辱で死ぬより、生き残って明日を生きた方が勝利なはず。君達なら、それが分かるはずだろう』


 エステリアは、土門の決着を確認して、静かにヴォルグのルエヴェイトを見詰める。

 ヴォルグは、鋭い目でエステリアを見詰め

「キサマ等…勝ったつもりで」

「三下の台詞なんて吐いたって、現状は変わらないわよ」

と、エステリアは告げた瞬間、ヴォルグの背後にある山頂が爆発した。


 そこから二つの光が昇る。

 黄金と翡翠の光。

 その光は。

 Gデウスマギウス・トウガクタイテイのオシリスと

 デウスマギウス・タヂカラオノの刀真だった。


 二つのデウスマギウスが衝突した瞬間、空間が揺らいで爆発する。

 その衝撃爆発が、十キロ先であるエステリア達の元まで届いた。


 軽々と核兵器級の威力を放つ二柱のデウスマギウス。


「ああああああ!」

 エステリアはデウスマギウス・ヴァナディースごと、吹き飛ばされそれを

「おっと、大丈夫か?」

と、土門がデウスエクスマキナの機神アマツミカボシで受け止める。

「ありがとう」

と、エステリアはお礼を告げる。


 二人は、上空で戦うデウスマギウス達を見上げる。

 土門が

「やっと、刀真の野郎…本気を出したか…」

 エステリアが

「ええ…全く、父さんの戦いの時に加わってくれれば…父さんは、ここから消えずに済んだのに…」



 刀真のデウスマギウス・タヂカラオノは、その剛腕の二対に空間を圧縮さえた力を込めて放つ

「おらああああああああ」

 その一撃一撃は、宇宙開闢を起こしたビッグバンの現象だ。

 全てを開闢に消す創造破壊の一撃に…。


「おおおおおおおお」

 オシリスのGデウスマギウス・トウガクタイテイは、無線誘導で動く三対のロケットパンチ型の腕に宇宙終焉の力、ビッグクランチを乗せて相殺させる。

 その二つの力の相殺だけで、周囲の大地が核爆発級の衝撃に襲われる。


 奇しくも、刀真とオシリスは同じ性質の力だ。


「消えろーーーー」

 オシリスが、Gデウスマギウス・トウガクタイテイの胸部にある砲身から、反粒子砲を放つ。


「うおおおおおお!」

 刀真は、それを抑えて相殺させる反粒子反応阻害エキゾチックマトリクスのエネルギー砲を放ち、反物質の反応を抑えて相殺、そして

「この頭でっかちがーーーー」

 突進する。


 オシリスは距離を取ろうとするが…背面を何かの壁に阻まれ止まる。

 刀真のドミネータープラスによる空間壁に押さえられた。

「捕まえたぞーーー」

 刀真のデウスマギウス・タヂカラオノのタックルが決まる。

 強烈な衝撃と共に仰け反るオシリス、だが…無線飛翔式のGデウスマギウス・トウガクタイテイの腕達を刀真のデウスマギウス・タヂカラオノに向けて掴み、刀真を離そうとする。

「ベタベタするのは嫌いでね」

 刀真は、巨大なデウスマギウス・タヂカラオノの二対の手でガッチリとGデウスマギウス・トウガクタイテイを掴み

「逃げるなよ。タップリ語り合おうぜ! 拳で!」

 胸部の操縦場から腕を伸ばし、オシリスを殴る。

 

 その一撃をオシリスも胸部の操縦場から腕を出して掴み防ぐ

「野蛮人が…これだから…お前達は、偉大なる大賢者MYに見捨てられたのだ」


 刀真は、デウスマギウス・タヂカラオノの各部の噴射を最大にして、オシリスのGデウスマギウス・トウガクタイテイを大地に叩き付ける。


 山頂が砕けてクレーターが誕生する。


 ヴォルグは、オシリスが押されていると…

「オシリス!」

 向かおうとする前に、エステリアと土門が立ち塞がり

「おっと、行かせねぇ…」

と、土門

「黙って見ていなさい」

と、エステリア

 そこへ、ゴールドジェネシスが戦闘モードのアラディアが来た。


 アラディアが黙っているとエステリアが

「何かあったの?」

 アラディアは答えない。

 エステリアは、頭を振り

「後で話を聞かせて」

 アラディアは静かに頷いた。

 ショックな事でも言われたのだろう…とエステリアは察して

「本当に、男ってバカ…」


 

 刀真がオシリスを押さえるクレータで、オシリスのGデウスマギウス・トウガクタイテイが力負けする。

 刀真のデウスマギウス・タヂカラオノの方がパワーが上なのだ。

 同じエンジンを背負う車でも、高速タイプかパワータイプかの違いである。


 オシリスは鋭い目で

「やれやれ、エクソダス前の原始人は力圧しだからいかんなぁ…」

 刀真は呆れた眼で

「いい加減に眼を覚ませ、アラディアさんはお前の事を本当に思っているんだぞ」

 オシリスは淡々と

「なんだ? お前には思い当たる節があるのか?」

 刀真はフッと笑み、乙姫の事を思い出し

「ああ…女ってのは素直じゃあないんだよ。それを察してやるのが、いい男ってもんだろう」

 オシリスはフッと嘲笑い

「残念だが。私は私だ。男や女という価値観なぞ。意味はない」

と、告げた瞬間、刀真達のいるクレーターが電子回路模様を広げる。

「な!」

 刀真は驚愕、オシリスは笑み

「全く、エクソダス前の原始人は扱い易い」

 刀真は、オシリスを睨み

「お前ーーーー」

 オシリスは笑みながら

「私達がこの世界の主にあるテラフォーミングの始まりだ」

 全ては時間稼ぎ、オシリスが作るテラフォーミングシステムの完成までの。

 あの地下にあった巨大な機械の柱が光を放って起動する。



 ◇◆◇◆◇◆◇


 刀真達が戦っているノースコリア地方地下基地を中心として周囲百キロの大地が電子回路模様に包まれる。

 そして、その百キロ周囲の大地が裂けて浮上する。


 浮かび上がる100キロの大地。


 それをロシアの中央政府並びに、軍部は衛星や、様々な基地のカメラ、近くの都市部にあるカメラで捉えていた。

 ロシア政府の地下基地で、政治家や官僚達、軍部上層部の全員が集まるホールにその映像が投影されて、驚きに包まれている。

 その中にラートンもいた。

 ラートンは鋭い顔で事態が悪化した事を受け止める。


 そして、そのホールに通信が入る。

 通信元は…ガイアシステム人種が運営する地球圏監視委員会だった。

 緑、金色、青と様々な髪の色をした年齢がバラバラの地球圏監視委員会の面々が

『全ては…エステリア様のアメリカ軍特別防衛統合本部…ASDIDから報告を受けています』

『貴方達が自力で解決するなら…それで今回は終わりにするつもりでした』

『残念ですが…これはもう、解決できる事態ではありません』

『我らガイアシステム人種が解決します』


 現ロシアの大統領の男性が

「お待ちください! まだ…事態が悪化したとは…」


 画面にいるガイアシステム人種の一人が指を鳴らし、別の映像を見せる。

 それは、浮上した100キロの大地から、遙か上空へ伸びる光の電子回路だ。

『我々の予測では、これは…巨大な地球を一周する軌道エレベーターリングとなると…探査結果が出ています』

『完成してしまえば…地球の重力ならびに引力まで操作する事が可能な軌道エレベーターリングは、全てを破壊する大災害を起こすでしょう』

『もう…貴方達に出来る事はありません』

 現ロシア大統領の男性は項垂れる。


 地球圏監視委員会の面々は、苦しい顔をして

『残念ですが、この時点で、貴殿達からロシアを管理する権限を剥奪します。今後は、月にあるグランドル基地より、ガイアシステム人種の艦隊が出発します。それで事態をマサエル、エステリア様、第六天ゼブルのドルグラルと共に解決しますので…』


 通信が切れた。

 ロシアの政府関係者は項垂れた。

 もう、そこにはロシアを運営する権限を持っていない普通の人達がいる。


 ラートンが眉間を寄せていると、懐にあった端末が震える。

 それには…ファイブ・エクソダスと表示されている。

 それをラートンが手にして

「お前の予測通りになった…」

と、ラートンが通話相手に告げる。

 通話相手は

『ああ…そうだな』

 ラートンは忌々しい顔をして

「アレを使う」

 通話相手は

『ふ…愚狂な事で…全てを燃やすヴァルヴィスを使うとは…』

 ラートンは苛立ち気味に

「持ちかけたのは、キサマだぞ! 赤井 崇! いや…機神人類ファイブ・エクソダス

『はははは! 何時の世界でも権力者は…愚かだ。全ての責任は無能なお前達にあるというのに…』

と、通信が切れた。


 ラートンは機神人類ファイブ・エクソダスと通話した端末を床に叩き付けた。



 ◇◆◇◆◇◆◇


 刀真は、オシリスを押さえながら、遙か上空へ昇る光の電子回路群を見上げた。

「何が…。おい! 何をした!」

 押さえられるオシリスが嘲笑いながら

「簡単だ。この地球を我らの楽園ネオウトピアにテラフォーミングするのさ。私はMYのアーベル型ナノマシンから高次元解釈を得た。それによって、この星をテラフォーミングするシステムを構築したのさ」

「なら!」

「止められるものなら止めてみろよ。この力はお前の力、システム・イザナギと同質だ。取り込まれてしまうだけだ」

 刀真はハッとして

「今…システム・イザナギと同質って言ったよなぁ…」

 オシリスはハッとして

「まさか…」

「おらああああああ」

と、刀真は強引にオシリスをGデウスマギウス・トウガクタイテイからはぎ取り

「ぐああああああ」 

 オシリスと刀真は、クレーターの底で転がり、操縦主が離れた二柱のデウスマギウス達。

 

 刀真は叫ぶ

「いけーーーーーーーー」

 刀真のデウスマギウス・タヂカラオノは、Gデウスマギウス・トウガクタイテイを掴み、空へ昇るエネルギー式ナノマシンで構築する軌道エレベーターリングの柱へ突貫する。


 そして、刀真は自身のデウスマギウス・タヂカラオノを浸食されつつも逆にハッキングしてテラフォーミングシステムの中枢にアクセス、システムとデウスマギウス・タヂカラオノのハッキング攻防が始まって、テラフォーミングが止まる。

 一緒に持っていたGデウスマギウス・トウガクタイテイからとテラフォーミングシステムのナノマシンからのダブルハッキングは見事に作用していた。


 オシリスは、クレーターから這い上がって傍にあるナノマシン柱に触れようとしたが…

「させるかよ!」

と、刀真が襟首を掴み再び落とす。

「このクソガキがーーーー」

 オシリスは刀真は殴る。

 オシリスは、自分の力Gデウスマギウス・トウガクタイテイと接続して、一緒に持っていたデウスマギウス・タヂカラオノを剥がす算段だが、それを刀真が阻止する。


 刀真は顔面に貰うも、その手を掴みオシリスを引き寄せて殴る。

 それを開いている左腕で止めるオシリスだが、止められると刀真は蹴りをオシリスの腹部に放つ。

「逃げるんじゃあねぇ」

と、刀真はオシリスを逃がさない。

「ふざけるな! エクソダス前の原始人がーーー」

 オシリスは殴る。

 刀真は殴られて、掴んで腕を放してしまうが、タックルして馬乗りになる。

「お前は高慢なんだよ! チョットは彼女達、アラティアさんの事を考えろ!」

「ウルサいわ! それが何の関係がある!」

 オシリスは暴れて刀真の馬乗りを退けるも、刀真は果敢に殴り合う。

「関係大ありだーーー」

 激しく刀真とオシリスは殴り合う。


「理解しろ! 理解しろ! と、アラティア共は、私を理解するつもりもないだろうが!」


「お前は、道理だけ見ているだけのバカなんだよ! アラティアさん達は、アンタを理解したい。気持ちを受け止めたいって思っているだろうが!」


「気持ちを受け止める! ふざけるな! 自分の感情だけぶちまけて、私の事なぞ理解したつもりでいるだけだろうがーーーー」


「だったら、お前も感情をぶちまければいいだろうが!」


「そんなの不毛に決まっているだろうが!」


 刀真とオシリスは徹底的に殴り合う。

 その場に、ヴォルグ達と、エステリアに土門とアラディアが来た。


 エステリアは眉間を寄せ

「何、殴り合って叫んで…バカなの?」

 土門はニヤニヤと笑っている。

 男には、こういうバカな時が必要なのを知っているからだ。


 周囲は二人を見詰める。


 刀真は叫び殴る。

「お前は…なんで、そうやって考えた事が全てだと、真理が全てだって思っているんだよ!」

 オシリスは声を荒げ殴る。

「当たり前だろうが! 叡智や知恵がないと、前に進まない! 永遠に同じ場所を回る愚者のままなんだぞ! そんなの許せるかーーーー」


 刀真の脳裏には、MYの事が過ぎる。凄まじい人だった。世界を変えた人だった。

 だけど、もっと人の気持ちを知るべきだった。学問とか知恵とかじゃあない。

 心と心と通わせる事を…分かるべきだった。

 それが出来たなら…あんな最終戦争なんて最悪な事にならなかった。

 そう、今、こうやって殴り合ってでも止めるべきだった! 

 後悔する思いが過ぎる。


 オシリスの脳裏には、今までの事が人生が過ぎる。

 ファースト・エクソダスの教えに従い、日々を過ごし知恵と力を高めた。

 だが、本当にそれで良いのか?

 自分は、ファースト・エクソダスの掟に縛られて終わるのか?

 そんな疑問が過ぎった時、大好きな伯父アヌビスの逃走。

 ショックだった。自分の大好きな人が消えた。

 だから…この場所にいる意味なんてないと…。

 自分の決意に間違いはないと…。


 刀真が心を込めて叫ぶ

「思い出せよ! アラディアさん達は、お前の事を思って声を掛けた事だってあったはずだろうがーーーー」


 オシリスの脳裏に、伯父アヌビスが消えた後、アラディア達がオシリスの傍に来て

 アナタの悲しみを教えて…。

 アナタの気持ちを一緒に分かち合いたいの…。

 アナタの感じている気持ちを私達にも…分けて。


 思い出した。彼女達が自分を想っている事を。


 オシリスの動きが怯む。

 そこに刀真のアッパーがキレイに入った。

 オシリスは白めを剥き、後ろに倒れる寸前、それをアラディアが受け止める。

「もう、止めてください」


 オシリスはノックアウトされた。

 刀真は、ハァハァハァ…と息を荒げてボロボロの体を何とか立たせていると

「何をやっているのよ! バカ!」

と、刀真の頭上から乙姫の声がした。

 

 乙姫が赤いデウスマギウス・ミコトミで降り立つ。

 刀真は、降りて来る乙姫を見上げて

「ああ…その…乙姫」

 乙姫は、デウスマギウス・ミコトミから降りて、もの凄く怒っている顔で

「ねぇ…なんでこんなバカやっているの!」

 お兄ちゃんって言わない。マジ激オコモードの乙姫に、刀真が殴られて腫れた顔を引き攣らせて

「その…」

 そこへ土門が来て

「ごめんね。乙姫ちゃん。ちょっとコイツ…脳天に血が上ってね…」


 刀真は否定しない。事実だから…。

 乙姫は怒りのオーラを醸し

「本当に、後で説教だからね…」

 刀真は項垂れ

「はい…」

 乙姫の尻に敷かれている刀真を、オシリスはアラディアに介抱されながら見詰め

「あんなヤツに…負けたのか…」

 アラディアがオシリスの頭を膝に乗せて膝枕して

「ごめんなさい。私…私達、アナタの気持ちに寄り添えなかった。本当にごめんさない」

と、涙していると、オシリスが眼を閉じ

「そうだな…私も悪かった」

 アラディアがハッとして嬉し涙に変えて

「うん、ありがとう…」


 エステリアが刀真達の所へ来て

「乙姫ちゃんが来たって事は…」

 乙姫が肯き

「はい。この案件は地球圏監視委員会が…」

 エステリアが呆れ顔で

「始めからそうしていれば…」

 

 オシリスがアラディアに抱えられて立ち上がると、そこへヴォルグが来て

「オシリス!」

と、開いている左腕を支え、アラディアとヴォルグの二人に支えられオシリスは刀真の元へ来る。

 共にオシリスを支えるヴォルグをアラディアは見て、少し複雑な顔をするも…

「一緒に…」

と、ヴォルグに告げ

「ああ…」

と、ヴォルグは頷いた。


 オシリスは刀真の前に来て

「システムは止めた。私のデウスマギウスを…戻してくれないか」

 刀真は肯き

「ああ…」

と、上空のテラフォーミングシステムの柱に突貫させたデウスマギウス・タヂカラオノを戻した次に、強烈な衝撃が襲来する。


 デウスマギスの四人は、背筋が凍てつく。

 エステリアは、それがある方向の上空を睨む

「アレは…何?」

 オシリスもそれを凝視する。

「なんだと…」

 刀真は、鋭い顔で

「どういう事だ…」

 乙姫は自然に縋る様に刀真の腕に抱き付く。


 土門が

「何が起こっているんだ…?」

 エステリアが

「あんな兵器…知らないわ。アンタ!」

と、オシリスを見る。

 オシリスは首を横に振り

「私は作っていない」



 四人が捉えたそれは、浮上して止まる大地から、斜め遙か上空にある巨大な200メートルサイズの存在を捉えていた。

 それはラグビーボールのような花弁を四つ備えた、四つの中心となっている部分には機神の顔がある戦艦だった。

 これは…ラートンが会話した人物、赤井 崇が作り出した超兵器ヴィルヴァスだった。


 ヴァルヴィスは、機神の顔がある中心から、共鳴震動波を放つ。

 その共鳴震動波は、浮上した100キロの大地を包み込み、その周囲が蒸発して爆発した。



 オシリスは自身のGデウスマギウスにある解析能力で、凶悪な超兵器がどんな武器で襲ってくるのか…調べ

「信じられん、共鳴震動波…だと…」

 土門が

「なんだよ。その共鳴…なんとか…て」

 オシリスが冷静に

「空間を共振させて対象物を、電子サイズまでバラバラにする兵器だ」

 エステリアが青ざめ

「電子サイズでバラバラって…。もしかして…プラズマ化するって事よね。ヘタをしたら…核融合爆発を」

 オシリスは肯き

「ああ…」

 刀真は、焦り

「くそ、直ぐに破壊を」

と、自分のデウスマギウス・タヂカラオノの乗って飛びだそうとするが、再び衝撃が襲う。

 オシリスが

「出るな! 出た瞬間、そいつが放っている共鳴震動波を浴びて纏っている周囲の物質が核融合して、その大爆発を纏ってしまうぞ。いくら、デウスマギウスでも無事には済まない」


 土門が

「そんなヤバい兵器なら、どうしてここが無事なんだ?」

 オシリスが

「展開しているエネルギー式ナノマシンが、その共鳴震動波を受け止めて中和しているんだ。だが…あと僅かで…」

 土門が

「乙姫ちゃん。月にいるガイアシステム人種の艦隊は!」

 乙姫が

「あと、30分くらいしないと…」

 

 土門が頭を抱えて

「外に出れば、核融合爆発の雨霰! かといってここにいると!」

 刀真が

「落ち着け! 土門」

 騒いでいるとオシリスが冷静に考え、目を閉じて開けると

「助かる方法は一つだ。このテラフォーミングシステムの根幹となっている、この大地ごと、アイツを呑み込んで時空転移、異界渡りをする」

 アラディアが

「オシリス…」

 オシリスが

「異界渡りする場所は選ばない。フル出力で時空転移、その時空転移のエネルギーに呑まれて、あの馬鹿げた兵器は時空転移の高エネルギーによって破壊されて、異界渡りのゲートと共に呑み込まれて消える。だが…そうなると…ヴォルグ。どうする?」


 オシリスの左腕にいるヴォルグが

「こんな事になったんだ。私達、強化ゲノム兵士達もオシリスと共に行くさ」


 刀真が

「オレ達は…」

 オシリスは首を横に振り

「問題ない。異界渡りのゲートが開いた時に、デウスマギウスで出ればいい」

 土門が

「オレは…」

 エステリアが

「アタシが運んでやるから」


 オシリスが

「マサエル殿…いや、神城 刀真殿、龍宮 乙姫殿。お二人の…システム・イザナギとシステム・イザナミの力をお貸し頂きたい」


 刀真は肩を竦めて

「分かったよ。乙姫…」

「うん」

と、乙姫は頷いた。



 刀真達がいる100キロの浮かぶ大地を炎獄に変えて消滅しようとするヴィルヴァスが、再び共鳴震動波を放つ。

 オシリスのテラフォーミングシステムの100キロの大地を覆い守るエネルギー式ナノマシンの装甲が、あと僅かの時に…それは始まった。

 

 浮かぶ100キロの大地から光の柱が昇り、遙か上空、衛星軌道上で爆発、黄金の時空転移のゲートを形成した。

 そこから、呑み込んで包み込む光の世界が出現した。


 その領域が、オシリス達がいるテラフォーミングシステムの大地と、破壊しようとするヴィルヴァスを呑み込み、時空転移、異界渡りさせる。


 ゲート・ホワイト・ホールに呑み込まれ、そこから三つの光が脱出する。

 翡翠と赤の光は並んで飛翔し、黄金の光は別の機神を抱えて飛翔する。


 翡翠は刀真に赤は乙姫、黄金とそれに抱えられる機神はエステリアと土門だ。


 四人は、時空転移していくオシリス達を見詰めていると、異界渡りする遙か向こうに、もう一つの地球を見た。

 そこにはMYこと、アレスジェネシスの神城ソラリスの全長15万キロと、それと並ぶゼウスヘパイトスの神城SRフィランギルが見えた。


 それを見てエステリアが嬉しげに

「全く、父さんは! 相変わらず凄いんだから!」


 刀真はホッと安心した顔をして、それを乙姫が

「良かったね。充おじさん、生きていたよ」

 刀真は苦笑して

「そうだろう。あの人は…ただじゃあ、くたばらない」


 オシリス達を運ぶ時空転移、異界渡りは、七色の光を放って消えた。

 時空転移の作用を終えた。



 ◇◆◇◆◇◆◇

 

 それを別の場所、ロシアのとある町で見ていた男がいる。

 コートを纏い、ニヤニヤと怪しく笑み男は、驚愕しているロシア国民から浮いていた。

 彼の名は、赤井 崇。

 龍神 充人と同じ機神人類ファイブ・エクソダスであった。

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