第21話 双極の天帝


 山中が眼を覚ますと、そこは揺られている船内だった。

「阿…這很好…」

 山中が寝ているベッドの隣に王 玲蘭がイスにいた。

 山中は頭を掻いて後頭部にデウスマギウスを装備させ翻訳会話を始める。

「す…ここは…何処だ?」


 王 玲蘭が中国語で話してくれた事に驚き

「貴方は、北京語を喋れるの?」


 山中は、後頭部にあるデウスマギウスの漆黒の装甲を小突き

「君の言葉に合わせて翻訳して喋っている。自分にはそういう機能があるからなぁ…」


 王 玲蘭が驚きを見せ

「流石、上帝的機器。凄いわ…聞いた通りね」


 山中は慌てていない。何故なら…多分、これもアレスジェネシス達が用意した事態だと分かっている。


 そこへ姉のイリディアと妹のライラがドアを開けて入る。

 イリディアもホッとした顔をして

「良かった。三日間も起きないから…」


 ライラが姉の後ろに隠れて怯えている。

 山中は、ライラを見ると、ライラが悲しそうな顔をして姿を隠す。

 そう、ライラが特注のスタンガンを使って気絶させたのだから。


 山中は頭を掻きながら

「で、自分を気絶させた道具は?」


 玲蘭が、ポケットから細長い金属の棒の装置を取り出し

「これは、ある人から貰ったの。貴方を捕まえられるだろうって…」


 山中は、玲蘭を睨むように見て

「誰だ。そのある人とは…」


 玲蘭は苦しそうな顔で

「ごめんなさい。言えないの…それが条件だから…」


 ディオスは、玲蘭の右腕を掴み強く握り

「い、痛い」

と、玲蘭が痛がり力が入り固くなる。


 山中が玲蘭にロックオンして、鋭く玲蘭の瞳を睨む覗き

「その、ある人とは…人以外だったのか?」


 玲蘭が苦しい顔をして黙る。口にはしないが、それを示す反応が握った腕の具合から分かった。緊張で強張る。つまり、その通りという事だ。


 山中は離して

「分かった。もういい」

 ドンピシャで、アレスジェネシス達だ。

 デウスマギウスである自分が、ただのスタンガンで気絶する事は無い。つまり、それ専用のスタンガンだ。そんなのを作れるのはアレスジェネシス達のみ。


 山中は寝かされていたベッドに腰掛け

「で、自分を攫った理由はなんだ?」


 イリディアが眉間を寄せて真剣な顔で

「私達に協力して欲しい」


 山中は、頭を振り

「もっと具体的に、内容を言って欲しいね」


 玲蘭が

「この子達、故郷は、新疆ウイグル自治区なの」


 山中の眉間が寄り、僅かに肩が震える。

「その…話は…色々と聞いている。だったら、何故、アンタは…この子達に手を貸すような事をしているんだ? 言語から考えるに…」


 玲蘭が嫌そうな顔をして

「中国に生きている全ての人達が…。ネットにあるような残酷な人達ではないわ。そういう事をするのは権力を握っている一部の連中よ」


 そこへ、ドアがノックされ

「私だ。玲蘭…どうだ?」


 玲蘭が

「今、目覚めたわ。子墨兄さん」


 玲蘭の兄、王 子墨が入る。二十歳前の玲蘭より上の二十歳前半の男性が入り

「はじめまして、私は、王 子墨です。妹の玲蘭と、この姉妹は、私達と行動を共にしているイリディアとライラです」


 山中は、腕を組み眼をジッと細めて

「私は、山中 充。ソラリスでゼウスヘパイトスとなったデウスマギウスだ」


 子墨は、山中の前にイスを持って来て座り

「存じています。山中さん」


 山中は淡々と

「何故、ここにいるのか…理由をお聞かせください」


 子墨は、山中に連れてこられた理由を説明する。


「四十年程前、私達の父の兄がウイグルの方へ行き、小さな料理店を始めました。

 その店は、地元のウィグル料理と私達の北部のモンゴル自治区の料理を出す所で、ウィグルの人達に愛されて続き。

 伯父は、ウィグルの人と結婚しました。

 この子達は、その伯父の娘達です」

と、子墨は、イリディアとライラを手で示す。


 子墨は続ける。

「私達の父は、貿易といった卸業をしていたので、ウィグルの産物と、モンゴル自治区の産物との交易店を出そうと、伯父の後押し得て、ウィグルで商売をしていました…。でも…」

 子墨が固く手を握り閉めて震える。


 妹の玲蘭がその背を擦り、子墨が

「大丈夫だ」

と、告げた後、真剣な眼で

「今から八年ほど前、2011年程から、強烈な中国本土、共産党からの締め付けが…」


 山中は伏せ目気味に

「まあ、色々と聞いては…いるよ。日本でも相当な話をネットに載せていたり、発信している人達がいるから…」


 子墨が

「共産党は、軍隊を投入して、ウィグルで…虐殺と暴威を振るいました。

 私達の父や伯父は、攻撃されているウィグルの友と助けようと、兵士達に願いでました。

 無論、父や伯父は、中国共産党の共産党員でした。

 そんな父や伯父を、兵士達は…邪魔だとして撃ち殺しました」

 子墨が涙する。


 玲蘭が同じく涙して

「軍に逆らったとして、父と伯父の家族である私達は…私は、兵士にぼろく切れのように犯されました」


 山中は項垂れる。

 玲蘭は涙しながら

「当時、私は…13でした。本当に怖くて怖くて…痛くて…。同じように犯されていた母や、上の姉達は、兵士に頭を打ち抜かれて殺されて行き。私の番が来る時に…」


 玲蘭は涙してその場に蹲る。


 子墨は泣きながら

「自分は、妹や姉達、母達が犯されるのを押さえ付けられて、見させられ…本当に、人のやる事か!と…。何より、助けられなかった自分が…悔しくて悔しくて…」


 山中は、目元から涙が零れる。

 ホントに辛い。こんな現実があるのか?という位に、苦しかった。


 玲蘭が泣きながら

「私が殺される前に、煙幕が投げられて…そこへ、父の友人だったウィグルの人達が来て…兵士が銃で殺していって、それでも…私達を助けてくれて…」


 子墨が傍にあったテーブルを叩き

「権力を握っている共産党の連中なんて、人じゃあない!」


 イリディアがライラを抱き締めて

「私も、小さかったライラを抱き締めて、ヒドい事をされる母や姉達を戸棚に隠れて見ているしか出来なかった」


 今のイリディアは、16歳くらい、ライラは7歳くらいだろう。

 その数年前、つまり幼少期にそんなヒドい体験をした。


 山中は、壮絶だと感じる。これで分かった。

「つまり、自分に…それを何とかして欲しいと…」


 子墨が涙しながら

「今、ウイグルを支配しているのは、共産党の権力の息がかかっている連中ばかり、逆らう者は、同じ民族でも殺します。今の中国にとって、共産党でない民は、人ではないのです。我々は、共産党に搾取される奴隷なんです」


 山中は項垂れながら

「すまん。ちょっと考えさせてくれないか?」


 子墨が

「明日には、自分達が拠点としているフィリピンに到着します。お願いです。力を貸してくださ。貴方は…日本を、世界を手玉に取るアレスジェネシスと同じ力を持っているんでしょう! 力を…」

 

 玲蘭もお辞儀して

「お願いします」


 その場で、山中は答えなかった。


 そうして、考えながら船で過ごしていると、この貨物船の人達の話を聞く。

 ここで働いている人達、中国人やイスラム系のウィグルの大半が、玲蘭やイリディアと同じ、排斥され逃れた者達だった。


 夜の船室のベッドに山中は座り、虚空を見つめて

「いるんだろう!」

 そこの空間からAOフィールドを解除したネルフェシェルが姿を見せる。

「や…どうだね」


 山中は嫌そうな顔で

「お前達が協力したのか!」


 ネルフェシェルは肩を竦め

「紹介された、だけだ」


 嫌そうな顔をする山中に、ネルフェシェルが

「中国本土には、中国共産党がやっている悪行を知って。何とかしたいと思っている者達が沢山いる。お前は、中国の一部の権力を握っている連中がやる愚行を見て、中国が愚かだと思っているなら勘違いだ。中国の人々は、大らかだ。その大らかさ故に、このような権力の暴走を繰り返す歴史を巡っている」


 山中がチィと舌打ちして

「知っているよ。どんな理想や主義主張を掲げようとも…所詮は人だ。権力を得れば腐っていく。それは、日本も、どこの国も同じだろう」


 ネルフェシェルはフッと笑み

「では、どうする? ゼウスヘパイトスよ」


 ゼウスヘパイトスの山中は、沈黙すると、ネルフェシェルが

「そうやって、悩んでいる時間は…ないぞ」


 山中は、ゼウスヘパイトスの、額にあるサードアイを開き

「まさか!」


 そう襲撃を捉えていた。

 フィリピンに到着する寸前に、闇に紛れた小型艇が数隻、近づき煙幕弾を乗る貨物船に放った。

 渇いた音と共に煙幕が広がった。


 煙幕で混乱する船内、そして、玲蘭が甲板に出ると、銃声が響く

「イリディアとライラを!」

と、思った後ろに全身が黒で覆われアサルトライフルを持つ襲撃者がいて、玲蘭に引き金を引こうとした瞬間、銃身が削り取られた。

 人型デウスマギウスの山中が、漆黒の金属の爪で削り取り、襲撃者を殴る。襲撃者は、砲弾の如く弧を描いて海に落ちた。

「大丈夫か!」


 その掛け声に玲蘭は肯き

「イリディアとライラを!」


 人型デウスマギウスの山中は、額にあるサードアイを使って、イリディアとライラの居場所を探す。

 通路で、襲撃者に殺されそうになるのを発見、その上の通路に来て、通路の床を切り裂き、二人の傍に降りる。

 襲撃者達がアサルトライフルを発射するも、漆黒のデウスマギウスの装甲に弾かれ、デウスマギウスの打撃に殴り飛ばされる。

「二人とも、大丈夫か!」


 イリディアはライラを抱えて肯く。

 そこへ「イリディア! ライラ!」と子墨が来る。


 デウスマギウスの山中は、子墨に二人を預け

「ちょっと、始末してくる」


 船内に入った襲撃者を片っ端から倒し、船を囲む小型艇を、デウスマギウスの腕にある荷電粒子砲で吹き飛ばした。

 その対処時間、十分程度である。

 僅かな時間の間に、襲撃者達を撃退した事に、玲蘭達を驚きを向ける。

 

 ゼウスヘパイトスである山中は、船内で倒した襲撃者達を船首に集める。

 全員、死んではいない。殴って気絶させただけだ。

 その襲撃者達の手をタイラップで縛る船員達、それを見守るゼウスヘパイトスの後ろにネルフェシェルが来て

「ゼウスヘパイトス、君には、私が使うフィールド型ナノマシンと融合している筈だ。それを使って、襲撃者の脳内を見て情報を取得してはどうかね?」


 それを言われて癪だが、ゼウスヘパイトスは、気絶する襲撃者の一人の額を掴みフィールド型ナノマシンを送り込み、脳内のスキャンして記憶を覗く。

 偶々、掴んだこの男が、襲撃者のリーダーだった。


 その脳内の情報を見て分かった事は、この襲撃者は、人民解放軍の特殊部隊の者達という事だ。要するに国外に逃げた反乱分子の始末をする極秘の部隊、裏の者達だ。

 

 ゼウスヘパイトスは後ろにいるイリディアとライラの姉妹を見る。

 この部隊は、女子供のでも関係なく殺す外道だ。

 兵士という仮面に洗脳された、殺人鬼に変えられた連中に、イリディア達は狙われている。

 このまま、影響が及ばないヨーロッパやアメリカに逃げたとしても…世界が狭くなった現在では、何時か…魔の手が…。


 そう考えていると、ネルフェシェルが

「もう、君の考えは決まっているんじゃないのか?」


 ゼウスヘパイトスは目を渋くさせる。そう、アレしか方法がない。


 襲撃者を拘束している子墨が

「もう、オレ達には…明日がない。どこに逃げても…共産党の魔の手が…」


 玲蘭がイリディア姉妹の後ろから来て、ゼウスヘパイトスの腕を掴み

「お願い、力を貸して。私達には…もう、明日がないのよ。貴方の力を頼るしか…」


 イリディアも来て

「お願いします。何でもします。だから…」

 ライラもイリディアの後ろに隠れて来る。


 ゼウスヘパイトスが、跪きライラと同じ目線で

「もう、怒っていないから…隠れないでくれ」


 イリディアが「ライラ、許してくれるって」とライラを前に出す。


 ライラが「ごめんなさい」と告げると、ゼウスヘパイトスは、右手を人に戻してライラの頭を優しく撫で

「うん。許すよ」

 ゼウスヘパイトスは立ち上がり腕を組み

「本当に覚悟はあるか? もしかしたら、地獄の底にある閻魔様の宮殿で一生、終えるかもしれないぞ」


 イリディアが悲しげな笑みで

「生きているなら、なんとなる」


 ゼウスヘパイトスは、フゥ…と溜息を漏らして

「こういう事をするつもりだ」

 その全貌を話す。

 玲蘭が、イリディアの両腕を掴み

「イリディアが抱えなくていいわ。私が…」


 イリディアは、地獄の底で暖かく輝く聖母のような穏やかな微笑みで

「うん。分かりました。よろしくお願いします」


 ゼウスヘパイトスは、人の右手を差し出し、それにイリディアが左手を重ねる。その重ねた手を自分の額、サードアイに触れさせ

「ああ…必ず成就させる。我が伴侶よ」


 ここにゼウスヘパイトスとイリディアとの契りが交わされた。


 それを見たネルフェシェルは楽しげな笑みで

「その準備期間にある襲撃は、全て我々が面倒をみる。確実に護衛しよう。捕まえた連中は、いい交渉材料にもなるからね」



 ◇◆◇◆◇◆◇


 一ヶ月後の中国、新疆ウイグル自治区、キルギスの下にある広大な砂漠の上空に巨大な鉄の大地が降臨する。

 それは、ソラリスが静岡県沖に打ち込んだアンカーと同規模の存在だった。

 だが、ソラリスではない。

 その百キロ級アンカーに繋がるのは、ソラリスより少し細め二百キロ級の超巨大円筒が浮かんでいる。

 その長さ10万キロの最上部には、笠の骨組みのような構造が繋がっている。

 八つの全長1000キロで幅50キロの円筒が八方向に広がり、その中心は幅500キロのメルカバーと同じ形状の存在が繋がっている。


 ウィグルの人達は、その荒唐無稽な存在を前に、驚き口を開くだけだ。


 中国全土でも、その映像が流れて混乱する。


 テレビ、ネットが、それを映す。

 世界中に、その圧倒的存在を知らしめる。

 そして、その形状には憶えがある。

 そう、ソラリスと似ているのだ。


 中国全土のネットワークとテレビシステムが乗っ取られる。

 その画面に出たのは、漆黒のデウスマギウスであるゼウスヘパイトスが、不気味な昆虫型のロボットの王座に座している姿だった。


 ゼウスヘパイトスは、中国全土の通信を乗っ取り、宣言する。

『私は、アレスジェネシスの息子、ゼウスヘパイトス。ここに宣戦布告をする。繰り返す。宣戦布告する』



 ゼウスヘパイトスが作り出した、新たなソラリスが、ウィグル自治区に降臨、その千キロ級に伸ばした八つの円柱コロニーから、膨大な数の巨兵機が放たれる。

 黒光りする全長15メートルの人型起動兵器、その背面には剣型の翼が伸びている。

 数十億近い黒光りの起動兵器メタトロンは、ウィグル自治区全土に広がる。

 

 そこを警備する軍隊が応戦するが、見えないシールドに守られ全く通じない。

 メタトロン達が、腕を軍隊に伸ばすと、自在に曲がるプラズマ光線を受けて装甲車や、兵士達が吹き飛ぶ。

 ダメージを受ける兵士達。

 それで終わりではない。

 メタトロンの背部に背負う円筒型の格納庫から何かが放出される。

 それはやせ細った犬型のロボットだった。

 蟻の群体の如く、放たれる犬型無人兵器、ターミネイト・ウルフ。まるで、骨のような形状のそれは、人が反応出来る速度以上の動きで、兵士達に迫り、その口の部分に当たる端子に電撃が仕込まれていて、兵士達を気絶、制圧する。


 無論、兵士達も黙ってはいない。機関銃や連射式のアサルトライフルで応戦するも、縦横無尽で信じられない速度で動く、犬型無人兵器ターミネイト・ウルフに追いつけず、全く当たらない。辛うじて当たるも、見えないシールドによって、弾丸は弾かれる。


 ターミネイト・ウルフに捕まった兵士は、ナイフで応戦するも、金属の餓狼には、ナイフが折れるだけ。

 

 兵士達は、虎の子である最近、開発されたレーザーアサルトライフルを装備して、ターミネイト・ウルフを攻撃するも、高エネルギーのレーザーは、金属の餓狼に全く効かない。

 

 無慈悲に無残に、ターミネイト・ウルフに襲わる兵士、悪夢は終わらない。

 気絶したターミネイト・ウルフは、骨の如き躯体を兵士に被せて兵士を乗っ取る。


 兵士達のうなじに、浸透型ナノマシンが打たれ、体の動きを司る神経をジャック、兵士達を乗っ取り、あろう事か、まだ捕まっていない兵士達へ攻撃を開始した。


 地獄のような光景だ。捕まった兵士達が次々と、仲間を倒す敵に変わる。

 更に最悪なのは、そのターミネイト・ウルフの数だ。

 地獄の蓋が開いて沸き出してくる悪鬼の如く、際限が無い。


 無論、応援の軍隊が送られる…筈だった。


 中国全土のネットワークは、ゼウスヘパイトスのソラリス、SRフィランギルのハッキングによって手中にされ、ウィグルの兵士達が無残に捕まり倒される事態が放映される。


 通信やネットワークはダメでも、応援は行けるとして人民解放軍は、残っている陸軍戦力を向かわせる。ヘリコプター部隊、車両、戦車と大軍が向かうも、その先に、無数のメタトロンの軍団が待ち構え、そのヘリコプターと戦車、車両を徹底的に破壊する。


 破壊された軍団に、メタトロンがターミネイト・ウルフをバラ撒く。

 まさに、全てが水の泡に終わる。


 気付けば、300万人いる人民解放軍の内、30万人がゼウスヘパイトスに捕縛された。


 ウィグル自治区は、完全にゼウスヘパイトスの手中に収まるに六時間で終えた。

 

 圧倒的なゼウスヘパイトスのSRフィランギルの力を前に、中国を支配する中国共産党は愕然とするだけだった。


 そして、ゼウスヘパイトスは中国全土の乗っ取っているネットワークに宣言を伝える。


『ここにトルクメニスタン共和国の建国を宣言する』


 たった一人の力に、またしても中国共産党は負けた。

 その個人は、並大抵の存在ではない。

 日本を手にして、世界を震撼させるソラリスの天帝、アレスジェネシスの息子なのだ。

 ソラリスという人知を超えた叡智に、中国共産党は二度目の敗北を味わう。


 それを日本のソラリスの王座から見るアレスジェネシスは、満足そうな笑みを浮かべていた。

 隣にいるレミエルが

「これで、計画は完遂されましたね」


 アレスジェネシスは「ふふふ…」と嬉しげに星々の天井を見上げ

「ああ…もう、ここは…あの悲劇を起こした2045年の世界ではない。全く違う。新たな地球だ」


 双極の天帝が降臨した瞬間に、世界が震えた。

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